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神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」。ミュージカル・音楽・演劇・映画など県内のアート情報を発信します。

神奈川・立ち呑み文化放談 Vol.8 最終回! 「エロスとカオス」

藤原ちから  ゲスト:伊藤キム  2016.3.11公開

昨今、密かなブームでもある立ち呑み。

「神奈川・立ち呑み文化放談」は、立ち呑み文化の地域性や時代性も視野にいれつつ、神奈川の立ち呑み事情を探るとともに、そこで繰り広げられるおしゃべりも楽しんでいただく企画です。今回お邪魔したのは昭和の風情が色濃く残る溝ノ口西口商店街の数あるお店の中から、本店は昭和42年創業という老舗「玉井西口店」。

そして放談するのは、お馴染みのナビゲーター藤原ちからさんと、2016年1月に新たなカンパニー「GERO」の旗揚げ公演を終えたばかりの舞踏家 伊藤キムさん。

TEXT:井上 明子  PHOTO:西野 正将  2016.3.11公開


藤原ちから|Chikara Fujiwara
編集者、批評家、BricolaQ主宰。1977年高知市生まれ。12歳で単身上京し、東京で一人暮らしを始める。以後転々とし、出版社勤務の後、フリーに。武蔵野美術大学広報誌「mauleaf」、世田谷パブリックシアター「キャロマグ」などの編集を担当。辻本力との共編著に『〈建築〉としてのブックガイド』(明月堂書店)。徳永京子との共著に『演劇最強論』(飛鳥新社)。現在は横浜在住。演劇センターFのメンバー。また、ゲームブックを手に都市や半島を遊歩する『演劇クエスト』を各地で創作している。 http://bricolaq.com/

伊藤キム|Kim Ito
87年舞踏家・古川あんずに師事。95年「伊藤キム+輝く未来」結成。96年バニョレ国際振付賞、02年第一回朝日舞台芸術賞・寺山修司賞。05~06年にバックパックを背負って半年間の世界一周の旅に出る。京都造形芸術大学客員教授。青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム修了。15年新カンパニーGEROを結成して10年ぶりに創作活動を再開。





玉井西口店は溝ノ口駅徒歩1分の好立地、戦後闇市の痕跡が色濃く残る商店街の一角にあります。手前が立ち呑みエリア、奥が椅子席、2階に座敷があり店内は広々! 玉井西口店は溝ノ口駅徒歩1分の好立地、戦後闇市の痕跡が色濃く残る商店街の一角にあります。手前が立ち呑みエリア、奥が椅子席、2階に座敷があり店内は広々!



まずは立ち呑みエリアで呑み始めることに・・・・



藤原ちから(以下 藤原):最初のオーダーは自分で書くと10円引なんだ。何にします?



立ち呑みカウンターにはオーダーシートがあり、備え付けのペンで注文を記入するようになっています。まずはメニュー選びに余念がないお2人。 立ち呑みカウンターにはオーダーシートがあり、備え付けのペンで注文を記入するようになっています。まずはメニュー選びに余念がないお2人。


伊藤キム(以下 キム):うーん…、じゃあ薩摩司のロック…… あ、でもやっぱりビールで!

藤原:じゃあ僕は黒ホッピーにします。
あと、つくねは推しみたいなので食べたいですね。それと、焼き鳥何本か。あと牛すじカレー煮もいっちゃっていいですか?

キム:いいですね。それと、豆腐サラダもお願いします。



たびたびメディアで紹介されると言う”金運つくね”は本日もオーダーが沢山入っているようです。


ひととおり注文を書き終わり・・・・



藤原:なんと今日は最終回なんですよね、この企画。

キム:え!? そうなんですか?

最終回御礼

藤原:それで、今日の放談のテーマなんですけど、キムさんが1月に旗揚げした新カンパニー「GERO」のテーマでもある「言葉と身体」……を念頭に置きつつ、記念すべき最終回ということもあり、もう少し広い設定にしようかなと。

というわけで唐突ですが、「エロスとカオス」でいきたいと思います。

キム:はい(笑)「エロスとカオス」…



ということで、とりあえず 乾杯!

乾杯!


新カンパニー「GERO」について

※ GERO公式サイト

キム:4時前に呑むってあんまないですよね。

藤原:この立ち呑み放談では全8回中、  捩子(ぴじん)さん    藤井(健司)さんの回  が昼から呑んでましたね。だから今回いれて3回目。意外とやってますね…(笑)
さっそくですが、キムさんの新カンパニー「GERO」の『くちからでる』の話をお聞きしたいと思います。僕はちょうどその初日にフィリピンに旅立って昨日帰ってきたので、本番は観ることができなかったんですが、通し稽古を拝見させていただいて、本番の記録映像も観させてただきました。
旗揚げ公演を終えてみて、どうでした?

キム:うーん…。そうですね…
観てくれた人の評価は色々だったんですけど、こういう業界で作品をよく観ている方は概ね厳しい見方でしたね。逆にそうではない方からは好評だったかもしれないです。ある方に、“身体のことをよく知ってる人が言葉に挑戦してみました”という印象を受けたと言われたんですが、つまりそれは「身体はまぁまぁだけど、言葉はまだまだだね」ということだと思うんです。自分自身も言葉と身体の両方をどう取り込んでやっていくかはまだはっきりみえていない部分もあるので、これから試行錯誤していくんだろうと思ってます。


KAAT神奈川芸術劇場での旗揚げ公演『くちからでる』公演写真Ⓒbozzo KAAT神奈川芸術劇場での旗揚げ公演『くちからでる』公演写真  Ⓒbozzo


藤原:「GERO」では、基本的にキムさんは出演はされないんですよね。それはどうしてですか?

キム:「輝く未来」(キムさんが以前主宰していたカンパニー)では自分も出演していたんだけど、僕自身がもっているインパクトがすごいので他の人と馴染ませるのが難しかったんですよね。あと出演しない方がつくることに専念できる。

藤原:なるほど。ちなみに、稽古場ってどうしても演出家が力を持ってしまいがちですけど、見学させていただいた時に、みんなで意見を出し合ってフィードバックする光景が印象的でした。

キム:昨年 サンプルの『離陸』という演劇作品に出演した時に、演出の松井周さんがスタッフも含めたその場にいる全員に感想を聞くということをされていて、これはおもしろいなと思ったんです。僕もいろんな人の視点を参考にしたいし、最終的にもらった意見を採用するかどうかは僕の判断ではありますけど、自分では気付かないところにスポットをあててもらえるのはとてもおもしろいですね。

藤原:「輝く未来」を旗揚げされたのは、1995年…?

キム:そうですね。最初の「伊藤キム+輝く未来」は2005年に解散、2007年に「輝く未来」を結成して、それは2010年に解散してます。

藤原:「GERO」は2016年1月にKAAT神奈川芸術劇場での旗揚げ公演を終えたばかりですけど、次回公演のご予定は?

キム:10月です。

藤原:次回もフルメンバーで?

キム:多少の変動はありますが、あまり変わりません。

藤原:そうやって同じメンバーでやっていくのってすごく貴重なことですよね。

キム:そっか。最近はプロデュース公演が多かったりで…

藤原:そう、それだと毎回違うメンバーが集まって1回きりでサヨナラってなるけど、継続して積み重ねていけるのがカンパニー公演のおもしろいところかなって。

キム:そうですね。
メンバーはワークショップオーディションで選んで最終的にあの8人になったんですけど、実はやってみてすごいやりづらいなって思ってて…(笑)というのは、みんな持っているものがバラバラなんですよね。役者もいればダンサーもいて、普通のおじさんもいれば尺八吹きもいるっていう感じで…

藤原:バックボーンがバラバラ(笑)

キム:それは自分が望んでしたことなんですけど。
もしかしたらやっていくうちに馴染んできてハーモニーがでてくるのかもしれないし、そもそもハーモニーを出していいのかっていうこともあります(笑)

藤原:バベルの塔で言語がバラバラにされたように、共通言語がない状態がまさに今の「GERO」ってことですね。でも、続けていくうちに共通言語がでてくるとしたら、どういう言語になるのか、楽しみですね。


ダンスと演劇の境界

キム:僕はずっとダンスをやってきたんですけど、今はダンスと演劇の境目が曖昧になってきていると思うんです。ちからさんから観て、そういうのってどういう風にみえますか?

藤原:曖昧ですよね。でもその曖昧さは興味深いところでもあります。今は同じ演劇の中でもまさに共通言語がない状態なので、下手するとある種のダンスと演劇のほうが近い、とも言えるのかも。たとえば、演劇ではもはや「1人1役のキャラクターがあってそれぞれのセリフがある」という前提がすでに崩れていて、俳優は必ずしも役を演じるとは限らない。そうなると役やセリフなしでいかに舞台に立つかが問題になるから、ダンサーに接近するというか、俳優がダンサーから学べるところは大きいと思うんです。だけどいっぽうで、やはり俳優は役を演じたいって思う生き物なんだな、と感じることもありますね。
それで言うと、サンプルの『離陸』に大学教授の役で出演されたキムさんは、演じているというよりは素で大学の教授になっているようにみえてたんです。いやもちろん素のままじゃないとは思うんですけど。そういう演技は、いわゆる俳優がやろうとしても難しいことだとだなと思いました。舞台上でのキムさんの居方がすごくおもしろかったんです。

キム:俳優としての鍛錬をしてきていない僕だからというのはあると思うんですよね。ある種の新鮮味を持っているっていうことなのかな。


「離陸」早稲田小劇場どらま館(2015年)Ⓒ青木司
「離陸」早稲田小劇場どらま館(2015年) Ⓒ青木司



そろそろ飲み物を、日本酒に切り替えることに・・・・



地方都市で、ダンスや演劇ができること

キム:この間「GERO」でちからさんの出身地、高知県にいってきたんですよ。

藤原:あー、その話聞きたかったです!

キム:それで高知で、お酒のつぎ方を教わったんです。作法があるんですけどわかります?

藤原:え!わからない。ちょっとついでもらってもいいですか?


キムさんのつぎ方に注目!!!
キムさんのつぎ方に注目!!!


藤原:なるほど・・・。仮説を言ってみていいですか?
もしかして、徳利の注ぎ口の尖っている部分を使わないってこと?

キム:そうそう(笑)
なんでかというと「円(=縁)の切れ目だから」なんだって。

藤原:うわ〜〜〜〜〜!

キム:しかも、つがれたらテーブルに置かないでまず呑むらしいですよ。だから呑めない人はそういうのがいっぱいきて、おちょこがどんどんたまっていくんだって。

藤原:ははは(笑)
僕、出身は高知なんですけど12歳の時に東京にでてきちゃったんで高知のお酒文化をちゃんと学んでないんですよね。だからちょっと新鮮(笑)
高知ということは、公演はかるぽーと(高知市文化プラザ)で?

キム:そうです。
現地のワークショップ参加者4名+GEROから3名で7名の出演者がいたんですけど、KAATでの『くちからでる』初演とはかなり方向性を変えて、現地のワークショップ参加者4名に語ってもらったエピソードをモチーフに作品をつくったんです。だから、KAAT公演が身体が8割だったとすると、かるぽーと公演は言葉が8割という感じになりました。座席も楕円形の座席をまずつくって、その中に12〜13席くらい椅子を置いておいたんです。それでそこに座っているお客さんを見て、演者がその様子を実況中継するということをやりました。実況っていうのは、例えば「黒髪」「茶色(い服)」「手」「足」「椅子に腰掛けている」とかいうふうな感じに。

キム:最終的には内側の席のお客さんを、外側の楕円の席に移動させる演出だったんですけど、おもしろかったのが、メンバーの八木(光太郎)君がお客さんに「赤いカーディガン、立て!!」って言っちゃって…(笑)でも、その人立たなかったから最終的には「すいません、申し訳ないんですけど立ってください…」って謝り倒してました。今の若い人には珍しく人の神経を逆なでする俳優ですね、彼は。

藤原:人の神経を逆なでする俳優(笑)僕は最初「悪魔のしるし」に出演していた彼をみて、変なやつがいるな〜と思ってすぐに名前と顔を覚えました。なんか印象に残りますよね。忘れたくても忘れられない(笑)

キム:それで、高知の公演みたいに、日本各地の人たちとワークショップをしながら試演会的に公演を打っていく活動を、「GERO活動プロジェクト」って言ってるんですけど、その活動を通して、現地の人たちと時間を共有して、価値観を交換していけたらいいなと思ってるんですよね。さらにそうやって共有していくことが、公共ホールにとっても、町の人たちにとっても、GEROにとっても刺激になっていくといいなって。これがWin-Win-Winの関係になれるかどうか、続けてやっていかないとわからないですけどね。

藤原:その最初が高知だったんですね。なんか嬉しいです。
さっき話していた「演劇とダンスの境界が溶けた」っていう話に加えて、今の舞台芸術の大きなの流れとして「東京以外の地方都市に出ていって、そこで何をやるか」っていう課題があると思うんです。僕も田舎の出身で文化不毛の中で育ってきたので、そうやって文化が広がっていくのは嬉しいです。僕が小学生の時は、八木君みたいな人になんか言われるなんてことはまったくなかったですからね(笑)

キム:ないでしょうね…(笑)



藤原ちからさん


藤原:そろそろお酒なくなってきたので、八海山にいこうかな。

キム:僕は加賀鳶を冷やで。

藤原:いいですね。寒くなったらまたあとで熱燗にいきましょう。



人はなぜ物語を求めるのか

キム:いつもこういう店で呑んでるんですか?

藤原:そうですねえ、僕はプライベートでも立ち呑みで呑む方が多いと思います。でも1人で考えごとしたい時は、いきつけの店には行かないようにしてるんですよ。絶対に常連さんと話しちゃうから(笑)

キム:家で考えごとはしないんですか?

藤原:ほぼないですね。断言してもいいです(笑)

キム:生活にまみれちゃうから?

藤原:いや、寂しすぎて…(笑)家で呑むこともないし。家は酔っ払って帰って寝るだけの場所ですね。寝ながら本読むくらいはしますけど。キムさんは作品つくる時、どこで考えごとするんですか?

キム:電車の中ですね。メモを取り出してああだこうだと考えて書いてってやってます。あとは、人の舞台みてるときに「あ、これってもっとこうした方がいいんじゃないかな」とか「あー、こうやるんだ。じゃあ僕は今度こうやってみようかな」とか考えちゃうことが多いかもしれないです。そうやって誰かの作品を鏡にして自分に照らし返して色んなこと思いついたりすることがよくありますね。

藤原:それって、いい作品を観た時にそうなることが多いですか?それとも意外と「アチャー」みたいな時のほうが思い浮かぶんですか?

キム:どうかな〜(笑) 多分中間くらいのほうがいいかもしれないですね。すごくいい作品だとその作品に酔っちゃうから、どっちつかずの方がいろいろ考える余地があるのかもしれない。この間、岡崎藝術座を観てきたんですけど、その時もいろいろと考えたんですよ。あ、いや、別にそれが中間だったっていうわけではないんですけど…(汗)

一同:笑

キム:いや、僕はもともと言葉に興味があったんだけど、演劇をやりたいということではないなとずっと思っていたわけなんですよね。僕が演劇を観に行っても、そんなに楽しめないのは、ストーリーを追わないといけないのが面倒くさいと感じちゃうからなんです。だから自分でやるならそうではない方法でと思って、「GERO」では実況っていうスタイルをとってるんです。だから岡崎藝術座も、しつらえはおもしろかったんですけど、語られているストーリーについていくのがなかなか大変でした…。
芝居を観てる人って、どうやって観てるんですか?

藤原:僕はあんまりストーリーを追わないかもしれないですね。だから批評文を書くときも、良くも悪くもですけど、あらすじをあまり重視してない。もともと僕は演劇をやっていたわけではないし、小説を読んだり映画を観たりするほうが好きだったので、たぶん演劇に物語を求めてないんですよね。それよりも、目の前で何が起きていて、それがどこまで遠い世界をつかまえているのか、とかいうことのほうに興味があります。

キム:でもどうして小説なり、映画なり、演劇なり、人は物語を求めるんですかね。

藤原:キムさん自身はあまり欲しないですか?

キム:物語は欲しないですね。小噺みたいなものは好きですけど。

藤原:小噺かあ。例えば落語でも、実際は物語を楽しんでいるわけではないと思うんですよね。話芸として、噺家のパフォーマンスのおもしろさとか、言葉の音としての繋がりのほうに引きつけられるんじゃないですかね。たとえば神話とかおもしろいと思いますけどね。けっこうハチャメチャな展開だったりして、現代の感覚とはだいぶ違っていて。


なぜ人は物語を求めるのか…うーん… 安心するのかな。

藤原:特に90年代のトレンディドラマあたりから、物語とかドラマが定型化・パターン化していったんじゃないですかね。
古代ギリシアに職業作家が現れて神話を戯曲化して演劇が生まれ、様々な物語が生み出されてきたわけですけど、最初の物語は、他人に何かを伝えたいという欲望から生まれたんじゃないでしょうか。それがいつのまにか物語それ自体が消費物になって、見て楽しむという受け身のものになった。日本の場合トレンディドラマでその消費の仕方がいったん完成したのかな、と。

キム:すごい(笑)ギリシア神話からトレンディドラマまで…

藤原:だいぶとびますけどね(笑)そしてこれからの物語作家に期待したいとも思いますけど。

キム:僕も、近所でおこるごく身近な出来事が物語の出発点だって思ったりもしますけどね。
今、他人に何かを伝えるという話がでましたけど、僕の場合はその時に、自分と相手の間に何があるかということを考えてしまうんですよね。そしてそこにはまず、肺を使って息を吐き出すという行為があって、次に声帯をふるわせて息の上に「あ〜」って音をのせるという行為がある。その先に「あ〜な〜た〜」みたいに音を重ねて意味を持たせて初めて伝わると思うんですけど、その「あなた」っていうところに到達する前、意味をもつ手前の状態をもうちょっと探れないかなと思っちゃうんですよね。それは、単なる呻きやうなり声、寝言やいびきやため息だったりいろいろあると思うんですけど。

藤原:寝言やいびきやため息…(笑)

キム:うん。それでもうちょっと別の方向に進むと歌とか詩吟とかになっていく可能性があるのかもしれないし…。そういうことに興味があるんです。
あ、ところで「エロスとカオス」はそろそろ本題に入らなくていいんですか?(笑)



ダンス と エロス

藤原:すっかりテーマを忘れていましたね…(笑)
なんでエロスにしたかというと、一つは、サンプルの『離陸』の時のキムさんが相当エロスだったなっていうのと、やっぱりダンス公演を観にいくと常にエロスと隣り合わせだと感じるからです。「GERO」も、勿論エロスそのものを目指してはいないでしょうけど、今おっしゃったように言葉の意味から離れようとする時に、エロスというものが生じるんじゃないかなと思うんです。つまり、物語に背を向けた時に、エロスがあらわれる。

キム:そうですね。エロスはどうしたって行き着くところだと思います。僕はダンスはセックスだと思っているんです。稽古している時って自分の身体の迷宮に入り込んでいって体内を探索する感じなんですよね。ここに行ったらこうで、あそこに行ったらこうか…みたいな感じで体内を冒険する。そしてその旅の結果をお客さんに報告しているんです。ダンスを始めたばかりのときは特にそうで。それで、セックスは自分の身体が相手の身体になっただけで、踊りをつくる作業と似てるな〜って思うんですよね。だからそういう意味では、ダンスやっててよかったなと思いますね。

藤原:どうしてですか?

キム:普通の人は自分の身体を探検したりはしないでしょ。特に舞踏はそうなんですけど、ダンスの稽古で世界を旅するんですよ。

藤原:え?!世界を旅する?どういうことですか?

キム:師匠の古川あんずから教わった体重移動の稽古というのがあるんですけど、それは、両手を広げて、片足をザッと前に出し、次に後ろに残っている足をゆっくり前に移動させていってグッと出す、その繰り返しなんですけど、まず片足を前に出した時に、足と足の間に数十センチ間隔があきますよね。そこで地面がひび割れをおこして、そのひびがザ〜〜〜〜〜〜って地球を一周してきて地球が2つに分かれる寸前にもう片方の足を前にだせとか言われるんですよ。そんなこと考えもしなかったから「なんだそれは!」って思って。稽古場でやってるだけなんだけど、稽古場から地球に広がっていくんですよ。

藤原:すごいっすね(笑)

キム:よく人体は小宇宙だと言われるけど、そういう視点で身体を見つめるようになっていたので、身体で宇宙を探索するような感覚がずっとあるんですよ。その感覚をセックスの時の相手に当てはめると、単なる肉と肉の交わり以上の、極端に言うと相手の宇宙を探るみたいな感覚になってくるわけですよね。

藤原:今、奇しくも宇宙という言葉がでたんですけど、テーマ設定を決める時に「エロスと宇宙」にするかすごく迷ったんですよね。

キム:それもいいですね(笑)



店員さん:あら汁でございまーす。



藤原:お!おいしそう。



そろそろ終盤戦。お酒と料理で満たされた胃には出汁がしみ込んだ「魚のあら汁」100円がうれしい


意味未満の言葉

藤原:キムさんはなぜ言葉に興味を持ちはじめたんですか?

キム:僕は小中学校の読書感想文とかは苦手で、本もあまり読んでこなかったんですよね。だから言葉と親しむ前に古川あんずのところでダンスを始めていたんです。彼女から稽古でいろんな言葉のイメージをぶつけられて、その後独り立ちして今度は自分が教える立場なった時、バレエや日舞のように型がない自分の踊りを人に伝えるためには言葉が必要だって気付いたんですよね。自分の中のごちゃごちゃしたことが言葉という魔法によってまとまりをもってくる感覚がおもしろくて、それで言葉に興味を持ったんです。そこから、身体と言葉を結びつけることを考えて始めたのが「身体国語辞典」なんですけど、それは、身体にまつわる慣用句、例えば「足を洗う」「手を切る」とか、そういう言葉を集めてそれぞれの解釈を勝手に考えて辞典にしていくというもので、今いろいろ集めているところなんです。
余談ですけど、何故か身体にまつわる慣用句ってマイナスなイメージのものが多いんですよ。「手が早い」「腹黒い」「首がまわらない」・・・

藤原:おもしろい!けどなんか悲しい・・・。

キム:そう。それで身体と言葉の関係は切っても切れないなと思って「GERO」を始めたんです。

藤原:ダンスをずっとやってきたキムさんが、「GERO」を旗揚げするにあたって言葉を扱うことを意識されたというのは、新しい模索ですよね。

キム:かなり模索ですね。終着点が見えなくて右往左往してる。

藤原:今日の冒頭で、「GERO」の公演を観て玄人の意見が辛かったっておっしゃっていましたけど、それは構造分析のしにくさが影響しているかもしれないですね。キムさんが今やろうとしていることは構造として捉えづらいと思うんです。物語とか、展開とか、空間配置とか、作品の構造が見えるほうが観客としては飛びつきやすいし、批評も書きやすいんですけど。けれどもそれは意味の世界と隣合わせになってしまう。意味未満を模索するというのは、超わかりづらい世界に足を突っ込むことなんだろうなと思います。

キム:自分でもよくわからないです。それに、今回発表したものが僕のやりたかったことかというと必ずしもそうではないと思うんです。言葉は自分の得意分野ではないので、これからも右往左往していくと思うんですね。今回は右往、次は左往、その次は前往、後往っていう感じでしばらくウロウロするだろうし、むしろそうしたいって思います。

藤原:それは、時間をかけようと思ってるってことですよね。

キム:そうですね。
ところで全然エロスでもカオスでもないですね。いいんですか?

藤原:・・・・(笑)



…笑



だんだんとお客さんも増えてきたので、昼から呑んでる組はそろそろおいとますることに。


エロス と カオス(番外編)

収録後、せっかくなので溝ノ口西口商店街を散策。
すると近くにこんな古本屋さんを発見! アポなしですが、ちょっとお邪魔してみることに。



溝ノ口西口商店街を散策


所狭しと種類豊富な本がひしめく店内。これこそカオス?



所狭しと種類豊富な本がひしめく店内。


そしてレジカウンター付近にてもっとカオスな現象を発見!
なんとマスターこと店主の菊池さんが、仕事中にもかかわらずお酒を呑んでいるではありませんか!!!



なんとマスターこと店主の菊池さんが、仕事中にもかかわらずお酒を呑んでいるではありませんか!!!



いい笑顔です(笑)



さらに店内の一角には、「エロス」コーナーも設けられ、カメラマン含む男性陣3名はしばらくそこで盛り上がっていたのでした。




そして数分後・・・・・



掘り出しものをみつけたのか、いそいそとレジへ向かうお2人の姿を確認。

さて、何を買ったのでしょうか・・・・



「ザ・ヌード」と「オーラルセックス入門」・・・ですか。    


「ザ・ヌード」「オーラルセックス入門」・・・ですか。



ということで、玉井西口店で呑んだあとは「明誠書房」さんにも是非お立ち寄りください。ただし3人以上のグループで入店すると万引きチームに間違えられる可能性があるのでご注意を。私たちも最初「山賊が来たぞ!」と警戒されていたそうです。明誠書房にいく際は、マスターに怪しまれないよう丸腰で行かれることをオススメします(笑)


最後はすっかり仲良くなって、「また来るね〜」と約束して帰りました。

最後はすっかり仲良くなって、「また来るね〜」と約束して帰りました。
そんなこんなで図らずもオチがついた最終回でした。 神奈川・立ち呑み文化放談のアーカイブは下のリンクよりご覧いただけます。
その前に、本日お世話になった大衆酒場玉井西口店さんの情報もチェックをお忘れなく!



ここからはお店の情報です。

本日いただいたお料理はこちら


本日いただいたお料理はこちら



そして本日のオススメは?

金運つくね


大衆酒場 玉井西口店
http://tabelog.com/kanagawa/A1405/A140505/14039459/
神奈川県川崎市高津区溝の口2-7-11
TEL:050-5869-7930(予約専用)・044-833-5775(お問い合せ専用)
定休日:年中無休
営業時間:
15:00〜24:00(L.O 23:30)
アクセス:溝ノ口駅正面改札から徒歩1分



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