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古本市が結ぶ、本・街・ひと

古本市が結ぶ、本・街・ひと

2017年6月10日、梅雨の晴れ間、青空の土曜日。

今回で7回目となる人気の古本市「ブックカーニバルinカマクラ2017」開催当日、「由比ガ浜公会堂」と、古民家「Garden & Space くるくる」の前では、たくさんの人が扉が開くのを待っていました。イベントの主催者は鎌倉の人気古書店「books moblo」さん。
会場の中には、さまざまな人が腕によりをかけてセレクトした本を並べる小さな本屋さんが35組。絵本、写真集、文学、旅の本、中には”こわい”本だけを扱うお店や、上質なデザインのローカルなリトルプレスを扱うブースなど、本好きでなくても心が躍る、本のパラダイスなのです。お客さんの年代もさまざま。若い女性やカップル、お母さんと子ども、みんな思い思いに本探しを楽しみます。

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ブックカーニバルinカマクラの会場、由比ヶ浜公民館。スタート直後からすごい熱気!
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「Garden & Space くるくる」お庭が美しい会場でブックハンティング。夢のような時間。

楽しみはそれだけではありません。まずは会場を結ぶスタンプラリー。途中に点在する雑貨屋さんをのぞいたりカフェでお茶したりしながらスタンプを集めると、オリジナルのおしゃれなエコバッグがもらえます。

さらに、鎌倉ゆかりの作家さんなどが登壇するトークイベントや、予約で満席になる製本のワークショップ、子供のための読み聞かせや「大人の朗読会」など、文士の街・鎌倉にふさわしい企画が目白押し。自分の好みでチョイスできる密度の濃い本のお祭が「ブックカーニバルinカマクラ」なのです。

その翌週6月17日に開催された「第4回小田原ブックマーケット」も、会場オープン直後から人の波が絶えない、大にぎわいの1日でした。
駅近くの「緑公民館」を中心に「平井書店」のパーキング、そしてシェアスペース「旧三福」の三会場に30組。小田原出身の小説家・椰月美智子さんやマンガ家・冬川智子さんのブースでは、遠方から訪れて買った本にサインをしてもらうお客さんの姿もありました。

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小田原ブックマーケットの会場、緑公民館。地元出身の小説家椰月美智子さんや冬川智子さんのブース。

小田原ブックマーケットの特徴は「まちなか会場」。メイン会場のほか、カフェやショップがそれぞれのお店らしい特徴のあるセレクションで本を並べて、一日限りの本屋さんをオープンするのです。お客さんは当日配布される会場マップを手にお店を探して巡りながら、ブックハンティングを楽しみます。

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小田原在住でも初訪問の人が多かったまちなか会場「喫茶mago」ライブなども行われている。

古本市の楽しみの一つは、この街巡り。行き先を探して歩く中で、歩いたことのない路地に足を踏み入れたり、入るチャンスのなかったお店の魅力に出会う、会場マップはその後も活用できるちょっとした宝の地図なのです。

関わる人がそれぞれ楽しむ1日

心がハッとときめく本を見つけた店先では、特に会話を交わさなくても心が通じたようなうれしさがこみ上げたりします。「水木しげるのマンガをお母さんに頼んで買ってくれた男の子がいたんです。意外な人が買ってくれるのってすごくうれしい。」そんな店主さんの声も。
当日隣同士になった店主さんたちも、時間が経つに連れて打ち解け、本の話で盛り上がります。

各会場では、スタンプラリーの受付や道案内をする、本好きのボランティアスタッフさんたちが運営を支えていました。会場での案内、店主さんのお世話やお客さんの対応、会場間のパトロール…たくさんの仕事を担当しながらも、みんなとても楽しそうに言葉を交わしているのが印象的でした。「お客さんや店主さんに楽しんでもらいたい!」という親切さや笑顔が人々をつなぎ、イベント全体を暖かく明るいものにしていました。

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会場の装飾もスタッフの手作り。本型の天井飾りが風に揺れていました。

街を舞台にした古本市が人と人をつなぐ

小田原ブックマーケット主宰の編集者・牛山惠子さんによれば、今回はまちなかの店主さんが自ら「小田原ブックマーケットを盛り上げる演出」を考えてくださった例が多く、少しずつ定着してきたのかも、と感じるとのこと。イベントをきっかけに再度そのお店を訪れ常連になる人もいるのだとか。目に見えない小さなつながりのきっかけがたくさん生まれた1日だったそうです。

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街中の書店、平井書店のパーキングも会場に。

誰にとっても心の奥の大切な場所と関わる「本」を介して、古本市では密かな心のやりとりがいくつも交わされます。読んだあとで話がしたくなり、本と出会った場所をまた訪れたくなる。
活字離れと言われる中でも、古本市人気が衰えないのは、「本」を介したコミュニケーションが人と人を、静かに深く結びつけるからなのかも知れません。

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