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神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」。ミュージカル・音楽・演劇・映画など県内のアート情報を発信します。

オペラ『金閣寺』上演記念 ー 黛敏郎ってどんな人?!

神奈川県民ホール開館40周年記念 県民ホールオペラシリーズ2015 黛敏郎 オペラ「金閣寺」上演記念

義務教育の音楽の授業では、バッハやショパンやベートーヴェンといった西洋の音楽家たちに比べ、日本の作曲家について習う機会は少ない。そのため聞き覚えのある日本の作曲家といえば滝廉太郎か山田耕筰くらいという人も少なくないと思う。しかし、希代の才能で戦後日本の音楽文化の礎を築いた作曲家 黛敏郎(まゆずみとしろう)の名前はぜひ覚えておいていただきたい。

三島由紀夫の同名小説を、黛敏郎が音楽作品として具現化した オペラ『金閣寺』が、12.5(土)〜6(日)神奈川県民ホールで上演される。そのことを記念して「最近なんか黛敏郎が気になる…」または「黛敏郎って、誰?」という方のために、入門編としての黛敏郎像をつまびらかにしていきたい。

  黛敏郎のすごいエピソード Index  
     ※クリックすると文章の先頭にとびます

     1 映画『ゴジラ』シリーズの作曲でも知られる伊福部昭(いふくべ あきら)の弟子

     2 パリに自費留学するも一年で帰国。帰国理由は「もう学ぶことがなくなった」から

     3 代表作《涅槃交響曲》では実際の鐘の音をオーケストラで再現!?

     4 ジャイアント馬場の入場曲を作曲したのも黛先生!

     5 三島由紀夫との秘話 オペラ『美濃子』を巡る確執とその後・・・




映画『ゴジラ』シリーズの作曲でも知られる伊福部昭の弟子



1929年に神奈川県横浜市に生まれた黛敏郎は、第2次世界大戦の序章となる満州事変を3歳、日中戦争を8歳の時に経験している。戦時中とはいえ、このころから作曲家を志していた黛少年は、ピアノや音楽理論のレッスン、学校の鼓笛隊や吹奏楽の授業などを通して音楽との接点は保ち続けていた。

そして1945年4月、東京大空襲の被害もおさまらない中、当時は専門学校だった現・東京藝術大学に16歳で入学し、終戦をまたぐかたちで学生生活をおくった。最初に師事した橋本國彦は敗戦のあおりをうけて辞任。その後池内友次郎、伊福部昭といった作曲家に師事することになる。

伊福部昭といえば特撮映画『ゴジラ』シリーズの音楽でよく知られる作曲家で、この曲はあまりにも有名だ。





また、黛が在学中に作曲した作品はかなりレベルの高いもので、中でも卒業制作《ディヴェルティメント》は異例のレコード化まで実現している。このとき黛は19歳だった。




《ディヴェルティメント》1948年


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パリに自費留学するも一年で帰国。帰国理由は「もう学ぶことがなくなった」から



20歳前後で一躍クラシック界のスターになり、すでに映画音楽の仕事などで充分な収入を得ていた黛は、終戦から6年目の1951年、22歳の時にパリ高等音楽院に私費で留学した。同時期に同じく私費で別宮貞雄が、フランス政府の給費留学制度で八代秋雄が渡仏。こうして日本から3名の若き作曲家が当時最先端だったパリへと旅立った。しかし黛だけは1年後の52年、「もう学ぶことはなくなった」と早々に帰国する。そして53年には、日本初のミュージック・コンクレート作品《 X・Y・Z 》を発表。こうしていち早く最先端の音楽を日本に紹介していった。

※ミュージック・コンクレート:人や動物の声、鉄道や都市などから発せられる騒音、自然界から発せられる音、楽音、電子音、楽曲などを録音、加工し、再構成を経て創作される音楽。フランスで1940年代にピエール・シェフェールによってつくられた現代音楽の一つのジャンル。



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代表作《涅槃交響曲》では実際の鐘の音をオーケストラで再現!?



1958年に第7回 尾高賞を受賞した代表作《涅槃交響曲》では、様々な梵鐘の音を録音・データ解析し、オーケストラで模倣するという試みを実践した。日本人には聞き慣れた梵鐘の音も実は複雑な倍音構造でなりたっているため、それを解析し再現するのは至難の業と言える。また、録音には当時最先端の技術だったテープが使われていることから、この曲は日本におけるテープ音楽の先駆けともなった。そして、黛はこの曲を境に日本的な主題へと関心を回帰させ、その後のオペラ『金閣寺』や映画『炎上』(『金閣寺』を原作とした1958年の日本映画 監督:市川崑 主演:市川雷蔵)の音楽に発展させていった。



《涅槃交響曲》


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ジャイアント馬場の入場曲を作曲したのも黛先生!



209cmの長身でタレントとしても人気をはくしたプロレスラー ジャイアント馬場。彼がリングにあがる時に必ず流れるテーマ《スポーツ行進曲》は、黛敏郎の作品だ。上述の音楽史を更新するような活動の一方で、テレビなどにも頻繁に出演し、昭和の“お茶の間” にも響く音楽を多数作曲した。美空ひばり、石原裕次郎、丸山明宏(現美輪明宏)、吉永小百合、フランキー堺らに楽曲提供し、歌謡曲もたくさん世におくりだしている。





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三島由紀夫との秘話。オペラ『美濃子』を巡る確執とその後・・・



最後に、オペラ『金閣寺』の原作者 三島由紀夫との興味深いエピソードを紹介したい。

2人の出会いは、パリ留学中の黛に三島が会いに行ったのが最初だった。帰国後も、映画や演劇などの仕事が重なり仲のよいコンビという印象の2人だったが、当時日生劇場のプロデュースで上演が予定されていたオペラ『美濃子』が、そんな2人の間にヒビをいれてしまう。

大規模興行になるはずだったオペラ『美濃子』だが、早々に台本を書き上げた三島に反して黛の作曲は遅々として進まず、とうとう初演に間に合わせることができないほどの遅れになってしまった。このことに激怒した三島は、黛から作曲権をとりあげ上演も中止にしてしまったのだ。そのため三島の『美濃子』はオペラとしては上演の日の目を見ずに今日に至っている。そしてこの出来事が2人の関係も壊してしまったのだ。

それから数年、ドイツ・ベルリン・オペラの委嘱で日本のオペラを上演することになり、音楽は黛に白羽の矢がたった。その後、演出家 ゼルナーの希望で演目が三島の『金閣寺』に決まったため、久しぶりに2人が顔を合わせる機会が訪れたのだ。そこで「金閣寺をオペラにしてもいいか?」と聞く黛に、三島が了承し、初演を観に行く約束をしたという。そして黛もがんばってつくるということを伝え数年ぶりに和解。こうしてオペラ『金閣寺』は実現に至ったのだ。しかし、この2人のやりとりがおこなわれたのが1968年前後のこと。名コンビ復活の喜びもつかの間、1970年には市ヶ谷駐屯所での三島事件がおこってしまう。オペラ『金閣寺』の初演はそれから6年の歳月を経た76年。残念ながら、三島は初演を見届けることはできなかった・・・。



初演から39年の時を経て、再び『金閣寺』が舞台上に蘇る!



この初演から39年の時を経て、今回16年ぶりに上演される 黛敏郎のオペラ『金閣寺』は、黛の地元横浜にある神奈川県民ホールの40周年を記念し上演される。様々なドラマを孕んだ日本のオペラ史に残る不朽の名作を、日本を代表する若い力が集結しつくりあげる今回の舞台は必見!

公演詳細や関連企画は下記関連イベント一覧から。



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※このページは、2015.11.7(土)に開講された、オペラ「金閣寺」の関連企画 音楽評論家 片山杜秀氏の講座を参考に、MAGCUL.NETの文責においてまとめたものです。

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