
《オーボエ》 “チャルメラ”の親戚筋に当たる管楽器
木管楽器の代表はオーボエ
首席オーボエ奏者・鈴木純子さんに伺いました
オーボエをご存知の方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。クラリネットに似た黒っぽい楽器です。
オーボエとクラリネットは、同じグラナディラという黒い木材のボディにシルバーのキーが付いていて、長さも同じくらいなので、遠くからの見た目はかなり似ています。(茶色の木やゴールドのキーのものもあります)
最大の違い……それは音の出るしくみです。
オーケストラで使われる主な木管楽器(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット)のうち、フルート以外にはリード(植物の葦から採られた材料を薄く削ったもの)が必要です。
●クラリネット→1枚のリードをマウスピースに装着してマウスピースとリードの間に息を入れることでその1枚が振動して音が出る
●オーボエ、ファゴット→糸で巻いて重ね合わせた2枚のリードのあいだに息を吹き込むことで2枚が振動して音が出る
リードの要らないフルート、シングルリードのクラリネット、ダブルリードのオーボエとファゴット、などの木管楽器がオーケストラではほぼ中央……金管楽器の前に位置しています。
それではオーボエについてお話ししたいと思います
オーボエの起源は、古代ペルシャ時代のスルナという楽器にたどり着くようです。それが時を経て少しずつ変化して世界各地に伝わり、その中のヨーロッパで進化したショームがオーボエの直接的な祖先となります。
イギリスではショーム、ドイツではシャルマイ、フランスではシャルメル、ポルトガルではチャラメラという名前でした。
日本には、中国でスオナーといわれていたものが伝わっていましたが、来日したポルトガル人がそれを見てチャラメラと言ったことから、その後チャルメラといわれるようになったとか。
ということで、オーボエとチャルメラは親戚なんです。
ショームはリードがビリビリと鳴って大きな音のする楽器で、軍楽隊や屋外でのダンスで使われていましたが、それが室内演奏用に改良されていき、17世紀頃オーボエが誕生しました。
初期のオーボエは、2つほどの金属キーが付いている以外、あとは指穴が開けられただけのとてもシルプルなものでしたが、時代とともにキーも増え、メカニズムも複雑になり、現在使われているようなオーボエとなりました。
鈴木純子さんの演奏をチラッとお届け!
*七つの子(童謡)
オーボエ属としてはほかに、オーボエ・ミュゼット、オーボエ・ダモーレ、イングリッシュ・ホルン、バスオーボエ、ヘッケル・フォンがあります。その中でもオーケストラで最もよく使われるのがイングリッシュ・ホルンで、ドヴォルザークの新世界の第二楽章が有名です。オーボエ・ダモーレはボレロでのソロを吹きます。そうです、あのソロはオーボエではないのです。
オーボエのリードは奏者の手作り!
オーボエに不可欠なリードは、奏者がそれぞれ自分に合ったものを手作りしています。
葦から採った筒状のものを縦三ツ割にするところから音が出る状態になるまでの6つほどの工程に、何日間か費やします。相手は天然素材なので、同じように作っても同じものができることはなく、その中からの良いものをどれだけ確保できるか……日々闘っています。
素朴で愛らしくて優雅で哀愁を帯びて、時には民族的なものも感じさせるオーボエの音色は、心に訴えかけるような部分でよく使われています。チャイコフスキーの「白鳥の湖」に出てくるメロディーはとても有名です。
挙げきれないほどたくさんの美しいメロディーがありますが、奏者それぞれのリードの違いにより音色のバラエティが豊富なので、その違いをぜひ生で聴いてみていただきたいです。
オーボエ奏者に任される、大切な仕事とは?
オーケストラのなかで、オーボエには1つ大切な仕事が任されます。
コンサートのいちばん初めにオーボエ奏者がラの音を吹き、全員がその音程に合わせる作業をします。チューニングといいます。
しぃーんとした中でいちばん初めに正しい音程のラを吹くという仕事は責任重大で、とても緊張します。
平然とやっているように見えるかもしれませんが、コンサートを聴きにいらしてくださった際には、その様子も見てみてください。
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