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神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」。ミュージカル・音楽・演劇・映画など県内のアート情報を発信します。

「KAAT EXHIBITION 2017」詩情の森 語りかたられる空間



4月30日から、KAAT神奈川芸術劇場中スタジオ(横浜市中区)で開催が始まった「KAAT EXHIBITION 2017」(5/28まで)。同劇場内の普段は演劇やダンスのリハーサルなどが行われている「ブラック・ボックス」と呼ばれる約400平米の中スタジオが展示スペースです。
これまで「日常/オフレコ展」(2014年)、「KAAT突然ミュージアム」(15年、16年)、「塩田千春展 鍵のかかった部屋」(16年)を開催し、「詩情の森 語りかたられる空間」と名付けられた今回で4本目となる展覧会は、日本画家4人、彫刻家2人、合計6人の新進作家が作り出すアート作品が真っ暗な部屋の中で光が当たり浮かび上がるように展示されています。天井から垂れ下がったり床と並行して展示されたりするなどして、作品自体が空間を仕切り、まるで森の中に入り込んだような詩情的な表情を見せる今回の展覧会について、これまで全ての企画構成に携わってきた同劇場キュレーター中野仁詞さんにお伺いしました。
KAAT EXHIBITION 2017(KAAT神奈川芸術劇場)
取材場所:KAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)
取材日:2017年4月29日
http://kaat-seasons.com/exhibition2017/




Interview&Text&Photo:三沢真理

「KAAT EXHIBITION 2017」詩情の森 語りかたられる空間

ーーKAAT EXHIBITON 2017はどんな展覧会ですか

日本画と彫刻を制作する6人の新進作家たちが、KAAT神奈川芸術劇場のスタジオという、本来はパフォーマンスや舞台芸術を行う空間を活用して作品を展示しています。美術館といえば白い壁に囲まれて、なかなか天井からものを吊り下げたり床や壁に釘を打ったりはできないものですが、同劇場の稽古場でもある中スタジオではそれが当たり前に可能です。この真っ暗な「ブラック・ボックス」と呼ばれる空間で照明を使って光を加えながら、実験的なアプローチを試みている展覧会です。和紙、墨、岩絵具などで描かれる日本画も、天井から吊り下げるほどの巨大な作品もあれば、屏風型で自立するものもあります。石、ガラス、金属から作り出される彫刻作品と、互いにリズムを刻みながら巧緻に関係し合うことで、情感溢れる現代美術の「森」に、見に来た人は作品の中に入り込み湧き上がる言葉の中に漂うように、散策していただきたいです。


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中野仁詞さん

ーー具体的に、どのようなアーティストがいるのでしょうか

三瀬夏之介さん(日本画)は、山形県にある東北芸術工科大学の教授で、墨や顔料、金属箔で描かれた和紙をつなぎ合わせ、巨大な絵画作品をつくりあげる作家です。自身を「絵描き」と名乗り、緻密な描き込みの蓄積によって作品を生み出す一貫した制作スタイルを取りながらも、屏風や掛軸といった日本美術の伝統様式を変形させた作品群は、「日本画」という枠組みを超えて、既存の概念に捉われないものといえるでしょう。


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三瀬夏之介

長沢明さん(日本画)は、三瀬さんと同じく山形県の東北芸術工科大学の教授で、彼も日本画の領域に身を置き、「現代日本絵画」をテーマにそり立つ壁のように大きな作品を主に制作しています。現在はモチーフとしてトラを中心に制作していますが、極限にまで抽象化されたその体は神話上の存在のように、私たちの目に映ります。長沢さんも絵画作品にとどまらず、インスタレーションや立体作品など作品形式にとらわれない活動をしています。それはまさに、「日本画」という存在を超えた「現代日本絵画」といえるでしょう。


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長沢明

金子富之さん(日本画)は、三瀬さん、長沢さんが教鞭を取る東北芸術工科大学の博士課程を修了後、山形県のとある限界集落を拠点に活動をしています。岩絵具や墨、金属箔などの素材を使用した日本画の手法を元に、伝承や伝説上の存在をモチーフに絵画を制作し、画面全体に及ぶ夥しいまでの描き込みが特徴です。取り扱う題材の性質上、とても刺激が強すぎるせいか鑑賞者によって様々な意見が飛び交います。しかし、執拗なまでの細かい描写はある種の普遍性をも帯びているように見えるでしょう。


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金子富之「撮影:西野正将」

田中望さん(日本画)は、今回の出展作家の中では最年少にして紅一点、2014年の東北芸術工科大学在学中にVOCA賞の大賞を受賞した新進気鋭のアーティストです。各地に伝わる文化や進行、伝承などを取材・研究しながら作り上げられる独特の世界観は、扱っている素材を超えて、日本の風土を探求してきたからこその日本画とも言えるかもしれません。画面におびただしく描かれた兎たちは、鳥獣戯画を連想させる一方、絵巻物の形式ではなく上空から俯瞰するような視点で描くことで、作品の中心を失い様々な場面で物語が生まれ、連鎖する様子が表現されています。


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田中望

角文平さん(彫刻)は、TOKYO MIDTOWN AWARDや岡本太郎現代芸術大賞など、現代美術における数々の賞を受賞し、現在は瀬戸内国際芸術祭やいちはらアートミックスなど、展覧会だけにとどまらず様々な芸術祭にも出品している作家です。角さんは木や鉄、紙や身の回りにあるものを巧みに組み合わせ、それぞれの素材が持つ意味や機能をずらしながら新たな意味を吹き込んだ作品を制作、発表しています。その微妙なズレが、たとえば現代における都市と自然との不穏な関係性を提示し、ありふれた日常に潜む「違和感」を浮き彫りにしています。


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角文平「撮影:西野正将」

藤堂さん(彫刻)は、これまでドイツを拠点に活動していましたが、近年日本へと移しました。国内で作品を多く見られるようになり、注目を集めております。石に積層ガラスを挟み込んだ作品を主に展開し、石だけではなく本や瓦礫、発掘されたレンガといったある種の物語性、時間が閉じ込められたものも用いており、物質が内包する蓄積された時間と、透過する蓄積された物質を重ね合わせた作品です。


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藤堂「撮影:西野正将」

ーー最後に、オープンシアター2017について教えて下さい

会期の最終日に、今回の6名の作家に加えて彫刻、映像、写真、漆芸をつくる現代美術作家4名の作品が劇場のあらゆる場所に出現し、KAAT全体が美術館になる1日です。作家によるギャラリートーク、ワークショップ、映像インスタレーションとダンス、ポエトリー・リーディング、ホーメイ、テルミンなど、多彩なイベントも開催します。

マグカル編集部より

 重厚な扉を開けるとすぐ目の前に飛び込んできたのが、日本画家の三瀬夏之介さんの巨大な作品。緻密に描かれた作品に月光のように照明の光が当たり、思わず息を飲みました。足を進めると四方八方に展示されている作品たちに目を奪われてしまい、あっという間に時が経ってしまいました。展示方法が一般的な美術館と異なるので、作品自体はもちろん、展示方法も興味深く感じられました。展示会最終日となる28日は、無料で楽しめるイベントがたくさん用意されているので気軽に現代アートを体感できそうですね。

「詩情の森 —語りかたられる空間」

角文平 Bunpei Kado
金子富之 Tomiyuki Kaneko
田中望 Nozomi Tanaka
藤堂 TODO
長沢明 Akira Nagasawa
三瀬夏之介 Natsunosuke Mise

会  期:2017年4月30日(日)~5月28日(日) 会期中無休
会  場:KAAT神奈川芸術劇場 3F中スタジオ
開館時間:10:00~18:00 (入場は閉場の30分前まで)
入 場 料:一般600円/学生・65歳以上500円/高校生以下無料
     障害者手帳をお持ちの方とその付き添いの方1名は無料/10名以上の団体は100円引き

「オープンシアター2017」
飯川雄大 Takehiro Iikawa
石塚源太 Genta Ishizuka
小林耕二郎 Kojiro Kobayashi
宮永亮 Akira Miyanaga

会  期:5月28日(日)
会  場:KAAT神奈川芸術劇場内各所
開館時間:10:00~18:00
入 場 料:無料

主催:KAAT神奈川芸術劇場
協力:ART FRONT GALLERY、IMURA ART GALLERY、MIZUMA ART GALLERY、多摩美術大学、東北芸術工科大学、NHK横浜放送局
〒231-0023 神奈川県横浜市中区山下町281
お問い合わせ:045-633-6500(代表)

【イベント情報】
パフォーマンス、ワークショップ、トークなどのイベントの最新情報は、随時ホームページでお知らせします。
リピーター割引
「詩情の森」展の展覧会チケット半券を3F展覧会受付でご提示いただくと、入場料が100円引きになります。(何度でも有効)

関連するURL
http://kaat-seasons.com/exhibition2017/

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