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「まず、“動き”と“間”ありき。テーマは後から付いてくるんです」 アニメーション作家・和田淳スペシャルインタビュー:『New Artist Picks 和田淳展|私の沼』

2012年、アニメーション作品『グレートラビット』がベルリン国際映画祭の短編部門審査員賞(銀熊賞)に輝いた和田淳さん。CGを使わず一枚ずつ手描きされた柔らかい描線と、不思議なキャラクターたちが反復する謎めいた動き、そして、オカシミと不穏さを同時に感じさせる「間」──。それらが相まって醸し出される独特の心地よさは、国内外で高く評価されています。そんな和田さんの公立美術館では初の個展『New Artist Picks 和田淳展|私の沼』が現在、横浜美術館にて開催中です。アートギャラリーいっぱいに展示されるのは、五つの画面を同時に用いた新作映像インスタレーション。創作の原点から、懐かしさと新しさが同居した“和田ワールド”の新境地についてまで、作家の素顔に迫りました。

*アニメーション作品:『グレートラビット』


Interview&Text:大谷 隆之
Photo:加藤 甫

──和田さんは大学在籍中だった2002年頃に、独学でアニメーション制作を始められたそうですね。きっかけはなんだったんですか?

和田:学生時代は美術を専攻していたんですが、本当は映像の方により興味があったんです。もともと僕は、漫才やコントを観るのが大好きで、そういった笑いの「緊張感」とか「間」みたいなものを、自分でも表現できないかなと。そう思ったのが始まりです。あと、今思うと、周囲に比べて絵があまりうまくないというコンプレックスも、若干あったのかもしれません。


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――最初にやりたいことがあって、アニメーションという手法には後から行き着いたと。

和田:そうですね。当初はアニメ制作に対する知識もスキルもほぼありませんでした。作品を手がけるようになったのも、偶然に近かったんです。あるとき好奇心で短いアニメーションを作ってみたら、大学の先生や周囲の友人が褒めてくれました。それがとても嬉しかった。

──動機としてはシンプルだったんですね(笑)。

和田:ええ。平たく言うと「これなら自分も付け入る隙があるんちゃうか」と思った(笑)。今もそうですよ。作品を発表する場が海外の映画祭やテレビに変わっても、やっぱり身近な人から褒められたり、「面白かったよ」と言ってもらえるのが、モチベーションとしてはいちばん大きい。きっとタイミングもよかったんでしょうね。ちょうどパソコンも普及し始めていて、初心者が一人でアニメーション制作に挑める環境が整いつつあったので。


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──お笑いの「緊張感」と「間」に刺激を受けたのは、やっぱり和田さんが関西ご出身なのも関係しています?

和田:どうだろう(笑)。日常のなかでごく自然に接していたので、自分では意識したことはないかな…。ただ、アニメーションは実写と違って、手間さえかければ細かい部分まで一人でコントロールできるので、「緊張」と「間」を表現するならこっちの方が向いているなとは思っていました。

──たとえば、どういう漫才やコントがお好きだったんですか?

和田:分け隔てなく観ていましたが、なかでもダウンタウンは大好きでした。「ごっつええ感じ」などバラエティ番組内のコントも鮮明に覚えています。松本人志さんが手がけた『HITOSI MATUMOTO VISUALBUM』(1998〜99年)というオリジナルビデオ作品には、いちばん影響を受けたと思います。ぜんぶで3巻あって、各5本ずつ短編が収められているんですけど、どの設定もすごく面白いし、映像的なクオリティーも高い。なにより放送の尺を気にせず作り込んでいるから、松本さんにしか出せない独特の「間」みたいなものが、随所に感じとれるんです。


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