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美術・写真

第59回神奈川県美術展

第59回神奈川県美術展

1965年に創設された「神奈川県美術展」は、県内最大規模の公募美術展です。美術の多様な分野で活躍する愛好家たちが互いに刺激を与え合い、新たな才能を育てる場として開催されており、作品発表の機会を提供することを目的としています。

今年も全国から1,272点の力作が寄せられ、厳正な審査を経て、平面立体、工芸、書、写真の4部門それぞれで大賞が決定しました。今回は、その4名の大賞受賞者にお話を伺いました。

平面立体部門 Rin(霖)さん
「雷が落ちる狭間」

-大賞受賞おめでとうございます。今のお気持ちをお聞かせください。

私の作品を選んでくれた審査員の先生たちに本当に感謝します。 実は当日神奈川県美術展からの電話を逃しました。 私が大賞を受賞したことをメールで見ました。 泣いていました。
受賞し、複雑な気持ちになりました。神奈川県美術展が貴重な機会を与えてくださって本当にありがとうございました。 日本に留学した経験を思い出して、失敗した時に自分の夢を堅持することを選んでよかったです。 その後、両親に受賞のことを話し、賞金は美術大学の授業料になることを伝え、今まで助けてくださった小尾修先生にこのよい結果を伝えました。
神奈川県美術展と私の作品を選んでくださった審査員の先生たちに本当に感謝します。

-アーティストへの道を選んだきっかけを教えてください。

今の私は美術大学の留学生です。 最初は単純に絵が好きだったからです。高校で外国語学校に通っていました。その時に日本画を知り始めました。静かですが、人間の美しい感情が込められていて、内向的な性格の私は日本留学に憧れを持っていました。
日本に来てから、受験勉強がうまくいかず、ずっと志望校の合格がなかった。 私は内向的な性格なので、人前で自分の長所を表現するのが難しく、途中であきらめてしまうことを考えたことがあります。 美術をやめたいと考えた理由は失敗の苦い経験からです。絵を描きたくなくなったわけではありません。あの時の私は不合格から逃げたかったのです。
私はまだ絵を描くのが好きだと知っているので、いくつかの学校の試験に申し込んで、一つ合格すれば絵を描き続けることができます。 美術大学に入ってからの創作も、不合格の影からゆっくりと出てきました。 私は仮面浪人をして、1年後に新しい美術大学に入り、さらに2年後、ついに志望校に編入しました。 未来には、自分が本当に芸術家になる可能性があることを願っています。

-今回応募しようと思ったきっかけは何でしたか?

私の前の美術大学は神奈川県にありました。学校のポスターで神奈川県美術展を知っていました。
規模が大きく、歴史が長く、私の憧れの公募展です。 私は去年も参加して、入選したことがあります。新しい美術大学に入ってから、技法の材料を研究するのが好きです。今年の作品は去年とは全く違います。
 水沢勉先生に特に興味があります。 以前美術雑誌で先生の文章を拝見したことがある以外、先生の名前が日本の霊能に関する文章にあることを初めて知りました。 私自身は子供の頃からアジアの伝統的な神秘学に対して深い感情を持っていましたが、審査員に水沢勉先生の名前があるのを見て、とても気になりました。

-作品のコンセプトや制作中に込めた想いをお聞かせください。

私の作品は今、基本的に自分の幻想についてです。 幻想の中にアジアの民俗や伝統文化を入れて、自分の考えで、現代社会に合った新しい価値観を表現したいです。 絵画の材料はテンペラを主としています。
雷が落ちると超自然現象を伴って発生しやすく、画面には荒城を離れたくない霊体が、破壊された土地を待っています。私がこの作品を描いた時、考えたのはアジア人のロマンチックな死生観で、幽霊も彼ら自身の感情を持っています。
私が日本に来たばかりの時、墓地のそばに住宅が囲まれているのを見ました。日本人はこのような形で、亡くなった年長者が生きている人を祝福できると信じています。 亡くなった人は依然として生きている人と、ある種の固いつながりを持っているようで、生と死の境界感がだんだん曖昧になってきたような気がします。

-一番こだわった点、また苦労した点等を教えてください。

ファンタジー作品の場合、自分の心からの感覚は重要だと思います。
辛いと感じる時はおそらく時間が足りない時です。 学校の毎回の自由課題には時間の制限があり、時間が終わると絵が完成しにくいからです。 今の私はまだ学校のルールの中でもがき続けています。

-今後の活動、将来の目標をお聞かせください。

芸術家になることが私の目標です。来年は初個展を開催するつもりです。 今から絵を描き続けます。
未来については、技法材料を研究し続けます。 アジアの伝統的な民俗文化に関する幻想的な作品を作り続けます。 第59回神奈川県美術展に貴重な機会をいただき本当にありがとうございました。

ー来年度の応募を目指す皆さんに是非、ひとことメッセージをお願いします。

神奈川県美術展という形で、見知らぬ人同士がつながり、未来についての可能性が生まれると信じています。

《プロフィール》

Rin(霖)

【略歴】
中国重慶市生まれ
高中卒業後日本に留学
2020年 神戸芸術工科大学入学
2021年 女子美術大学入学
2023年 武蔵野美術大学2年編入
【展示】
2022年 第18回きりしま美術大賞展 霧島氏文化協会賞受賞/国分シビックセンター
2022年 一般部門の特別賞巡回展/旧田中家別邸
2022年 第33回美浜美術展 入選/福井県美浜町生涯学習センターなびあす
2023年 国立市3ギャラリー合同企画「つなぐ展」/アートスペース88
2023年 第58回神奈川県美術展 入選/神奈川県民ホールギャラリー
2023年 Over REV.アジア留学生作家交流展/The Artcomplex Center of Tokyo ACT
2023年 武藏野美術大学油絵学科2年進級制作 樺山祐和賞受賞/校内
2024年 MUSABIオープンキャンパス学生選抜展/校内

工芸 鷲野 愛未さん
「瞬刻」

-大賞受賞おめでとうございます。今のお気持ちをお聞かせください。
 
とても嬉しいです。自分の作品を評価してもらえることは、作家として嬉しいですし、これからの作品制作でも自信が持てます。

-アーティストへの道を選んだきっかけを教えてください。
 
応援してくれる家族の支えのおかげだと思っています。
 
-今回応募しようと思ったきっかけは何でしたか?
 
10年ほど前の大学生の頃に公募のページを見たのがきっかけでした。神奈川県出身ということもあり、ずっと応募してみたいと思っていました。自分にとっても大作が完成したこともあり、今回応募してみようと考えました。
 
-作品のコンセプトや制作中に込めた想いをお聞かせください。
 
この作品は、狩猟の瞬刻のイメージから「瞬刻」とつけました。獲物に鋭い眼差しを向けるフクロウの飛翔を表現した寄木彫刻作品です。

-一番こだわった点、また苦労した点等を教えてください。
 
こだわりは、羽根の寄木部分の表現です。1mm以下の木材を重ねていきフクロウの羽根の模様を寄木の技法を用いて表現しました。苦労した点は、胴体部分の軽さを出すために内側をくり抜いているところです。見えない部分でも、フクロウの軽さを表現しようと工夫しました。
 
-今後の活動、将来の目標をお聞かせください。
 
今後の活動については、自分が作りたいと思った作品を今までも制作してきました。なので、色々なものを見て感じて今後の制作に活かしていきたいと思っています。将来の目標については、神奈川県出身のアーティストとして、国内外で活躍していきたいと思っています。
 
-来年度の応募を目指す皆さんに是非、ひとことメッセージをお願いします。
 
神奈川県美術展も全国公募になり、年齢にも制限がなく、作品のサイズも昔より大きなものが作れるようになっているので、自分の好きなものを好きなだけ作って人に見てもらえる公募展だと思います。ぜひ作品を応募してみてください。

《プロフィール》

鷲野愛未


HP : https://manamiwashino.com
キャンプファイヤー : https://community.camp-fire.jp/projects/view/655527
X : https://x.com/manamiwashino
Instagram  : https://www.instagram.com/manamiwashino/

【略歴】
1992年 11月 神奈川県横浜市出身
2012年 4月 東京藝術大学デザイン科 入学
2018年 3月 東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻空間・設計研究室 修了
2018年 4月 千葉大学工学部 総合工学科 デザインコース 非常勤講師
現在    東京藝術大学デザイン科 教育研究助手
【受賞歴】
2016年 第64回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 東京藝術大学平成藝術賞
2016年 MITSUKOSHI×東京藝術大学デザインコンペティション アート&クリエーションデザインアワード オーディエンス賞
2017年 石川県加賀市 中谷宇吉郎・雪の科学館「雪のデザイン賞」佳作
2018年 第66回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 台東区長奨励賞
【主な展示歴】
2016年 1月 第64回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 東京都美術館
2016年 6月 平成記念美術館ギャラリー「東京藝術大学平成藝術賞 受賞作家展 未来の大芸術家たち」
2016年 7月 青山スパイラル「くらす 空間デザインの実験」
2016年 8月 日本橋三越日本橋三越新館1階エスカレーター前 特設会場「MITSUKOSHI×東京藝術大学デザインコンペティション アート&クリエーションデザインアワード」
2018年 1月 第66回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 東京藝術大学美術館 3階
2018年 2月 西武渋谷店 B館8階 美術画廊 「東京藝術大学130周年記念 ARTS AFFAIR OF GEIDAI」
2018年 4月 青山スパイラル 3階 SICF19
2018年 5月 新宿伊勢丹5階アートギャラリー
2018年 6月 新宿伊勢丹5階アートギャラリー
2018年 8月 日本橋三越本店 本館6階 美術フロア MITSUKOSHI×東京藝術大学 夏の芸術祭2018
2018年 8月 日本橋三越本店 本館6階アートギャラリー 個展
2019年 2月 銀座三越7階ジャパンエディション 靖山画廊 常設スペース
2019年 5月 青山スパイラルSpiral Garden 素展(東京藝術大学&OBOG)
2019年 5月 渋谷ヒカリエ 8階 CUBE1,2,3/ギャラリー MONSTER Exhibition
2019年 8月 Paris Exhibition Galerie Grand E’Terna Paris
2019年10月 星野リゾートOMO東京大塚ベース OMOベースベース 個展
2021年10月 公益財団法人日本野鳥の会 西五反田事務所(財団事務局)「コ・トリの市」 個展
2023年 4月 神宮前 TIERS GALLERY
2023年 9月 New York City Blue Gallery
2023年11月 BAG -Brillia Art Gallery

書 片岡雪燁さん
「李賀詩」

-大賞受賞おめでとうございます。今のお気持ちをお聞かせください。

有り難うございます。賞を頂いた責任を感じています。その重さと同時に師、書友への感謝の気持ちが湧いてきています。

-アーティストへの道を選んだきっかけを教えてください。

「書」は、教養として身に着けたいと思って始めました。人生百年時代の折り返し地点かな?と思う年齢に達して、「書道」に専念するようになりました。
何か「打ち込んだ」と言えるもののある生涯にしたいと思ったのです。

-今回応募しようと思ったきっかけは何でしたか?

美術展の応募が全国対象となって、一度はその壁の高さに応募を断念しました。その後応募を勧める方がいらして、数年前から挑戦を再開しました。様々な書風を一堂に拝見できる貴重な書展と思います。

-作品のコンセプトや制作中に込めた想いをお聞かせください。

鮮黄色の染め紙に金色の龍と蝙蝠の紋は中国皇帝を彷彿とさせます。皇帝の住居であった故宮にある扁額の様に、潤いと強さのある文字を表していきたいと思いました。

-一番こだわった点、また苦労した点等を教えてください。

表装店さんには締切ギリギリまで待って貰いました。作品本文も書き込みに力を尽くしましたが、最も注意を払ったのは、作品を書き上げた後、最後に押す落款印の押印です。鮮黄色の紙に押す印の色合いに迷いました。印の大きさ、押す位置、印泥の付き具合。ここも作品の一部なのです。

-今後の活動、将来の目標をお聞かせください。
今までと変わりなく墨の香りに親しんで行きたいと思います。胸の内にある文字の姿を、筆を通して映し出し、品格を備えた作品に練り上げていきたいと思います。

-来年度の応募を目指す皆さんに是非、ひとことメッセージをお願いします。

神奈川県美術展の魅力は、審査員に評論家、学芸員などの書家以外の方がメンバーにいらっしゃることです。ご自身の「こんな風に書いてみたい」を作品になさって下さい。

《プロフィール》

片岡 雪燁

【略歴】
1960年 横浜市生まれ
毎日書道展 審査会員
東方書道院 同人
朝聞書会 評議員
東原書道会 理事
神奈川書家クラブ 会員
師 生駒蘭嵩

【受賞歴】
日展入選
毎日書道展会員賞

写真 于阿干さん
「アバ」

-大賞受賞おめでとうございます。今のお気持ちをお聞かせください。

大賞受賞の連絡がきたとき、本当に驚きました。まずは審査員の方々に深く御礼申し上げます。また、作品のセレクトや編集方法についていろいろなアドバイスをいただきました大学院の指導教員である圓井義典先生へも感謝の気持ちを伝えたいと思います。

-アーティストへの道を選んだきっかけを教えてください。

写真を撮ることが好きです。写真を通して、世の中にあるいろいろな美しい、面白い物事を観察して体験したく思い、写真の道を選びました。

-今回応募しようと思ったきっかけは何でしたか?

実は去年は写真部門の審査員である小原先生に応募することを誘われましたが、自信がなかったため、応募しませんでした。今年はチャレンジしたいと思い、勇気を出して応募してみました。

-作品のコンセプトや制作中に込めた想いをお聞かせください。
「アバ」という作品は、中国の山奥にある自分の地元で撮った写真です。小さい頃から、進学のために山奥を離れて大都会に住みましたが、毎回地元に帰ると、自分の心が癒やされます。そしてその地元の美しさと豊かさを自分の写真で表現したいと思いました。

-一番こだわった点、また苦労した点等を教えてください。

冬の高原で撮ったフィルム写真ですが、全体的に真っ白な印象を作り出すために色の調整を何回もやり直したり、ハイライトの部分が白飛びをしないようにギリギリまで調整しました。また、どんな写真を見せるのかをよく考えた上で、最後に左右には自然風景を写す写真と宗教性を表す写真を配置し、真ん中には人間の暮らしを表すポートレート写真をつながるという形にしました。

-今後の活動、将来の目標をお聞かせください。

今後も周りの美しい物事を見つめながら、写真を撮り続けていきたいと思います。

ー来年度の応募を目指す皆さんに是非、ひとことメッセージをお願いします。

審査員の方からいろいろなコメントや貴重な意見をいただけますので、ぜひ応募してください。

《プロフィール》

于 阿干(ウ アカン)

instagram : https://www.instagram.com/yuagan/
【略歴】
1995 中国四川省生まれ
2018 来日
2022 東京工芸大学学部研究生修了
現在 東京工芸大学大学院芸術学研究科在籍中

【受賞】
APA AWARD 2024 入選

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