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神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」。ミュージカル・音楽・演劇・映画など県内のアート情報を発信します。

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19 世紀の技法「ダゲレオタイプ」で写す日常と現実、未来 写真家・ 新井卓さん

世界的にも数少ない、写真史最初期の技法「ダゲレオタイプ(銀板写真)」を使って制作する写真家・新井卓さん。2016 年に第 41 回木村伊兵衛写真賞、日本写真協会賞新人賞、神奈川文化賞未 来賞を続けて受賞するなど、注目を集める新井さんの展覧会が現在、横浜市民ギャラリーあざみ野で開催されています。

福島や長崎、広島と、歴史的な題材に向き合いながら、毎日銀板写真を撮り、技術を磨き続ける新井さんに、決して簡単ではないダゲレオタイプの魅力や、新作シリーズである次世代の若者たちのポートレートについて伺いました。


あざみ野フォト・アニュアル
新井卓 Bright was the Morning―ある明るい朝に
http://artazamino.jp/event/azamino-photo-20170226/

展示期間:2017 年 1 月 28 日〜2 月 26 日 10:00~18:00
会場:横浜市民ギャラリーあざみ野 展示室 1
料金:入場無料
主催:横浜市民ギャラリーあざみ野(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
後援:横浜市文化観光局


Interview&Text:齊藤 真菜
Photo:加藤 甫

覚悟して、立ち位置を得る

――ダゲレオタイプの撮影プロセスは、どのようなものなのでしょうか。

銀板を磨くのが最初で、薬品で感光化処理をして、撮影して現像、定着があります。一通りやると、8×10 のサイズで大体 3〜4 時間かかります。

 磨きには最短 1 時間半、長いと 3 時間くらいかけます。撮影は数秒で終わる時もありますが、長い時は相手に止まっていてもらわないといけないので、自分もじっとしています。相手や環境任せで自分は介入できない、ただひたすら待っている感じです。

Video: Tomoe Otsu / Music: Takeyasu Ando / 協力: 東京都立第五福竜丸展示館
新井卓/第五福竜丸の多焦点モニュメントの制作プロセス from Takashi Arai on Vimeo.

――現在も、技術を磨いているそうですね。

 磨きはだいぶできるようになってきたんですが、まだ分かっていないことがいくつかあって、その後のヨウ素ガスでやる感光化処理も、タイミングの計り方がいまだによく分からないですね。トライアンドエラーで大体これぐらいの幅だろうっていうのは分かるんですけど、まだ実験中という感じです。

 感光化処理は、数秒ずれると写らなくなるんですが、日によって湿度や温度が違うので、反応速度が変わるんですね。それが必ずしも温度と比例していなくて、その時の条件で、身体感覚でやらないといけないので、そこが大変です。

――それだけ手間のかかる工程ながら、ダゲレオタイプを制作手法に選ぶ理由は何ですか。

 東日本大震災のすぐ後、海外の雑誌から被災地の写真を撮るように依頼されて、デジカメを持ち出したんですが、全然撮れなかったんです。プロとしていろいろな仕事を請け負ってきましたが、初めて途中で仕事を断って、挫折を味わったというか、だめだと思っていた時に、たまたまダゲレオタイプだったら撮れた。それしかなかったんです。

《第五福竜丸のための多焦点モニュメント》2013年 《第五福竜丸のための多焦点モニュメント》2013 年

 特に福島でデジカメを持って一番最初に感じたのは、自分の立ちどころがよく分からないというか、既にダメージを受けた場所で、そこからさらに自分が奪い取っているような感覚でした。撮って逃げるような感じがしたんですね。一方、ダゲレオタイプは現場で暗室テントを立てたりとか、カメラも大きいので、逃げられないんです。撮ろうと思って覚悟したら、丸一日その場所にいて撮らないといけない。そういうところを試されるというか、そこで覚悟してみれば、自分の立ち位置も安定して、撮ってもいいんじゃないかと思えるようになったんです。

生活の中の”現実”としての「核」

――「核」に関する作品の制作を始めたのは、(米国の水爆実験で被爆した)第五福竜丸との出会いがきっかけだったそうですね。

 よく核をテーマにしていると言われるんですが、僕自身は全然テーマは設定していなくて、何でも撮るんですが、たまたま生活の中で一番影響力が大きいのが核の問題になってしまったので、受け入れざるを得なかったんです。作品として核をテーマにするということは、実は一回も考えたことがありません。福島を訪ねると、日本はなんでこんなに核大国になってるんだろうと考えて、だんだんと調べていくと、それが原爆や、日本とアメリカの秘密協定につながっていたりといったことを後から知り始めて。テーマを決めてやるというよりは、生活の中でそれが自分にとって、すごくリアルだったんです。

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