
ノルウェー人の初代オーナーの思いを受け継ぐバーで飲む「オスロ」
- 開催日:イベント終了
オンナヒトリ
Bar
で美しい
一杯を
横浜のバーへ繰り出し美しい一杯との出会いを綴る、オンナお一人様で行くバー連載♡ 今回は、キラキラとネオン輝く横浜中華街方面へ。

多くの観光客で賑わう大通りを抜けたところに「ここ中華街?」と思わせる、静かな時間の流れる店「ノルゲ」はあります。
ここは、中華街で40年以上の歴史を持つバーで、オープンは1972年(もうすぐ半世紀!!)。当時、海を越え、船乗りとして日本へやってきたノルウェー人の男性が日本人女性と結婚し、この場所に店を開きました。かつては同じ外国人の船員さんたちが夜な夜な集う店だったそう。2012年に初代オーナーの奥様から譲り受け、新しいオーナーさんがこの店を守り継いでいらっしゃいます。
扉を開くと、目の前に広がるのは船室をイメージして造られたというオープン当時そのままの空間。6本のオールを組み合わせた衝立、あたたかみのあるランプ、革製の地図&タペストリー、ロープなど初代オーナーが集めていたアイテムの数々が飾られていて…まるで夜の海を航行する船内でゆらゆらと飲んでいる気分に。

ちなみに店内は、かなり暗め。何しろイメージは、昔の船内ですからね。間接照明となるランプの灯りが頼り(笑)…より船内にいるような気分を高めてくれます。

初代オーナーが大切にしていた革製の地図もまだまだ現役! 革特有の経年変化があってインテリアとしてもいい味を出していました。



美しい弧を描くカウンターの先には、今なお現役で活躍し続けるジュークボックスの姿も。
…まずはこちらのカウンター席に座り、最初の一杯をお願いすることに。
バーテンダーの小野口さんに「ノルゲ」の歴史などお話を伺いながら、ノルウェーの首都が名前になったオリジナルカクテル「オスロ」を作っていただきました。
ノルウェー原産のアクアビット(イモを主原料にした蒸留酒)に、グレープフルーツジュースや、オレンジの果皮からエッセンスを抽出したリキュールのコアントローなどを加えたショートカクテルです。



こちらが「オスロ」。全体量の半分ぐらいがグレープフルーツジュースということで、飲み口がとてもさっぱりとしていて、お酒がそんなに強くない方もこれならおいしくいただけるはず。食前酒としてもおすすめです。
グラスも美しい「オスロ」をいただきながら、ここに外国船で日本にやってきた船員さんたちが集っていたのだなと、その頃に思いを馳せてみたり。タイムスリップできたら、(ちょっと怖いので)入り口のドアからこっそり覗いてみたいなぁ 。余談として小野口さんからお聞きした話によると、外国の船員さんたちは酒飲みが多く、ショットバーでは「チェイサーはビール」が当たり前だったとか。さすがですね!!

ここで女性ひとりのお客様はいらっしゃるか…といつもの質問を投げかけてみると、答えはYES! 場所が中華街大通りに建つ善隣門からすぐの割には、扉を閉めてしまえば通りの喧騒はどこへやら? 「中華街にいるとは思えない全く別の空間なので、お仕事帰りにふらっと立ち寄られる女性のお客様も多いです。お一人でいらして、マティーニを一杯飲んで帰られたり…。週末に比べ、平日は比較的店内も静かなので1日のリセットをするにはぴったりなのかもしれません」と小野口さん。「時々、バーに来るのは初めて、お酒の種類も知らない…というお客様がいらっしゃいますが、そんな方にはあえてメニューを見せず、甘い系 or さっぱり系などご自身の好みだけ教えていただくんです。メニューをあえて見せないようにしているのは、可能な限りその方の好みに近い一杯をご提案したいから。メニューには限られたドリンクしか載っていないので、数多くそろうお酒の中からより好みに近い一杯を味わっていただきたいなと思っています」。確かに、定番の一杯もいいけれど、お酒のことを知り尽くしたプロの腕で好みに限りなく近づけて作っていただいた一杯の方が満足のうえに、楽しいに決まってます! それこそがバーの醍醐味!!
さて、お話を聞きながらもあっという間に飲み干してしまった「オスロ」の次はどうしよう? …少し強めのものを作っていただこうかな…とお願いして、二杯目は“ドライめでさっぱり”な一杯をリクエスト。


チューリップのようなグラスに注がれた次なるカクテルは、その名も「ホワイトレディ」。イギリスで製造されているジンのタンカレーをベースに、コアントロー、レモンジュースをミックスした一杯なんだそうです。さすが、会話の中から私の好みを感じ取り作っていただいたカクテル…これ、好きです! おいしいです!!
「一人で静かに過ごしたいというお客様も、バーテンダーとの会話を楽しみたいというお客様も、それぞれに心地よい時間を過ごしていただける場を常にご用意しておきたいです。そのためには、オーダーはもちろん、接客もマニュアル化しない。その日、その時、一人ひとりのお客様に合わせていくことが大事だと考えています。バーに来られるお客様は、今の自分だけの時間を求めていらっしゃるので、私たち店の者がどうしたいかではなく、お客様がどうされたいかを考えて日々カウンターに立っています」。こうやってお話を聞くたびに、バーテンダーさんのお仕事って本当に奥が深いなと思います。
さてさて、ここで再びお店の内装に話は戻って。カウンター席の後ろには、最大14名ほどが座れるテーブル席もあります。「場所柄、お仲間と中華街でお食事を楽しんだ後、テーブル席で楽しく過ごしていただくのも大歓迎です! 路面店でテーブルチャージもなく、お酒も良心的なお値段でご提供しておりますので安心していらしてください」と小野田さん。
そしてこちらの店がこだわる「音」についても触れておかなくては! こちらは時々機嫌を損ねてしまうこともあるという懐かしのジュークボックス。
1曲100円。私もボックスの前に立ちさんざん悩んだ末に、ボビー・コールドウェルの曲を選曲してみました♪ おいしいお酒と、好きな音楽の相乗効果で楽しくなってきて酔いも徐々に加速!!(笑)

さらにこのカウンターの脇には、美しく磨かれたアンティークの蓄音機もありました。
実はジュークボックスの音楽で気持ちよくなって、取材終了後、カメラをバッグにしまい3杯目もおかわりしちゃったのはここだけの話(笑)。

中華街といえば、季節ごとにさまざまなイベントが行われていますが、そのすぐ近くにあるバーの中は…いつ来ても変わらない空気に包まれています。金土日の週末は観光客の方も多く、一見さんでも気兼ねなく入れる雰囲気だそう。中華街へ来たら、ぜひバー「ノルゲ」の扉を開けてみてください。小野口さん、おいしいお酒と素敵なお話…そして楽しい時間をありがとうございました! & ご馳走さまでした!!