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音楽その他

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 新常任指揮者 川瀬賢太郎の素顔に迫る!

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 新常任指揮者 川瀬賢太郎の素顔に迫る!

Interview : 岡山 淑美    Text : 井上 明子    Photo: 西野 正将
 

いつも音楽の魅力を様々な形で私たちに伝えてくれる神奈川フィルハーモニー管弦楽団。そんな神奈川フィルが、2014年4月から新指揮者体制に変わるというニュースを耳にしました。これまで5年間務めた金聖響氏からバトンタッチした川瀬賢太郎氏が新常任指揮者に、そして小泉和裕氏が特別客演指揮者に着任。現・首席客演指揮者のサッシャ・ゲッツェル氏と共に、3人の指揮者体制で新生・神奈川フィルが始動します。その中でも川瀬賢太郎氏の就任は、国内最年少の常任指揮者の誕生としても話題を集めています。MAGCUL.NETでは、29歳でオーケストラの顔となった川瀬さんの素顔の魅力に迫るべくインタビューをさせていただきました。
(場所:神奈川フィルハーモニー管弦楽団 事務所)

 
 
ー さっそくですが、神奈川フィルハーモニー管弦楽団との出会いについてお聞かせください
 
川瀬賢太郎(以下川瀬):東京国際音楽コンクールで入賞したのがきっかけですね。僕はそのコンクールで1位なしの2位だったので、入賞デビューコンサートというのを振らせていただいたんです。本来ならば1位の人がコンサートのメインプログラムを、2位の人が真ん中のプログラムを、3位の人が序曲を振るというのが慣例なんですが、その年はコンクールはじまって以来の1位・3位なしという結果だったので、僕1人で一夜のコンサートを振るという、当時にしたら恐怖に近い体験をしたんです。その時のオーケストラが神奈川フィルハーモニー管弦楽団(以下神奈川フィル)だったんですよ。
その後ブランクがあいて、去年の4月に音楽堂で6年ぶりに2回目の共演しました。その時は、一緒に音楽をつくれたという感動の方が大きかったです。
 
ー 今回の就任は、常任指揮者としては国内最年少とお聞きしました。常任指揮者という立場で神奈川フィルに関わっていくことへの意気込みを教えてください
 
川瀬:最年少の常任指揮者というのは僕にとってはあまり重要ではないですね。やはり今まで僕が登ったことのない新しいレベルでのお仕事で、やってみないとわからないことも多いと思うんですが、意気込みとしては”やる気満々”ですね。それと同時に、指揮者というのは、舞台上でおこるあらゆることに責任をとらなければいけない立場だと思うので、そういった重圧というのも感じています。どの業界もそうだと思うんですけど、組織というものは何かを変革しようと思ったら物凄く時間がかかると思うんです。だから、特に何かを急速に変えて行こうということは思ってなくて、とにかくお互いが音楽的にリスペクトし合って、高めて行って、いつの間にか良くなっていたねっていう雰囲気作りができればいいと思っています。そのためには一生懸命やるだけなんですけど。
 
●kanafil
 
ー なるほど。では次に、指揮者になられたきっかけや、幼少のころのエピソードなどを教えてください
 
川瀬:父親がクラシック音楽が好きで、音楽が勉強になる前に日常的に耳にしていました。それが大きな原因だと思いますね。
 
ー 生活の中に自然にあったということですね
 
川瀬:そうですね。クラシック音楽との出会いが、テスト勉強だとか授業だとかになる以前だったのが大きいかもしれないですね。今の子達って、ポップスが日常的にあって、それと比較するようにクラシックがあるという状況の人が多いと思うんですけど、僕の場合はクラシック音楽もポップスもジャズも、全部同じラインで聴いていました。だから今でも車の中にはクラシックのCDよりもポップスのCDの方が多いくらいなんです。
 
ー 先入観なくクラシックに触れることができたというのは大きいですね。次に、指揮者が日常生活で気をつけていることを教えてください
 
川瀬:やっぱり、風邪ですね。人間ですから、どんなに気をつけていても風邪をひくんですよね。確実に体調が悪いときでも、絶対に熱は計らないで「元気、元気!」っていう感じで乗り切っています。やっぱり穴はあけられないから。
 
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ー 今回は川瀬さんの、指揮者でない時の一面というものもお聞きできたらと思っているのですが、オフの時間の過ごし方はどうされていますか
 
川瀬:趣味は結構あって、車やサッカーが好きですね。サッカーは観るのもやるのも好きだし。あとはジムにいったり、読書をしたり、あと最近ミニ四駆もまたはじめました。それと、普通に買い物したり・・・オフはなんでもする感じです(笑)
 
あ、あとデビューしてからはおいしいものを食べることにも積極的になりました。せっかくこの職業でいろいろな地方に行けるのだから、コンビニ弁当で夜ご飯を済ますのではなく、音楽と同じように、食事もいいものを食べて知ることで、視野を広げる意識をするようになりました。
 
ー ご飯に誘われたりとかも多そうですね
 
川瀬:そうですね。オーケストラの方々に誘われることももちろんありますね。僕、基本的に1人でご飯を食べることがあまりできないんですよ…(笑)指揮者だからとか関係なく、人目が気になるというか。だから、たまに吉野家とかで、すごくきれいな人が1人で牛丼とジョッキの生とかを置いているのを見ると、「この子としゃべってみたい」と思うんですよね。すごいメンタルもってるんじゃないかと(笑)
 
ー 最近は女性の方がたくましいですものね(笑)
 
川瀬:演奏会もそうなんですけど、1人でご飯を食べても「おいしい」ということを分かち合えないのが寂しくて・・・。例えば演奏会に行ったり、映画をみたりしても、もちろん観ることが大事、感じることが大事というのはわかるんだけど、その場で感想を言い合ったりするのも醍醐味の一つだと思うんですよね。
 
ー 1人で観ているのはやはり寂しいですもんね
 
川瀬:そうなんですよ。そういうことがやりやすい環境にあれば、もっと健全な世の中になると思うんですよね。だから、おいしいものを食べてるときに「これ、おいしいいね」って言いたい。そういうことが、もともとおいしいものをさらにおいしくしてくれると思うんです。演奏会も同じで、最終的に演奏会を有意義なものにしてくれるのはお客様ご自身なんだろうと思うんです。
 
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ー 日々の生活の中で時間のやりくりなど大変だと思われますが、どのようにされていますか
 
川瀬:とにかく2年先とかまで本番が決まっているわけだから、日々勉強に追われていて、よっぽど今日は頭を空っぽにする日と覚悟を決めなければ、やっぱり楽譜を読んじゃいますね。「読まなきゃ、読まなきゃ」というふうに。
 
ー それでは1日のこの時間はあいているからちょっとリフレッシュというふうに時間を決めて動いていらっしゃるんですか
 
川瀬:運動とかは毎日するようにしていますね。幸いマンションにジムがついているので。でも結局僕は「今日の夜、何時以降は勉強しない」とかいう決め方ができない方で、読み始めたら読んじゃうんですよ。まだだめだ、まだだめだっていうふうに。だからその日オフにするか、読むんだったら覚悟きめて読むか、どっちかですね。
 
ー では次に、指揮者としての喜びや目指していることを教えてください
 
川瀬:自分の夢が叶っているわけですから、基本的には嬉しいし楽しいし幸せですね。もちろん苦しいときの方が多いわけですけど。
今の質問に対する答えは2つあって、1つは、もう亡くなってしまったベートーベンとかモーツァルトとか、偉大な作曲家たちと作品を通じて時間を共有できること。もう1つは、お客様の喜ぶ顔をみれたり「よかったよ」と言ってくださるのを聴いたりすると、やっぱり素直に嬉しいと思いますね。その人達の人生の2時間なら2時間を、僕たちの演奏に割いてくれているわけですから、やっぱりいい思いをして帰ってもらいたいというのが僕たちの願いなので。
 
ー聴いている側もそこを期待しているんだと思います。さらにいえば、2時間という限られた時間ではなく、豊かな時間をその後ももって帰れるような体験としての演奏会ということですよね
 
川瀬:そうですね。そういう時間を少しでも多く提供できたらいいなと思うし、そのために僕たち音楽家達はもっと切磋琢磨してがんばって行かなくてはいけない。それが逆にバイタリティになり、いい循環が生まれたらいいなと思います。やっぱり、神奈川フィルを応援してくださっている人たちの中に新参者の僕が飛び込むわけですから、もちろんそこでの苦労もこれからしていかなくてはいけないんですけど、でも「新しい人がきて良かったね」と思ってもらえるように、1年間がんばっていきたいですね。
 
ー 今の質問にも重なると思うんですが、神奈川フィルファン及び、音楽ファンのみなさまへのメッセージがあればお願いします
 
川瀬:とにかく演奏会に来ていただいて、楽しんでいただきたいです。僕たちも音楽で皆様にいい時間を提供できるように努力したいと思っています。みなさんに、演奏会でお会いできることを楽しみにしていますし、また気軽に声をかけていただいて、音楽の話などできたら嬉しいです。
あまり構えずに、とにかく楽しんでいただけたらいいなと思いますね。
 
ー ありがとうございます
 
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