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伝説に彩られたまち「本牧」の昔と今、そして未来をアートでつなげ! 「本牧アートプロジェクト 2017」開催!

伝説に彩られたまち「本牧」の昔と今、そして未来をアートでつなげ! 「本牧アートプロジェクト 2017」開催!



横浜市中区の南東部に広がる小さな街・「本牧」。かつて、この街には米軍基地があった。第二次世界大戦から米軍の占領下におかれた1945年から、返還されるまでの1982年までのなかでのことだ。街は“アメリカ”であふれ、本牧は当時、最先端だったアメリカン・カルチャーに触れられる最高の場として人々を魅了していった。
 1964年12月に本牧に誕生したライブハウス「ゴールデンカップ」は、ベトナム戦争の最中、ひとときの休暇を求める白人・黒人であふれ返った。そして、彼らの饗宴と、ジャズやブルース、ロックなどの先端の音楽に一目触れようと集まる人、人、人。さまざまな人種が入り乱れるなかで、起こる喧騒と交流。それは話題を呼び、週末になると、東京からも大勢の人々が車を飛ばして“本牧の夜”をめざしたという。また、ゴールデンカップはGSブームを引率した「ザ・ゴールデン・カップス」や伝説のロックバンド・キャロルのボーカルを務めた「矢沢永吉」といった、今もなおコアなファンを持ち、支持を集め続けるアーティストを輩出した場でもあった。
 さらに、70年代後半から80年代にかけて一世を風靡したディスコ「LINDY(リンディ)」の存在も外せない。“ハマチャチャ”と呼ばれる独特なステップがあるが、このステップが確立されたのが同店であり、先のゴールデンカップとともに大きな賑わいを見せた。
 だが・・・、米軍が去った1982年以降、本牧の街は徐々に陰りをみせていく。基地の跡地には、複合商業施設「マイカル本牧」ができ、あたらしい街としての展開を見せたものの、のちのバブル崩壊の影響などから、以前の活気を失いつつ現在に至る。
 そうしたなか、本牧の地域再生をテーマに2013年よりスタートしたのが「本牧アートプロジェクト」だ。今年で5回目を迎えるが、今回は、プロデューサーを務める岡崎松恵さん(NPO法人Offsite Dance Project代表)と笠原彰二さん(フィールズプランニング代表取締役)のおふたり、さらに、プロジェクトの「レジスタンスプログラム『本牧AIR』」に参加の京都在住の美術作家・間瀬拓人さんに、「本牧アートプロジェクト2017」の意義やイベントの魅力をじっくりと語ってもらった。




Interview&Text&Photo:坂本嶺

−10月11日の「宮内康乃キッズワークショップ」を皮切りに、現在もさまざまなプログラムが進行中です。「本牧アートプロジェクト」の概要をお聞かせください。


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【岡崎】まず、私が代表を務める「Offsite Dance Project」は、劇場以外のさまざまな空間におけるパフォーミングアーツの推進というコンセプトを持ち、横浜を拠点に国内外でダンスを軸にした活動を行なっているNPO法人です。その初の地域再生事業として取り組んだのが「本牧アートプロジェクト」でした。横浜市のまちづくりに尽力されている笠原さんとタッグを組み、本牧内外のアーティストや本牧のお店、地域ネットワークを持つかたがたと力を合わせ、2013年からスタートさせています。

−笠原さんは本牧周辺エリアの出身とお聞きしました。街の移り変わりをどう感じられていますか?

【笠原】僕は本牧に隣接する根岸というところで生まれ育ちました。実家は米軍居住区の隣で、小さいころから同じ歳のアメリカ人と当然のこととして遊んでいましたし、ハロウィンなどのイベントにもよく参加していました。しかし、時代の変化に伴い、そういった環境がいつの間にかなくなってしまった、というのが率直な感想です。

時代を経るにせよ、通常は街であればどこかに昔の名残りをとどめるものですよね。しかし、本牧の場合、極端かもしれませんが・・・、こつ然と、という印象もあります。

ご存知かと思いますが、かつて米軍基地があり、アメリカに彩られ、それを吸収し、ジャズやダンス発祥の地となったのが本牧でした。しかし、基地撤退で、急速に当時の文化は色あせていった。アメリカ文化に触れられる土壌がなくなり、さらに再開発により当時の街の様相も変わっていった。さらに時を経て、バブル崩壊に加え横浜市営鉄道計画の中止などもあり、再開発の象徴であったマイカル本牧で1996年からスタートしたシネコン「マイカル松竹シネマズ本牧(のちのMOVIX本牧)」も2011年に撤退。その後、私たちのプロジェクトまでは、ただ建物の空間を残すのみとなっていました。

本牧という街は非常に独特で、まず旧来の住民・あたらしい住民が街に抱くイメージが異なること。そして、先のシネコン撤退が示すように、近年には拠点となるべき文化施設がないこと。さらに、最寄り駅がなく他地域からの人の流動が活発とはいえないこと、こういった複数の要因が絡み合い、現状があります。しかし、私含め、活気あふれる本牧を知る人間としては、全国的にいわれるまちづくりの課題では語れない部分がある。


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そういった思いから、当時を知る僕たちが次世代に継承していかなければ、という強い思いにかられました。そして、かつての本牧の文化は、語り継ぐべき価値があると思っています。若いかたは驚かれるかもしれませんが・・・、最盛期には、週末になると、横浜市内はもとより、東京からも大勢の人が集まり、音楽やダンスで夜を明かした“大人の文化で賑う街”だったんですよ。


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<本牧にあった伝説のディスコ「LINDY」>

−その当時の本牧の熱気を感じられるのが、プログラムのひとつ「本牧の夜2017」なのですね。

 【笠原】そうです。本牧が誇るべきカルチャーが「音楽」と「ダンス」。アメリカ文化を独自に吸収し、「ザ・ゴールデン・カップス」や「矢沢永吉」が登場し、ダンスステップ「ハマチャチャ」も確立された。70年代に青春を送った人々に、広く伝説と語り継がれているライブハウス「ゴールデンカップ」とディスコ「LINDY」も本牧です。その当時の雰囲気を若い人にも体感してもらいたいと、「本牧の夜」を開催してきました。今回は、70年代の日本ロック黎明期に伝説を築いた頭脳警察のボーカル&ギターとして知られる「PANTA」のライブ(12月1日)、そして、当時のディスコシーンをリードしたダンサー「藤中一郎」と音楽評論家でありLONDON NITEも主催する著名DJ「大貫憲章」によるディスコタイム(12月9日)を企画しています。


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<ライブハウス「ゴールデンカップ」店内 Photo by Tadashi Mori>

実は企画の段階では、彼らの存在を知らない人にも楽しんでもらうべく、現代風な趣向を凝らそうとしていました。でも、しばらくして、それは止めたんです。本牧が活気に満ちていた70年代の一線で活躍していたアーティストの生の表現を、そのまま見てもらったほうがよいだろう、と。その方が、ありのままを伝えられるし、また、若い人にもあたらしい感動として受け入れられるのではと感じ、極めてシンプルに、ストレートにライブやディスコを楽しめるようにしました。


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<藤中一郎氏:本牧のMOONEYES Area-1 Photo by Hideo Mori>

−ラスト2daysとなる12月9日(土)、12月10日(日)は、「子ども向けディスコイベント」から「映画上映」までプログラムが目白押しです。それぞれの特徴を教えてください。


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【岡崎】プログラムは、私たちの拠点でもある「HONMOKU AREA-2」で一挙に開催します。旧マイカル本牧の映画館の跡地で、大小8つのスペースがあります。スクリーンと客席が取り払われていますが、使い方次第でユニークな空間にも変貌します。そのなかで行うのが「内木里美 こどもディスコ Season3」、「ジャック&ベティ映画上映」、「石神夏希 トーク&アーカイブ」、そして「本牧AIR:間瀬拓人プレゼンツ・トーク&ライブ“空を見上げよう2017”」です。


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<HONMOKU AREA-2のホワイエ Photo by Hideo Mori>


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<HONMOKU AREA-2のシアター Photo by Hideo Mori>

こどもディスコは、コンテンポリーダンサーの内木里美さんと提携し2015年からスタートさせたもので、パーティー形式のダンス発表会です。キッズダンサー公募から練習を重ねた子どもたちがダンスを披露します。また、公募キッズダンサー以外のお子さんも大人の方も参加できる楽しい参加型のプログラムにもなっています。


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<こどもディスコの様子 Photo by Hideo Mori>

ジャック&ベティ映画上映は、本牧ゆかりの映画の上映会ですね。本牧のかたが本牧の文化に触れられるように。横浜にあるミニシアター「シネマ ジャック&ベティ」との提携のもと、『ザ・ゴールデン・カップス ワンモアタイム』や『イイネ! イイネ! イイネ!』などを上映します。


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<ザ・ゴールデン・カップス ワンモアタイム>

石神夏希 トーク&アーカイブは、第1回目から参加いただいている劇作家・石神夏希さんの観客参加型演劇作品『ギブ・ミー・チョコレート!』についての報告会。同作品は2015年の本牧アートプロジェクトでの初演ののち、2017年1月に再演。その後、メルボルン、マニラで作品が再創作されました。本牧からはじまり、国境を超え、国籍や人種・コミュニティが異なるなかで、どのように作品が変化していったのかを紹介してもらいます。また、海外での体験を経て見えてきた本牧の街についても語ってもらいます。


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<2015年『ギブ・ミー・チョコレート!』Photo by Hideo Mori>

そして、レジデンスプログラム「本牧AIR」としてひと月に渡る滞在制作を行っている間瀬拓人−−、こちらは、ご本人がいますので、直に説明していただくことにしましょう(笑)。


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−街をフィールドにしてアート活動をされているアーティストだとお聞きしました。今回はどのようなプログラムなのですか?

 【間瀬】『Sky Variations *cyrcle project』という参加型のアートプロジェクトで、京都での活動に続き今回が2回目となります。使用しているのは、普段、生活のなかにありふれた針金のハンガーを丸く形を変えたオブジェ。そのオブジェを参加者の皆さんに“フレーム”として活用してもらい「空」を切り取ってもらう。つまり、たくさんの人に好きな空をフレーム内に収め撮影してもらうわけです。場所は本牧エリアであればどこでも。また、私が撮影に同行する場合もあれば、お一人で撮っていただくのも自由です。


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そうして、それぞれの見た空を特設サイトにアップしてもらいつつ、
「本牧の空」を収集しています。集まった写真は、その一枚一枚の「フレーム外」の景観にフィルターをかけ、「フレーム内の空」をライトボックスにコラージュします。そして・・・、展示空間では、“一人ひとりの空”が銀河をつくるようにきらめく。また、フィルタリングしたフレーム外の景観も完全にブラックアウトしているわけではなく、目を凝らすと繊細に映像が見える。つまり、空一つひとつも、景観一つひとつも“本牧”でつながっている。当プロジェクトは「空を皆で描く」が主テーマですが、人が次々に写真を共有していくことも、重要な要素になっています。現在も、日々たくさんの人が写真をアップしてくれているんですよ。

また、最終日となる12月10日には、これまで本牧で行なってきた活動を語るとともにジョイントライブも行います。お招きしたのは、70年代初頭から活躍し、イタリア国際放映賞という賞も受賞している「マジカル・パワー・マコ」さんという音楽家です。本牧アートプロジェクトでの僕の締めくくりとしてまさに相応しい空間になるとと考えています。

−最後に、今回の「本牧アートプロジェクト2017」は、これまでの集大成だと伺っています。第1回からの取り組みを振り返り、感想やメッセージをお聞かせください。

【岡崎】要所要所で、貴重なご意見も頂戴しながら、さまざまな企画に取り組んできました。そうして今、私が感じるのが、「小さくても持続的なコト」がアートプロジェクトの本質ではないか、ということです。

今回の間瀬さんの『Sky Variations *cyrcle project』にしても、石神さんの『ギブ・ミー・チョコレート!』にしても、そのスタートは趣旨に賛同いただいたごく少数のかたからでした。そこから、口コミで徐々に参加者が増え、街の中に広まっていった。極めてミニマムなところから派生したプログラムなんです。一方、大きなイベントというのはそのときは大きな効果があるように見えるけども・・・、長期的に見ると効果は持続しにくい。それで、私たちもちょうど3回目のときに方向転換して、現在のプログラムに至りました。地域再生として効果が表れるのには時間がかかるかもしれませんが、一人ひとりの気持ちに残るプログラムをご用意しています。ぜひ、たくさんのかたに楽しんでいただければと思います。

【笠原】かつての本牧をそのまま現代へ、というわけではありませんが、当時の様子や雰囲気を発信していくことで、あらたなまちづくりに寄与できると考えています。街を見ればアクセスが不便など課題はありますが・・・、それ以前に、私はまず、皆が本牧という街に「誇り」を持てるようにしていくことが大切だと考えています。音楽もダンスももちろん、私が青春を過ごした本牧は本当に“かっこいい大人の街”でした。これからも、そのかっこよさを伝えていきたいですね。

【岡崎】本当に、そう。例えば、最初にお話したハマチャチャのダンサー藤中一郎さんって、佇まいだけでもとっても素敵(笑)。そして、そういうかたがたくさん活躍されていたのが本牧でもある。

【笠原】そうなんです(笑)。だからこそ、ですね。

【間瀬】レジデンスプログラム・アーティストとして招聘いただきましたが、私の『Sky Variations *cyrcle project』は、今後さらに拡張させていく予定です。空に切れ目がないように、本牧から関内へ、さらに横浜全域へと・・・。

また、京都を拠点にしていますが、街と街だって、空のようにつながっている。だから、課題があるならば本牧と京都の情報を共有し改善策を練っていくことも可能ではないかと思います。先ほど、岡崎さんのお話にあったように、単体で見れば小さいコトかもしれませんが、やがていずれは大きな地域再生につながる。今回のプロジェクトがより大きな活動につながっていくことを期待しています。 

「本牧アートプロジェクト2017」開催概要

日程:10月11日(水)〜12月10日(日)
会場:横浜・本牧エリア一帯 
*拠点スペース:HONMOKU ARES-2(旧マイカル本牧の映画館跡)

▼本牧AIR/間瀬拓人(11月11日〜12月10日)
▼本牧の夜2017 |【HONMOKU NITE 藤中一郎×大貫憲章】(12月9日)
▼石神夏希「本牧からアジアへ。ギブ・ミー・チョコレート!報告会」(12月10日)
▼提携企画:ジャック&ベティ「本牧映画特集」(12月9日・10日)
▼提携企画:内木里美『こどもディスコ Season 3』(12月9日)
アクセス:
市営バス「和田山口」下車 徒歩1分
●横浜駅東口ターミナルより…2番乗り場 8、58系統 または 3番乗り場 105系統
●桜木町駅ターミナルより…2番乗り場 8、58系統
●JR石川町駅より…バス停留所「元町」乗り場 99、101、105、106系統
●JR根岸駅より…1番乗り場 58、99、101系統
●みなとみらい線 元町・中華街駅より…バス停留所「山下町」乗り場 8、58、148系統

バスの所要時間:
●「横浜駅東口」から「和田山口」まで約35分
●「元町」「山下町」から「和田山口」まで約15分
●JR「根岸駅」から「和田山口」まで約14分
(所要時間はあくまでも目安です。道路の混雑状況によって異なります。)

*市営バス 大人220円 小児110円/一日乗車券:大人600円 小児300円

関連するURL
http://honmoku-art.jp/2017/

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