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神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」。ミュージカル・音楽・演劇・映画など県内のアート情報を発信します。

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鎌倉とメキシコシティ、ニューヨークでの”人間関係”をベースに 《Piece with gaps for each other》東慶寺公演

鶴岡八幡宮や鎌倉宮、妙本寺など、鎌倉ならではの会場で、音楽・アート・文学・ダンス・シンポジウムなどのジャンルを横断するイベントを開催してきたアーティスト・クリエイター集団ルートカルチャー。8月に鎌倉海浜公園由比ガ浜地区で行った「鎌倉 海のカーニバル」や、鎌倉出身の女優・鶴田真由さんを迎えた演劇公演「花音」も記憶に新しい彼らの次の舞台は、北鎌倉の東慶寺です。

ルートカルチャー理事長で音楽家の瀬藤康嗣さん、ダンサーでニューヨーク在住のアースラ・イーグリーさん、同じくダンサーでメキシコシティ在住のマーティン・ランズさんの3人が、2015年からお互いのまちで滞在制作を重ねてきた今回の作品のリハーサル(この日は材木座公会堂)にお邪魔して、鎌倉との関わりや制作のプロセスについてお聞きしました。

「Piece with gaps for each other」
日時:2016年9月24日19時開演(18時30分受付)
観覧料:3,000円
会場:鎌倉市山ノ内1367

主催:NPO法人ルートカルチャー
共催:マグカル・フェスティバル実行委員会
助成:神奈川県アーティスト・イン・レジデンス推進事業
特別協力:東慶寺


Interview&Text:齊藤 真菜
Photo:加藤 甫

鎌倉の空間と人をつなぎたい

—瀬藤さんは、ルートカルチャーとしての活動だけでなく、パブリック・ベンチャー・カンパニー「株式会社鎌倉」の設立にも携わるなど、鎌倉でさまざまな活動に関わられていますね。どのようなきっかけがあったのでしょうか。
 
瀬藤:僕は神戸出身で、学生のときに鎌倉に住み始めました。よく、外の人のほうがまちの魅力がわかると言われますよね。この建物も、地元に住んでると当たり前ですが、外の人間だから気づける魅力がある。僕もだんだん中の人間になってきてはいますが、鎌倉はすごく面白くて素晴らしい空間がたくさんあって、面白く魅力的な人たちがたくさん住んでいるまちなので、「空間と人をつなぎたい」という気持ちがありました。著名な方で、実は鎌倉に住んでいるけど、東京や海外で活動することが多くて、鎌倉ではあまり活動していないという人も結構いらっしゃるんですよね。そういう方も地元で活動できる場所をつくって、鎌倉をより文化的で面白いことが起こるまちにしたいと。同世代の仲間で、同じような気持ちを持っている人間がたくさんいたので、10年前にルートカルチャーを立ち上げて、そこから地道に楽しみながら活動を続けてきました。
 


002瀬藤康嗣さん

 

—ルートカルチャーでも、特定ジャンルの作品の発表やワークショップだけでなく、「鎌倉 海のカーニバル」のようなまち全体を盛り上げるような企画がたくさんありますね。
 

瀬藤:僕らはそういう思いでやっていましたし、実は僕らの上の世代や下の世代でも、同じようなことを考えている人たちが他にもいて、鎌倉ってそういう団体がたくさんあるのにみんなバラバラにやっている状況だったんですね。最近お互いのことを知るようになってきて、同じような志を持っているんだったら、一緒にやろうよというのが、「鎌倉 海のカーニバル」などの、今の流れかなと思っています。

人間関係をベースに作品をつくりあげる

—今回のレジデンスプログラムは、どのような位置付けですか。
 
瀬藤:アースラは今回5回目の来日で、今までは鎌倉に滞在しましたが、制作は横浜で行ったりしていたので、全て鎌倉で行うという意味では初めての試みです。やっぱり、鎌倉というまちは、彼らもすごく特別面白いまちだと感じてくれていると思いますが、そういう場所や人を活かしながら、一方で鎌倉の中だけで固まってしまうのではなく、ちゃんと外ともつながっていることで、新しいものが入ってきて面白くもなるし、また鎌倉にあるものも外に出していけると考えています。
 


003マーティン・ランズさん、アースラ・イーグリーさん

 

イーグリー:このプロジェクトは、3人のアーティストそれぞれが一定期間ホストとなる構成になっています。マーティンはメキシコシティで私たちを受け入れましたし、私はニューヨークでホストを務めて、今回が康嗣の番です。毎回一人のアーティストの地元のまちで、そこのコミュニティとつながりを持ち、またお互いの家や友人の家に滞在します。
 
 実際にお互いの国に旅して、それぞれの作品制作における背景を理解しながら、人との交流をベースに制作することは、とても意味のあることなのではないかと考えています。
 
 今回がこのプロジェクト初のパフォーマンスで、平成29年3月にはニューヨークで、同年秋にはメキシコでパフォーマンスを行います。
 
ランズ:アースラと康嗣の家族や友達を知ることに、とても重きを置いています。そういったことが制作の一部となっているのが、このプロジェクトの特徴の一つと言えると思います。僕はルートカルチャーの別のメンバーの家に滞在していて、そこで最初に3人だけでミニパフォーマンスを披露しました。
 
 メキシコやニューヨークでも、地元のアーティストと良い関係を築くことができて、最終的には康嗣もアースラも、彼らとコンサートやワークショップでコラボレーションするに至りました。
 
アースラ:そのワークショップで発展した要素が、今回の作品にも入っています。
 


004

 

—そうしたプログラムの構成は、どのように決められたのですか。
 
瀬藤:成り行きといえば成り行きですね。
 
イーグリー:康嗣が私の家に滞在していたときは、同じように私の家でもパフォーマンスを行いました。オーディエンスとある程度の親密さを築くことが、私たちの制作の過程で重要になってきている気がします。私たち3人がお互いを理解するのと同じように、オーディエンスのことも理解し、その親密な関係性を、お寺や劇場などのフォーマルな場にも持ち込めたらと思っています。
 

文化のルーツを体感


005

 

―鎌倉での滞在中はどんなことを予定されていますか。
 
イーグリー:今回面白いのが、パフォーマンスをする東慶寺で、座禅に参加することです。
 
瀬藤:鈴木大拙という、禅を世界に広めたと言って過言ではない仏教学者が、東慶寺に非常にゆかりが深い人なんです。お墓もありますし、たまたまですが今年はちょうど没後50年にあたります。アースラはずっとニューヨークにいて、マーティンもレジデンスアーティストとして滞在して、僕自身もよくニューヨークに行っていますが、鈴木大拙は実はすごくニューヨークのアートシーンに影響を与えた人なんですね。彼が1952年からコロンビア大学で行っていた禅の講義を、ジョン・ケージという作曲家や、ジャック・ケルアックという小説家が聞いて、禅のアイデアにすごく衝撃を受けた。そして村上春樹が、そのアメリカの文学者たち(ビートニック)から影響を受けているように、禅から影響をうけて誕生したアメリカのモダンカルチャーに、われわれ日本人は影響をうけています。そのルーツとでも言うべき東慶寺で、禅に触れ、作品を発表してみたいと思いました。
 
イーグリー:畳の上でパフォーマンスをするので、リハーサルも畳の上で行っています。康嗣が和室のある練習場を鎌倉中で探してくれました。私とマーティンにとっては、こうした伝統的な建物で制作ができることは、とても貴重な体験です。リハーサルは、毎回座禅からスタートしています。
 


006

 

―制作はどんな風に進められているのですか。
 
イーグリー:ニューヨークとメキシコシティでは、制作のみのレジデンスだったので、実験的な過程を踏んでいましたが、ここではパフォーマンスの構成を作っています。初めてこれまでの実験をオーディエンスのために組み立てた状態です。今はそれをどうやってパフォーマンスするか考えながら、少しずつ組み換えています。
 
―カードに書いていたのは?
 
イーグリー:(各自のパフォーマンス素材である)撚り糸のようなものです。康嗣の撚り糸の中の要素、マーティンの撚り糸の中の要素、私の撚り糸の要素すべてがパフォーマンスを構成します。まだ順番を再考しているところです。
 
瀬藤:毎回これを使うわけではありませんが、僕がよくこのようなやり方をするんです。
 
マーティン:軸は同じだけれど、状況によってやり方が変わるのが面白いところです。
 


007

 

―リハーサルをして、話し合う、の繰り返しなんですね。
 
瀬藤:お互いが気付いたことや思ったことを言って、それが言ったきりで何も反映されないこともあれば、それってすごい大切なことだよね、となることもありますね。
 
―音はどこで録ったものですか。
 
瀬藤:ほとんどは今この場で録った音です。後半に、メキシコやニューヨークで録った音も入れようか、迷っているところですね。(リハーサル中写真を撮られていたので)シャッター音とかも録っていたんですけど、ちょっと音量が小さすぎましたね。
 
―外を太鼓が通る音も混ざって、なんだか鎌倉らしかったですね。
 
瀬藤:あれは本当にたまたまでしたね。結構意図してやっていることですが、だんだんどれが録音でどれが生の音かわからなくなってしまうんですよね。
 


008

 

互いの違いを尊重する

―コンセプトは、どのような経緯で決まったのですか。
 
イーグリー:最初のメキシコでのレジデンスで、康嗣が話題に出したのを覚えています。このプロジェクトでは、お互いの意見や方法論の違いを受け入れる余白があることが大事だと。それから、日本の政治の状況について話すと、マーティンが、「それはメキシコの状況とも似ている」と言って。アメリカでも、”Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)”というムーブメントがあって、人種差別の問題が危惧されていますが、それぞれの国で、報道規制にしろ暴力にしろ、体制が抑圧を生んでいるという危機感があるのです。
 
 どんなアート作品にも、コミュニティにも、独自の主張があり、私たちも今回のプロジェクトで何を提示するのか、意識的、明確でありたいと考えていました。
 


009

 

―どのような人に向けて伝えたいと考えていますか。
 
瀬藤:禅とアートとの関係といった部分は専門的ではありますが、東慶寺という場所は素晴らしい特別な場所だと思いますし、僕らの作品は何か前提知識がないと分からないというものではないと思っているので、何かピンとくるものがある人に、直感的に見てほしいですね。
 
―客席の配置についても、先程話されていましたが、オーディエンスとの関わりはどんなふうになるのでしょうか。
 
瀬藤:まだ本当にそういうところも決まっていない段階なんですが、「パフォーマンスってそもそも何だろう」という問いが3人の共通の関心としてあるので、それをオーディエンスの皆さんにも考えてもらえるような場と時間になれば良いなと考えています。
 
– – –
ルートカルチャー
http://rootculture.jp/news/piece-with-gaps-for-each-other

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