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ヨコハマ・パラトリエンナーレ 2017 ディレクターに聞く パラトリエンナーレの魅力とみどころ

ヨコハマ・パラトリエンナーレ 2017 ディレクターに聞く パラトリエンナーレの魅力とみどころ

東京2020オリンピック・パラリンピックに向け、世界から注目が集まる今。
横浜・象の鼻パークではこの秋「不思議の森の大夜会」が開かれます。
この夜会は、障害がある人と多様な分野のプロフェッショナルが協働して新しい表現を作り出すアートプロジェクト「ヨコハマ・パラトリエンナーレ 2017」のイベント。アートやステージ、そしてフードが渾然一体となってこれまでにない体験ができる3日間です。
現在準備を進めているディレクターの栗栖良依(くりすよしえ)さんにお話を伺いました。
(スライダー画像は第一回ヨコハマ・パラトリエンナーレの様子)

Interview&Text&Portrait Photo:牛山 惠子


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ディレクターの栗栖良依(くりすよしえ)さん


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障害がある人と一緒に表現をするために大切なこと

ーヨコハマ・パラトリエンナーレは第2回、栗栖さんにとっても2回目のパラトリエンナーレですね。

はい、2014年に開催された第1回からディレクターを担当し、今回が2回目になります。
パラトリエンナーレは発展進行型のプロジェクトなので、今回の閉幕後もリサーチやプロジェクトが続いていき、次回第3回は2020年、東京オリンピック・パラリンピックの年に開催が予定されています。

ー栗栖さんはどのようなきっかけでディレクターに就任されたのですか。

もともとわたしは、さまざまな専門分野を持つ人の異分野の才能同士をつないだり、専門分野と地域をつないで新しい価値をつくる仕事をやって来ました。
2011年に病気をしまして、わたし自身が右足に障害をもち、仕事も生活もすべてがまっさらな状態になってしまった、そんな中で「栗栖にやってもらいたいことがある」と声をかけていただいたのが、障害がある人とアーティストをつなぐ仕事だったのです。
仕事を通して出会う多様な人たちと関わり、一人ひとりの違った魅力を知ることで、私自身の価値観は大きく変わっていきました。障害のあるなしではなく、違う特徴をもつ人同士としてお互いを理解し合い、「違い」をかけあわせて、新しいものを生み出していける社会を作り出して生きたいと今は強く思っています。

ー第1回のパラトリエンナーレではどんな経験をなさいましたか?


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(第一回ヨコハマ・パラトリエンナーレ)

振り返ってみると、初回のパラトリエンナーレは「壁やバリアを見つけていく回」だったなと思います。
障害のある人にとって、不特定多数の人が集まる中で芸術活動に参加することがいかに大変かを思い知りました。

ー壁やバリア、それはどんなことだったのでしょう。

ひとことでいうと「アクセシビリティ」。参加することそのものの困難さです。
まず、ワークショップの開催やその内容を、障害がある人に伝えることが難しかった。フライヤーや、メールやSNSでは情報が届かないのです。障害福祉事業所に直接持って伺ったりと工夫して、情報を届けて、いざ参加したいとなっても、今度は会場に足を運ぶ交通手段、段差などの物理的なバリアがあります。それに加えて、障害がない人と混ざることへの不安、できないのではないかという躊躇などの、心理的なバリア。
世界に通用する高い表現を発表する、と理想を持って立ち上げたのに、障害がある人にとっては参加すること自体が難しく、これを解決しなければ先には進めない、ということを実感しました。

「アクセスコーディネーター」と「アカンパニスト」

それを解決するため、第1回が終わってからの2年間、バリアを取り除くあらゆる取り組みをしてきました。その中で重要だったのが「アクセスコーディネーター」と「アカンパニスト」という人材をつくり育てたことです。

「アクセスコーディネーター」というのは、障害がある人の持つありとあらゆる不安に耳を傾け、舞台に立つまでのバリアをとりのぞく人材です。最初のアクセスコーディネーターは、看護師の資格をもっていて、障害に対する知識と、舞台芸術に関する知識、両方をもっている人でした。
「アカンパニスト」は障害がある人と一緒に舞台に上がり、パフォーマンスのサポートをするダンサーやパフォーマー、いわば伴奏者です。創作する中で起こる物理的・心理的な困難に、創作者という同じ立場で寄り添いながら乗り越える方法を一緒に探ります。

彼らと一緒に、どうやったら障害がある人が安心してクリエイションに向き合えるのかをリサーチし、実践をくりかえして今日までやってきました。

ー2016年のリオ・パラリンピックで、栗栖さんはフラッグハンドオーバーセレモニー(引き継ぎ式)のステージアドバイザーを務められたと伺ったのですが、「アクセスコーディネーター」と「アカンパニスト」のみなさんもリオで活躍なさったのですか?

はい、そうなんです。引き継ぎ式での障害がある人たちのパフォーマンスをみなさん覚えていらっしゃるでしょうか。あの8分間の舞台のために、アクセスコーディネーターが同行し、アカンパニストは一緒に舞台に上がり、彼らのパフォーマンスを支えました。その経験をもつチームが、今回も一緒にパラトリエンナーレの活動を担ってくれています。

ー創作のための環境を作り試行錯誤する、その期間も含めて「パラトリエンナーレ」なのですね。

はい、その通りです。パラトリエンナーレは3つの期間に分かれていて、最初の「創作」の期間は今年の5月にスタートし、2期目の「発表」は10月7〜9日「大夜会」。発表の日に向けて今、複数のチームが制作や準備を進めています。

たとえば、あの白い網は《whitescaper》という作品で、当日会場で使われるものですが、


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特殊な糸を手で編んで作るアート作品で、子供から大人まで多様な人が制作に参加しています。


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7月、8月にはシンガポール、カンボジア、インドネシアでも制作ワークショップを行ってきました。

このほかにも、アーティストや専門家、障害のある人とない人が出会い、いくつものワークショップ、制作を重ねています。参加した人たちの体験一つ一つが、パラトリエンナーレの成果なんだと思うのです。

「不思議な森の大夜会」

ー来月に迫っている「不思議な森の大夜会」は、どんな企画なのでしょうか。

10月7日~9日の3日間、アーティストと市民10,000人で作り上げた「不思議な森」が、象の鼻テラス、象の鼻パークに現れ、パフォーマンス・アート・フードが集まる「大夜会」が開かれます。
全ての要素に、障害がある人と、様々な分野のプロフェショナルがコラボレーションして実現する、特別な3日間です。


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(会場イメージ図)

会場はいくつかのステージに分かれています。

パフォーマンス・ステージの中心にはお皿の形をしたステージがあります。国内外様々な場所で作られた、障害のある人とアーティストによる迫力あるパフォーマンスが集結します。
たとえば、コンテンポラリー・ダンサー大歳芽里さんがカンボジアの障害のあるアーティストと共同制作を行ったダンスパフォーマンス、盲学校に通う高校生ダンサーによるストリートダンス、障害のあるダンサーによるエアリアル(空中パフォーマンス)など、さまざまな味わいのパフォーマンスが、ディナーのフルコースのように次々に登場します。
2015年、16年の2年間、ワークショップや作品発表を繰り返し、プロジェクトの趣旨に共感したアーティストやパフォーマー達と地道に努力を重ねて「このレベルなら」と思える作品がやっと作れるようになった、と手応えを感じています。
ぜひ多くの方に見ていただきたいです。

アート・ステージでは、障害がある人の五感・感覚をキーに、多様な分野のプロフェッショナルが現代アート作品を作り出します。
見えない世界を表現する服、盲目の箏曲家との対話を通して生まれるジュエリーなど、感覚と技術の出会いがどんな作品を生み出すのか、わたしも楽しみに待っているところです。

フード・ステージはフードデザイナーチーム・山モコ山と、横浜市内の福祉施設がコラボするフード屋台がオープンして、食事を楽しむことができます。ピザ屋では、ミュージシャン青木拓磨さんによるパフォーマンスもくりひろげられます。

ーみどころがいっぱいのパラトリエンナーレ、満喫するにはどんなふうに参加するとよいでしょうか。

会場への入場は無料で、ステージで行われるパフォーマンスも無料で見ていただくことができます。当日飛び込みで参加できるワークショップなども用意していますので、ふらっと立ち寄っていただいても楽しんでいただけると思います。

でも、満喫ということしたら、おすすめなのは、「フルコース」というツアーです。
みなとみらいから案内つきの船に乗るところから森への旅が始まります。ウサギの案内でアートステージを鑑賞した後、お皿の形のメインステージに設けられた特別席でショーを体験します。実は「フルコース」には特別なしかけがあって、それは参加する人だけが体験できるんです。
10/8(日)と 10/9(月・祝)の二日間、各日15:30~、18:00~の全4回。障害があるかたももちろん参加いただけます。定員がありますのでご予約の上ご参加ください。

—最後にみなさんにメッセージを


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ヨコハマ・パラトリエンナーレは、一過性のイベントでなく、新しい価値観の世界を作り出していく、ムーブメントだと思っています。

人と比べたり、差別したり、自分だけがよければいい、と自分と他者を切り離す世界ではなく、他の人の生きづらさを感じ、理解し合おうとする世界を作り出したい。
そんな願いを込めて「『sense of oneness』とけあうところ」というテーマを掲げました。

私は「体験」ということに大きな魅力を感じています。体験はその人の中に残り、その人を変えていきます。だからみなさんもなんらかの形でパラトリエンナーレに巻き込まれてほしいなと思っています。

足を運んでいただくことで、なにか自分の中の「あたりまえ」がひっくり返るような気づきがあるのではないかと思います。
障害福祉、というテーマに興味がある人もない人もぜひ見に来てください。
そして何かを感じたら、ぜひ次のアクションにつなげてほしい。
「不思議の森」でお会い出来るのをたのしみにしています。

■『不思議な森の大夜会』 開催概要
日時:
10月7日(土) 18:00~21:00(公開リハーサル)
10月8日(日)・9日(月・祝) 16:00~21:00
会場: 象の鼻テラス、象の鼻パーク
料金: 入場無料

■ツアー型パフォーマンス:『不思議な森の大夜会』フルコース
日時:10月8日(日)9日(月・祝) 15:30~17:30、18:00~20:00
料金:¥3,500(介助者1名込みペアチケット¥5,000)10月9日は車椅子対応の船。予約制。
詳しくはホームページへ。
http://www.paratriennale.net/

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http://www.paratriennale.net/

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