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キネマ散歩 第1回横浜市若葉町「シネマ・ジャック&ベティ」
映像
2021.04.14

キネマ散歩 第1回横浜市若葉町「シネマ・ジャック&ベティ」

シネマ・ジャック&ベティ 

映画館に行くのが好きだ。

配信サービスが充実した今の世の中、家でも十分に映画を楽しめる環境が整っている。
だけど、映画館で映画を見る経験は、やはり何にも替えられない良さがある。
大きなスクリーンと音響。日常から切り離されて、グッ!と映画の世界に引き込まれる瞬間。
思いっきり泣いたり笑ったりして、「明日も頑張ろう」と思わせてくれる、
あの数時間の現実逃避が、大好きだ。

多くの人にとって、映画館は「見たい映画」を見にいく場所かもしれないが、
「行きたい映画館」を目的に、映画を見にいく楽しさも、是非知って欲しい。
当コラムでは、そんな楽しみ方にぴったりな、神奈川県内のお勧めなミニシアターを紹介していく。

記念すべき第一回に紹介するのは、京浜急行線黄金町から徒歩5分の場所にある「シネマ・ジャック&べティ」。

赤い電車に揺られて、たどり着いたは黄金町。そのきらびやかな名前とは裏腹に、黒澤映画「天国と地獄」の舞台としても、かつては光の差さない町としてのイメージが強かった。今では昭和の面影の中に、お洒落なショップやアートが散りばめられた、散策のしがいがある一角となっている。そんなカルチャーの入り混じった町の中で、一際色濃く昭和の香りを放っているのが「シネマ・ジャック&ベティ」。かつては映画街として栄えていた時代からの、置き土産だ。

レトロな外観は決して見かけ倒しではなく、このミニシアターが歩んできた歴史を確かに物語っている。1952年のクリスマス、米軍飛行場として利用されていた跡地に「横浜名画座」としてオープン。その後1991年に名前を「シネマ・ジャック&べティ」に変え、リニューアルするが、2005年に閉館となり、多くの映画ファンを悲しませた。同年に別の会社が再開させたものの、厳しい状況が続いたため、2007年に現在の運営体制へと引き継がれた。「町の財産である映画館を残そう」という現支配人の強い意志と、数多くのファンからの応援により、少しずつ賑わいを取り戻していき、今でも町の映画館として愛されている。

まるでタイムスリップをしたかのような、雰囲気のある建物。新参者はお呼びでないかも…と一瞬すくんでしまったが、店頭のフライヤーとポスターに好奇心を掻き立てられ、吸い寄せられるように階段を登っていく。登った先ではアットホームな雰囲気の、哀愁を感じるロビーが迎え入れてくれて、ホッと一息をついた。フライヤーが満載に積まれたコーナーや、上映情報が記されたホワイトボード。待っている時間も含めて、この空間全体が「映画」というエンターテイメントを、全力で楽しませてくれている。

こちらのシアターでは持ち込みが自由だが、売店にも美味しそうな誘惑の数々が並べられている。中でも注目なのは、黄金町で人気のある「カメヤ」のパン!映画鑑賞中に地元のお勧めグルメが食べられるのはなんとも贅沢だ。近所の映画館でなく、わざわざ足を運んだかいがあったな、と思わせてくれる。

ここで、ミニシアターの名前にもなっている「ジャック」と「ベティ」を紹介しよう。ロビーから右手に見えるのが「ジャック」で、左手にいるのが「ベティ」。そう、「ジャック&ベティ」とはなんと、2つのスクリーンの名前である。青でシックに決めた名画座「ジャック」と、赤色にドレスアップしているミニシアター系の「ベティ」。シアターによってここまで雰囲気が変わる映画館もなかなか珍しい!当初はシアターごとに男性向け・女性向け作品を分けていたようだが、現在では単発系の新作ロードショーを中心に、ジャンルを問わない良質な邦画・洋画が放映されている。

「映画をゆっくりと味わうミニシアター」と謳っている通り、ここでは1日かけてじっくりと映画に向き合うことができる。こだわって選ばれたセレクションは「横浜ではジャック&ベティでしか観られない」ものも含まれており、今注目の若手監督のデビュー作から、90年代アメリカのラブストーリーまで、様々な国が舞台の、異なる時代の作品が放映されている。1日に上映されている作品数は、2スクリーンのミニシアターのものとは思えないほど。「できるだけ多くの良作を紹介したい」という当館の思いが伝わってくる。

他にも監督・俳優による特集上映や、テーマに沿った映画祭、トークショーやライブなどのイベントも積極的に行っており、月一回開催されているサロンでは、上映作品の感想や、気になっている作品についてなど、映画についての意見を交換できる場が設けられている。ただ映画を「鑑賞」するだけでなく、新たな作品の「発掘」や映画ファンとの「交流」をも楽しめる空間を担っている。

今まで知ることのなかった、隠れた名作に出会うには絶好のシアターである。まさに映画を決めてから映画館に赴くのではなく、映画館を決めてから気になる映画をみるのに、うってつけの場所だ。

多くの映画ファンや常連に愛されているこちらのシアター。筆者が前述したとおり、初来訪時には少し入りづらさを感じる方も、中にはいるかもしれない。そこで最後に、今年の12月21日に30周年を迎える、シアターのロゴを紹介しよう。キャッチフレーズは「大人の階段を登れ」。
少し勇気を出して、是非「シネマ・ジャック&ベティ」の階段を登って欲しい。登った先にはここでしか出会えない、「人生の一本」となり得る作品の数々が、あなたを待ち構えているだろう。

  • 地域
    横浜ベイエリア(中区・西区)

横浜最後の名画座「ジャック」と唯一の独立系ミニシアター「ベティ」、ふたつのスクリーンを持つ、独立系映画館「シネマ・ジャック&ベティ」は、1991年12月に開館しました。GHQの接収解除直後の1952年(昭和27年)12月25日に開館した「横浜名画座」がその前身です。シネマ・ジャック&ベティはその後2回、閉館の危機に遭いましたが、2007年、当時まだ20代だった現在の梶原支配人と小林副支配人が脱サラをしてその歴史を引き継ぎました

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