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神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」。ミュージカル・音楽・演劇・映画など県内のアート情報を発信します。

森山開次によるワークショップ「おどろう!描こう!」
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森山開次によるワークショップ「おどろう!描こう!」



「絵を描くようにおどったり、おどるように絵を描いてみよう」。そんな呼びかけにこたえて横浜美術館の子どものアトリエに集まったのは18人の子どもたち。
しなやかで切れのある鋭い動き、筋肉質の身体から浮き出る肩甲骨、金色長髪という異世界を思わせる風貌ながら、18人の子どもたちに語りかける森山さんはとても柔和で引き込まれそう・・・。

KAAT神奈川芸術劇場と横浜美術館子どものアトリエとの共同主催で、子どもを対象に劇場と美術館という異なる領域をつなぐワークショップが開催されました。講師は、今夏にKAATのキッズプログラムで新作に取り組むダンサー・振付家の森山開次さん。「おどること」と「描くこと」の両方を体験するワークショップを通して、子どもたちは森山さんとどんな時間を過ごしたのでしょうか。
ワークショップを終えた森山さんに今回のワークショップの感想と、KAATで挑む次回作「不思議の国のアリス」にかける思いをインタビューしました。



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森山開次さん

<子どもたちとのワークショップを終えて>

子どもたちとワークショップをやってみていかがでしたか?

楽しかったですね。絵を描くワークショップを子どもたちと行うのは初めてでしたので、どうすればいいのか不安な気持ちもありました。でもこういうのって考えすぎてはダメなんですよね。子どもと実際に接してみて、感じながら作っていけて良かったです。
ワークショップは計画し尽くしても良いものが出来ません。だって、どれだけ計画しても今日の動きは今日しか出来ないから。今日のワークショップでは「自分が描いた線をたどって軌跡を確認する」ということに挑戦してみました。描いた線に動きをつけてアプローチする。実はこれ、その場の流れを見て考えついたんです。よく気がついたと自分を褒めたいです。(笑)。
ぼく自身絵を描くのは好きで、空中に、いろいろな模様を描きながら動くということをいつもしているんです。今日も「文字ダンス」というのをしていたのですが、今回は、子どもたちとそれを試すチャンスでした。


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両手にクレヨンを持ち仰向けになって自分を中心として手だけを動かして弧を描く。

対象は小学校1~4年生でしたが、子どもたちはいかがでしたか。

 今回参加してくれた小学校の低学年は、素直で柔軟な年代ですよね。子どもと一緒になって自分も童心に返ることができました。今回はのびのびと大きなキャンバスに見立てた紙に自由に描いてもらいました。最近、特に都会では自分が開放できる場所って減っていますよね。「あれをしちゃダメ」とか、何かと子どもは制限されています。でも、今日だけは、大きな紙に落書きし放題。楽しかったですね。

踊りながら描くという体験についてはいかがでしたか?

 アートとダンスには分け目がないと思っています。表現でいえば、例えば音楽だって書道だって少しずつリンクしていると思っています。身体を媒介としていることは同じですよね。絵を描くのもダンスと一緒で、身体の表現の一つなんです。イメージを何を使って吐き出すかという違いなのではないでしょうか。どんな表現も身体的なことがなくては成り立たないことですよね。


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1人1枚の大きなキャンバスに手やスポンジで色を付けていきます。

KAATと横浜美術館の連携についてはどう感じますか?

アートというのは、人と人とが接点を持つためのものだと思っています。そうした意味では劇場と美術館が手を取り合うことは地域のために良いことですよね。
住んでいる人ならではの郷土愛のようなものがあると思うのです。神奈川県ならではの文化があり、劇場と美術館がつながっていくことはとても素敵なことだと感じます。

森山さんは神奈川県相模原出身ですが、神奈川県で活動することについてどう感じていますか?

生まれてからずっと相模原で育ち、舞台の世界に入ったときに東京に移って地元を離れました。いまも東京で活動していますが相模原はすぐに帰ることができる場所です。
神奈川というホームタウンで活動できることはうれしいです。ダンスとは、郷土のためとか祈りとか、そういう役割を担うこともあります。例えば巫女の舞や盆踊りなど、その土地の何かを祈ったり、踊りが媒介になっていることが多い。その土地で踊る意識が強いものですよね。なので自分の生まれ故郷で踊れるということは本当にうれしいことです。

KAATで生み出す新作「不思議の国のアリス」の観どころは?

いま、制作の真っ最中です。いろんなダンサーに身体で表現してもらっていて、いままさに格闘しています。もともと原作はルイス・キャロルの子どもの想像力をテーマにした作品で、少女アリスが夢の中で見ているイマジネーションの世界が描かれています。子どもの世界を大人が表現するということは、大人の想像力だって子どもに負けないくらいすごいということですよね。大人も想像力を示していきたい。僕の表現方法はダンスなので、身体から生まれるイマジネーション、身体で想像・創造するものを、子どもに見てもらいたいと思っています。

今回のワークショップに、新作舞台につながる発見はありましたか?

あっという間に白いキャンバスがクレヨンで染まりましたね。本当にあっという間に作られた。色、線、画。彼らのイマジネーションからどっと生まれるエネルギーを感じました。想像が具体的に表現されて「ぶわっ」とエネルギーが生まれてくる。そんなエネルギーを舞台の中でも生かしていきたい。この子どもたちのエネルギーに負けたくないです。
ぼくは絵が描けますが、ついつい整えたりきれいに描こうとしてしまいます。今日の子どもたちの絵は描こうと思って描けるものではないですよね。創造性を超えた即興で出来上がるものや、子どもたちの想像性にはときどき嫉妬してしまいます。
舞台ですから段取りがあり台本があります。自由にイメージを爆発させるだけでは成立しません。即興性と計画性の両方のバランスを計りながら作ります。
でも「うまく描こう」と計算をしない子どものように、たがを外す部分と組み立てる部分がある舞台を作っていきたい。台本もあるけれど、生で作り上げられる、即興性のゆとりのある部分を残したいと、今日子どもたちを見ながら思いました。


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呪文を唱えると電気が消えて、絵の具で塗った部分だけが、ブラックライトで浮かび上がる。
絵の具をつけた手や顔もじんわり光ります。

<劇場と美術館のコラボレーション>

 KAATは毎年キッズプログラムと題したさまざまな演目を制作しています。観客は子どもと大人。「決して子どもだましではなく、その時代の鏡となるような、先鋭的で豊かなパフォーマンス作品を作ること、第一線で活躍するアーティスト・俳優・表現者とともに子どもにも大人にも届く、真にクリエイティブな作品を作ること」を目標に作品を生み出しています。

 横浜美術館は数々の展覧会を開催する展示スペース以外に、全国的にも珍しい子どものための専用アトリエを併設しています。大人気の「親子のフリーゾーン」では子どもたちがのびのびと絵を描いたり、粘土で遊んだり、「美術を教える」のではなく、子どもたちの「やりたい」気持ちを引き出し自由な発想で造形を楽しむことが出来る環境を提供しています。

 今回のワークショップは、神奈川芸術劇場の「KAATキッズプログラム2017」の一環として、横浜美術館子どものアトリエとの共同主催で企画制作したもの。森山さんのダンスを超えた可能性を知り尽くすKAAT神奈川芸術劇場、そして子どもの造形教育のプロフェッショナルである横浜美術館子どものアトリエが協働することによって新しいダンスワークショップ、新しい造形ワークショップが企画されました。

 「子どもは身体が動くとココロもほぐれるというのは感じていましたが、開次さんと一緒に踊ることで1時間の短い時間にもかかわらず、子どもたちのココロがどんどん開放されていく様子が見ていてわかりました」と話すのは、横浜美術館子どものアトリエ主任エデュケーターの岡崎智美さん。
「描くというのは何か具体的な形になりがちなのですが、今日描いた線は踊った軌跡としてのもの。意識してこれは描けません。線を線のままで描くというのは抽象的なことだったのですが、子どもたちにもきちんと伝わっていたと思います」。ワークショップを全面サポートした子どものアトリエの熟練のスタッフたちも、子どもたちが心を開放し生み出した表現と、それを引き出した森山さんの手腕に感嘆の声を上げていました。

また神奈川芸術劇場制作課プロデューサーの小沼知子さんは、「開次さんのことをあらためてさすがだと思いました。そして、子どものアトリエの安心感。何があっても大丈夫、受け止めてくれるだろうという経験の深さを感じました。紙を思いきりよく広げ、日常じゃない空間のなかにあって、子どもたちもそれぞれが個性を出せていい顔をしていて、本当にいいワークショップになりました」と手応えを感じていました。


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• KAATキッズ・プログラム2017 「不思議の国のアリス」
会期 2017年7月22日〜8月6日
料金 おとな3,500円 こども(4歳以上~高校生) 1,500円 おやこ(大人+子ども) 4,500円
主催・企画制作 神奈川芸術劇場
演出・振付・美術 森山開次
原作 ルイス・キャロル

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