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神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」。ミュージカル・音楽・演劇・映画など県内のアート情報を発信します。

ヨコハマトリエンナーレ2014 アーティスティック・ディレクター森村泰昌 インタビュー

■ 森村泰昌|MORIMURA Yasumasa
1951年、大阪市生まれ、同市在住。京都市立芸術大学美術学部卒業、専攻科修了。
1985 年、ゴッホの自画像に扮したセルフポートレイト写真を発表。以後、一貫して「自画像的作品」をテーマに、美術史上の名画や往年の映画女優、20 世紀の偉人たちなどに扮した写真や映像作品を制作している。
1988 年、第43 回ヴェネチア・ビエンナーレ、アペルトに出品したほか、国内外で多数の展覧会に出品している。
主な個展に、「美に至る病―女優になった私」(横浜美術館、1996 年)、「空装美術館―絵画になった私」(東京都現代美術館、他2 館、1998 年)、「私の中のフリーダ/森村泰昌のセルフポートレイト」(原美術館、2001年)、「美の教室、静聴せよ」(熊本市現代美術館、横浜美術館、2007 年)、「Requiem for the XX Century. Twilight of the Turbulent Gods」(La Galleria di Piazza San Marco、ヴェネチア、他ニューヨーク、パリに巡回、2007、2008 年)、「なにものかへのレクイエム―戦場の頂上の芸術」(東京都写真美術館、他3 館、2010、2011年)、「森村泰昌展 ベラスケス頌:侍女たちは夜に甦る」(資生堂ギャラリー、2013年)、「森村泰昌 レンブラントの部屋、再 び」(原美術館、2013年)など。文筆活動も精力的に行っており、近著に『森村泰昌「全女優」』(二玄社、2010 年)、『まねぶ美術史』(赤々舎、2010 年)、『対談集 なにものかへのレクイエム―20 世紀を思考する』(岩波書店、2011年)など。
2006年度京都府文化賞・功労賞、2007年度芸術選奨文部科学大臣賞、2011年に第52回毎日芸術賞、日本写真協会賞・作家賞、第24 回京都美術文化賞の各賞を受賞。同年、秋の紫綬褒章を受章。2013年に平成25 年度京都市文化功労者として表彰を受ける。

interview : 西野 正将
text : 井上 明子



今年で5回目を迎える「ヨコハマトリエンナーレ2014」。今回は横浜美術館・新港ピアをメイン会場に、横浜市内各地に拠点をひろげ開催される3年に一度の国際展。レイ・ブラッドベリのSF小説『華氏451度』を引用したタイトルや、展覧会を本にみたてた展示構成も私たちの想像力を刺激してくれる。8月の開幕が待ち遠しい今節、ヨコハマトリエンナーレ2014 アーティスティック・ディレクターであり美術家の森村泰昌さんにお話をうかがった。



横浜という街について


Q:さっそくですが、森村さんからみた横浜の印象を教えてください。そして横浜を舞台にしたトリエンナーレを開催するにあたり、地域に対して意識していることもあわせてお聴かせください。

街っていうのは、人ありきかなと思うんですね。だから、人を大切にしたいと思っています。
横浜トリエンナーレはこれまでも、ヨコトリ学校等を通じて、その場限りじゃなく、長い期間かけてサポーターと一緒に何かを考えて行くという試みをやってきていると思うんですが、そういう人たちにどんどん関わっていただけるようにと思ってます。そこからさらに次の裾野に広がって行けば、もっといろんな人と関われる、そういう人の繋がり・広がりが第一だと思ってるんですよね。だから、そこにおられる人たちっていうのが、第一の風景かなと思います。

Q:では、純粋に横浜に訪れたときの街に対する印象を教えてください。

主会場がみなとみらいと新港埠頭の方なので、割と横浜の中でも新しい街なんですよね。正直言うと、僕は古い街の方が好きなんですよ(笑)
でも、横浜っていうのは歴史のある街ですから、新しく開発された街とは別に古くからの街もあって、そっちのほうが魅力的というと変なんだけど、そのへんのコントラストが街らしくて好きなんです。
ですから、ちょっとみなとみらいから外れて、黄金町とかいろんなところを散歩して、市場とか、人が生活している古い町並みがあると、ちょっとホッとするというか。なかなか趣があってね。
あとは、やっぱり古い建物とかも魅力的で、幕末、あるいは戦後以来のいろんな歴史とともに建造物があるのもすごくいいですね。そういうのが絡み合ってる感じが好きですね。



写真左から:メイン会場となる横浜美術館と新港ピア(新港ふ頭展示施設) 写真左から:メイン会場となる横浜美術館と新港ピア(新港ふ頭展示施設)


「ヨコハマトリエンナーレ2014」テーマについて


Q:続いて、今回のテーマについてお聴きしたいのですが、まず、これまでの横浜トリエンナーレに対する、特別な印象などはありますか?

最近こういった大型展は全国的にたくさん開催されていると思うんですけど、過去の横浜トリエンナーレも含め、それらはあまり意識しないで、自分にとって大事なことをテーマにしていこうっていうのが主な気持ちです。
ただ、横浜トリエンナーレが開催されるまではこういう大型の国際展っていうのはほとんどなかったと思うので、そういう意味では先例をつけた、いわば老舗だと思うんですね。
だから、今回で第5回目なんですけど、老舗としてよい展覧会を、提案性のある展覧会を示す責任があるというふうには思っています。

Q:今回レイ・ブラッドベリの1953年のSF小説『華氏451度』が大きなテーマになっていると思いますが、この本を読んだのは森村さんがおいくつぐらいの時なんでしょうか。

何回か読んでると思うんですけど、一番最初に読んだのは20代前後じゃなかったかな。

Q:読まれたときに響く物があっていつかこれを引用しようと思っていたんですか、それとも別の思いがあって昔の本をあえて引用されたんですか。

昔読んだ時は、様々な本の中の一冊にすぎなかったと言っていいと思うんですよ。いずれこれを何かのときにテーマにしようという気持ちはなかったですね。
今回、「忘却」が大きなキーワードなんですが、例えば今は情報化時代とよく言われますけど、情報化されないものの中には非常に大切なものがあるということを、なかなかみんなが気がつかない。気がつかなかったり、見てみない振りをしていたり、そういうことってたくさんあるだろうなって思うんですね。芸術の眼っていうのは、そういった我々が気がつかないところを、ちゃんと眼差してくれることだと思うんです。それがすごく大事な芸術の力かなと思うので「忘却」をテーマにしたいと思ったんです。

なぜ、『華氏451度』かというのは、「忘却」というキーワードをダイレクトに指し示すタイトルではなく、いろんな含みを持たせたかったからです。いくつか思い浮かんだタイトルがあったんですけど、例えば「忘却」とか「私たちの大事なもの」とか、『華氏451度』の小説が持っているいくつかのテーマが私たちのテーマと重なり合っている。だからこれをタイトルにするのはすごくいいと思ったんです。さらに『華氏451度』というのは1950年代に作られた近未来小説ですけど、いろんな意味で今の時代を彷彿とさせる、ドキッとさせるものなので、そういう意味で、非常に預言的なところがある。われわれのヨコハマトリエンナーレ2014も預言性のある展覧会にしたいと思ってこれをメインタイトルにしたんですよね。



森村さんからのメッセージ


Q:記者会見でも「子どもにもお子様ランチじゃなく、本格的なフルコースのディナーを食べさせたい。それを食べさせるためには、どうすればいいのかということを考えたい」とおっしゃっていたと思います。横浜トリエンナーレのような地域で開催される大規模な展覧会ですと、それを目的に訪れる人に加えて、芸術にあまり免疫がない方々も多くお越しになると思います。最後にトリエンナーレにいらっしゃる様々なお客様に対してひとことメッセージをお願いします。

メッセージの前に、多種多様な方がお越しになることを想定しないといけないので、さっきも話に出てきたこどもに観てもらう仕組みづくりということに加え、もう一つ、芸術に対してビギナーの方にもこういう展覧会を興味深くみていただくための手がかりを用意していることを言っておきたいと思います。実は、今回工夫しているのが音声ガイドなんです。普通はアナウンサーとかタレントさんとか、語りの専門家が文章を読むんですけど、それだと杓子定規な解説になりがちなので、今回はこの展覧会を企画した私自身が生の声で語るというふうにしようと思っています。だから教科書的に教えてもらうというより、ここが面白いんだっていう点を、企画した側から語り言葉でしっかりとお伝えする。なんて言うのかな…、私とともにギャラリーツアーをしていくスタイルをとりたいと思うんです。

Q:音声ガイドを通して、常にアーティスティック・ディレクターである森村さんとギャラリーツアーができるということですよね。

しかも、そのガイドは、基本的には原稿を作らないで録音しようと思うんです。普通は300字1分とか決まっていて、それを随時読んで仕上げて行くんですけど、今回は、今こうして話をしているように誰かに語りかけるように、しかも日常語で話すガイドを作りたいので、美術用語は一切使わない予定です。

Q:なるほど。僕も音声ガイドは、固すぎるというかあまり使おうと思ったことはないんですけど、そういった内容でしたら使ってみたいですね。

そうでしょ。実は僕、今までに2回横浜美術館で個展をやっているんですけど、『美の教室』という展覧会のときに、私自身が語ったテープを用意しておいて、それを聴きながらまわる方式をとったんですよ。それが、なかなか評判よかったみたいなんですね。作者が自分の語りで自作を語るっていうのは非常に珍しいことだと思うし、どんなことを考えてつくってるんだろう?っていうのを感じながら展覧会をまわっていくことがお客さんにとってもすごく面白かったみたいなんです。前回は割とプリミティヴにやった部分もあるので、今回はもうちょっと精度よく、ちゃんとした音声ガイドの方式を使って、もう一度完成版をやれたらなと思っていて…。今回はそれを大いに活用したいと思ってます。

ビギナーの人に対して、難しい言葉を使わないで、いかにして作品を語れるかということ。それは自分にとってもチャレンジなんですけど、是非やってみたいと思ってます。

最後のメッセージとしてはちょっと長くなっちゃいますが、この展覧会は、一冊の本を読んでいくような感じの展覧会だと思うんです。しかも、その本は思想書じゃなくて小説だと思うんです。読み進めて行くうちに次はどうなるんだろう、次は何になるんだろうっていうように、常に次を期待して歩んでいける。そういう構成にしようと思っています。小説も頭で理解するわけではないのと同じで、体験・体感していく、そういうイメージで今回のトリエンナーレは作り上げているので、きっとみなさんに、新しい体験を持っていっていただけるんじゃないかな…と思っています。

ありがとうございました。楽しみにしております!



■他インタビュー記事はこちらから!

関連するURL
http://www.yokohamatriennale.jp/2014/

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