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第65回横浜文化賞 文化・芸術奨励賞を受賞! 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 常任指揮者・川瀬賢太郞が語る神奈川フィルの魅力とこれから

神奈川フィルハーモニー管弦楽団(以下、神奈川フィル)の常任指揮者である川瀬賢太郎さんが、芸術、学術、教育、社会福祉、医療、産業、スポーツ振興など、横浜市の文化発展に尽力し、功績が顕著な方々に贈られる第65回横浜文化賞の文化・芸術奨励賞を受賞。去る11月17日、横浜みなとみらいホール 小ホールにて贈呈式が行われました。
川瀬さんは、2014年に神奈川フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者に就任。今年、就任3年目を迎え、今後も横浜の文化芸術の振興を牽引する幅広い活躍が期待される川瀬さんに、受賞の喜びと神奈川フィルの今、川瀬さんが指揮を執る12月3日開催の「第九」演奏会、来年1月の定期演奏会について伺いました。

Interview&Text:阿部 美香
Photo:加藤 甫

――第65回横浜文化賞 文化・芸術奨励賞受賞、おめでとうございます!

川瀬:ありがとうございます。

――歴史ある横浜文化賞において、文化・芸術奨励賞は現在活躍中の若手の方で、今後の活躍がさらに期待されるみなさんに贈られる賞です。受賞の報を、どう受け取られましたか?

川瀬:僕はデビューして来年で10年になるんですが、去年から今年にかけて様々な賞を一気にいただく機会がありまして。そこにまた新たな賞を頂戴することができ、とても嬉しく思いました。とくに今回は、神奈川フィルのお膝元である横浜市からいただくもの。神奈川フィルでの活動を通じて、僕のことをより多くの方に知ってもらえたからこその賞なので、とても感謝しています。

――たしかに川瀬さんは、昨年から渡邉暁雄音楽基金音楽賞、神奈川文化賞未来賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞指揮部門、出光音楽賞など錚々たる賞を多数、手にしていらっしゃいますね。

川瀬:はい。ただ……みなさんがご覧になる指揮者はステージの上で自信満々にオーケストラを率いているイメージがあるかと思いますが、演奏会はやってみないとどうなるかは分からないもの。失敗するかも知れないというプレッシャーもありますし、だからといって挑戦は辞めたくない。いつも「これでいいのかな?」という不安がつきものなんです。でも、こうして賞をいただけるというのは、自分の音楽に対してみなさんが興味を持ってくださったり、面白いと認めてくださった証だと思うんです。それは、僕の大きな自信に繋がりますね。

――実際に川瀬さんの演奏会に来た方々の期待も、込められた賞ですから。

川瀬:だからこそ、僕だけがいただいた賞ではないと思っています。今回、贈呈式のスピーチでも話させていただいたんですが、いくら指揮者が偉そうに見えても、僕一人では一音も出すことができない。演奏してくださるオーケストラという存在がなければ成り立たないんです。とくに神奈川県、横浜市からいただく賞は神奈川フィルのみなさんと一緒だから獲れたもの。演奏家の方々、スタッフ、そして演奏を観に来てくださるお客様にも、あらためて感謝をお伝えしたいですね。



――贈呈式の後には、記念の大江馨ヴァイオリンコンサートも開かれました。式のほうはいかがでしたか?

川瀬:横浜文化賞は音楽だけでなく、様々な分野の方が受賞されていて、スピーチを伺うだけでも知見が深まりました。そして記念コンサートに出演した大江馨くんとは、彼が日本音楽コンクールで優勝した演奏会で僕が指揮をして以来、3年ぶりくらいにお会いしました。それも嬉しかったですね。

――そして川瀬さんは、2014年、神奈川フィルに国内オーケストラ最年少の常任指揮者として就任され、今年で3年目を迎えられたそうですね。振り返って今、どう感じていらっしゃいますか?

川瀬:あっという間でした。そして1年目から、神奈川フィルの300回記念の定期演奏会を振らせてもらい、CDも出すようになり、NHKにも取り上げていただき……と、様々な経験を積ませてもらった濃厚な3年間になったと思います。と同時に、人生初の経験を神奈川フィルとさせてもらうことで、常任指揮者として何をすればいいか?という難しさもあり。その答えは、今も探し続けている最中ですね。

――その難しさ、責任感には、どう向き合っていらっしゃるのですか?

川瀬:自分を取り繕わないことですね。僕はいろいろぶっちゃけてしまう性格なので(笑)、オーケストラメンバーに対しても、ひとりの人間として感情に素直に、人間らしく接することを心掛けていますね。

――そのストレートなお人柄が、音楽性にも表れるのだろうなと思います。

川瀬:僕もそうあって欲しいと思います。人同士が音楽を共有し、一緒に演奏して作り上げるというのは、とても難しいんです。リハーサルをしているととくに感じますが、そもそも音楽は言葉で理解するのではなく、身体で感じるもの。「こう演奏したい」と僕がオーケストラに言葉で言えば言うほど、本質から離れていくようで虚しくなるんです。例えば……ドラマや映画でカップルが恋人に、「私のことどれくらい好き?」と聞くシーンがあるじゃないですか?(笑)

――はい。日常生活でもありますね、そういう場面は(笑)。

川瀬:でもそこで「好き」と言葉に出した時点で、本当の気持ちや感情は表現できてないんじゃないかと思うんです。それは音楽も同じで。指揮者として“感じる”ことを表現する難しさ、それをどうオーケストラに伝えるかの難しさは、常に実感しています。ただ、こうしてがっつりと神奈川フィルと付き合うことができると、音楽的にもいろいろなことを試せるし、自分も成長できる。常任指揮者というポジションでオーケストラに接することができて、本当に良かったと思います。



――川瀬さんは神奈川フィルだけでなく、名古屋フィルハーモニー交響楽団など今も多くのオーケストラと共演されていますが、神奈川フィルの魅力をどこに感じていますか?

川瀬:すごく和気あいあいとしていて、自分たちでオーケストラをより良くしようと、フレキシブルに考えて闘っている方が多いところですね。その姿勢が音楽にも表れていて、良いものはとことん追求するし、疑問点は一緒にディスカッションできる。10月に2017年4月から2020年3月まで3年間の契約延長を発表させてもらいましたが、次の3年間ではどう変わっていくかも楽しみですね。

――音楽面での魅力についてはいかがでしょうか。

川瀬:ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなど、古典の演奏は以前からとにかく上手い。技術的にはもちろん、古典作品の語法をしっかりと表現してくださる。ただ音符を追うのではなく、音で語る魅力にあふれている。とくに、僕と同時期に第1コンサートマスターに就任した﨑谷 直人くんは僕よりも若いのですが、僕にないアイディアもたくさん持っているし、室内楽の経験がとても豊富。そういう力が入ることで、句読点のある音楽が表現できますし。自然な抑揚とハーモニーを奏でる表現力の豊かさが増しているように感じます。それに加えて、最近はダイナミックさも増している。神奈川フィルは、もっともっと音楽的に伸びていくだろうと思います。

――この約3年間、そんな神奈川フィルと様々な演目にチャレンジしていらっしゃいますが、川瀬さんがご自身が指揮するプログラムを考える上で、心掛けていらっしゃることは何ですか?

川瀬:指揮者としてというより、いち音楽ファンとして聴きたいプログラムですね。心掛けているのは、料理でいうと「食べ合わせ」。定番の美味しいコース料理の合間にアクセントを挟み込むことで、それぞれの美味しさが一層際立つ。演奏会でも、アクセントとなる曲を置くと、定番の有名曲もふだんとは違うふうに聴こえて面白さが増す。ひとつのパッケージとしての狙いを考えながら、お客様に新しい楽しみをお届けしたいと思って、選曲しています。

――そのアイディアはどこから湧いてくるのでしょう?

川瀬:最近僕は、遠藤周作さんがキリスト教をテーマに書かれた小説『沈黙』を読んでいるんですが、そこでふと思ったのが……例えば、日本には踏み絵を題材にした曲がいくつかあるので、それとメンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」を組み合わせたら、同じキリスト教がテーマの曲も音楽としての違いが感じられて面白いんじゃないかな?……とか。そういうことは、いつも考えていますね。

――いつかそのテーマが実現するときが、来るかも知れないですね。そして近々では、12月3日、神奈川県民ホールにて川瀬さん指揮の定期演奏会が開催されます。演目は、年末恒例となるベートーヴェンの「交響曲第9番ニ短調Op.125『合唱付き』」です。

川瀬:「第九」は、これを聴かねば年を越せないというお客様がいらっしゃるほど、ポピュラーな作品となりました。第4楽章で歌われるシラーの詩「歓喜の歌」は、人類皆兄弟がひとつのテーマですが、現実には実現しないものだからこそ、永遠の願いが込められている。だからこそ、ものすごいエネルギーを持っている作品なので、ぜひこの曲から大きなパワーを受け取って、これからの生き方や人との触れ合い方を考える、いい機会にしてもらえたらと思うんです。



――大変不躾な質問なのですが、毎年毎年「第九」を演奏していて、飽きることはないのでしょうか?

川瀬:それが……ないんですよ!(笑) 「第九」を年末に振ることは、自分の1年間の集大成でもあるんです。なので、毎年、楽譜から読み取るものは違いますし、1年間で自分が考えてきたことや成長を知ることができる物差しにもなっているんです。毎年新しい発見がある曲なので、まったく飽きることがないですね。

――そんな今年1年の集大成を終えると、来年1月21日には、2017年の幕開けとなる横浜みなとみらいホールでの定期演奏会が待っています。そちらも楽しみですね。

川瀬:僕は通常、年間に3回、みなとみらいホールでの定期を振らせてもらっているんですが、3回のうち1回は必ず、「ちょっと珍しいけど、この料理はすごく美味しいですよ!」という、ちょっと変わり種のオススメを提案しているんです。1月の定期がまさにそれで。ラフマニノフの交響曲は第2番がいちばん有名ですが、今回はあまり演奏されない曲ですが、僕がいちばん充実した作品だと思っている第3番を聴いてもらいたかったんです。さらに、僕のヨーロッパデビューのときに共演した仲間であるフルート奏者の上野星矢くんを神奈川のお客様にご紹介したくて、ハチャトゥリアン(ランパル編曲)の「ヴァイオリン(フルート)協奏曲ニ短調」をプログラムに入れました。「ヴァイオリン協奏曲ニ短調」は、うちのソロ・コンサートマスター・石田 泰尚さんの十八番でもあるんですが、今回はあえてフルートで聴いていただきます。そして1曲目には、J.S.バッハ(エルガー編曲)の「幻想曲とフーガハ短調Op.86」を。こちらもとても格好いい曲なので、ひとりでも多くの方に聴いていただきたいですね。

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