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「美の基準」を持つ町の魅力をアートと交流を通して感じる「真鶴まちなーれ」

新宿から約1時間30分、横浜から1時間10分。小田原市と湯河原町にはさまれた漁師町・真鶴町は、昔ながらの小さな家が海に面した斜面に建ち並ぶ美しい町です。

今年で3回目となる「真鶴まちなーれ」は、その真鶴町の良さを、町中に隠れたアート作品を探したり、ワークショップで町民と交流したりしながら感じてもらおうと、町民有志が集まって生まれた「感じる芸術祭」。ユニークな町の魅力や今年の見どころを、ディレクターの平井宏典さんと、実行委員長の卜部美穂子さんに伺いました。



感じる芸術祭 真鶴まちなーれ2017
懐かしい賑わい/新しい眺め
会期:2017年3月4日~ 3月20日 10:00〜17:00
料金:まちなーれ ArTreasure Walk(アートレジャーウォーク)1,000円(公式ガイドブック代500円含む)
まちなーれ Workshop 各プログラムによる
会場:真鶴港エリア(コミュニティ真鶴|Workshop会場・インフォメーション)
   真鶴半島エリア(真鶴町立中川一政美術館|作品展示・インフォメーション)
主催:真鶴まちなーれ実行委員会
後援:真鶴町、真鶴町教育委員会、真鶴町観光協会、真鶴町商工会
参加アーティスト:阿部乳坊、伊藤隆治、木村幸恵、鈴木泰人、千鶴緑也、高橋つばさ、Chalkboy、向井日香、福留麻里、鉾井 喬
http://www.machinale.net/





Interview&Text:齊藤 真菜
Photo:加藤 甫

町の記憶を呼び起こす、ツアー全体が”作品”

――基本的にツアーで回るというのも、特徴的ですね。

平井:1回目の反省もあって、2回目からはツアー形式にしています。現代アートだから、分からないことは必ずしも悪いことではなくて、そのこと自体を楽しんでほしいという思いがあるんですが、分からないということばかり言われてしまう寂しさというか、そこが壁になっていることもすごく感じたんですね。

 2回目のテーマを「風景の温度」にしたのは、ぱっと見ではなく、その後ろにある、生活している人の息遣いや体温が伝わるような景観、まちづくりを観てもらいたいという思いからです。1万人が来て薄い印象で帰っていくぐらいなら、300人に濃い経験をして、真鶴のことを頭に刻み付けて帰ってもらおうと。

 町民や隣の湯河原から来た人と一緒に、5〜6人でガイドに導かれて、普段は入れないような場所に入る、そういうツアー自体が作品みたいなところがあると思うんです。僕が10時の回にガイドをやるとしたら、午後2時の回のガイドは、同じことはできない。アート作品を観るというよりも、その日一日真鶴で過ごす体験自体を、どう素晴らしいものにできるか、それを彩ってくれるのがアート作品だと考えています。


s-mgc_4998店の中を抜けると…

ーー今年のテーマ「懐かしい賑わい/新しい眺め」について教えてください。

平井:真鶴は、今は幹線道路と駅ができて内陸の方に町の中心がぐっと移りましたが、昔は港周辺エリアの80軒近くが漁師さんも含めた商業関連だったんです。中心は港の西側あたりで、真鶴銀座と呼ばれたその界隈には靴屋も呉服屋も魚屋も薬局も文房具屋も、何でもありました。

 町の姿は必ず変化していくし、今後真鶴はもっと変わっていくと思いますが、そういう時に一度、この町が町として完成した時のエリアに真正面から向き合ってみたい、町として栄えていた時の姿をもう一度たどるような思考の旅をしてもらいたい、というのが今回のテーマです。


s-mgc_5010かつて真鶴銀座と呼ばれた西宿中(にししゅくなか)商店街

――旅のルートやアーティストは、どのように決めていったのですか。

平井:今回は参加アーティストが前回の7組から10組になり、そのうち5人は以前にも出展してくれたことがあるので、彼らならどこでも面白い表現してくれるだろうという信頼感があります。

 また、大正時代に建てられたレトロな佇まいの床屋さんがあるんですが、この商店街の中でも象徴的な場所なんです。今回初参加の高橋つばささんは、0.4mmのブルーブラックのボールペンだけで線を重ねて、水性インクを水で滲ませて作品を描いているんですが、大正時代からずっと積み重ねてきた露木理容店の時間の重なりと、彼女の線を重ねる表現手法というのが、僕の中で組み合わさって、彼女にはそこで展示してもらうことにしました。

 ツアーには含まれていませんが、第2回から参加してくれている鉾井喬さんは、真鶴半島エリアで展示してもらっています。山歩きって、一歩一歩地面を見ながら進むイメージが自分にはあったんですが、彼と林に入った時に、ほんとうに背の高い巨木が多くて、背筋が伸びるというか、目線がすごく上に行く感じがしたんですね。その時に、上を仰ぎみたいね、まるでドームのような森の天井を見たいね、という話をして、それを受けて制作してもらいました。

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