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神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」。
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演劇・ダンス
舘形比呂一のDanceable LIFE Vol.4
2018.11.28

“教える”ことで気づくこと
舘形比呂一(ダンサー・振付家)

 

3年ほど前から、大学でジャズダンスを教えています。きっかけは、谷桃子バレエ団の『眠れる森の美女』に、カラボス役でゲスト出演させていただいたことです。クラシックバレエの舞台、それもロシアのキーロフ・バレエ団の元プリンシパルに演出・振付を依頼するような本格的な作品に呼んでいただけるなんて、思いもしなかったことで、とても勉強になりました。
そのご縁から「洗足学園音楽大学でジャズダンスの授業を受け持ってもらえないか」と、声をかけていただいたんです。
実は20代の頃、カルチャーセンターで短期間教えていたことがあるのですが、大学の授業となるとハードルが高いですよね。まだまだ現役で踊りたいので「時間がもったいない」という思いもありました。でも、そんな機会をいただけることは滅多にありません。踊りは絵や音楽のように実体として残しておくことができないので、これまで自分が身につけてきたものを若い世代に伝えることができるのなら「それもいいな」と思い、お引き受けしました。
問題は「何を伝えるか」です。僕はダンサーとしてはエリートではないので、テクニック的な見本にはなりません。せっかく声をかけていただいたのからチャレンジしてみればいい、とは思うけれど、生徒たちに「教える」なんて勇気がいることです。
大学で教鞭をとっている知人に相談したところ「教えなくていいんだよ。ただ自分が踊っている姿を見せればいいんだ」と言われました。求められているのは自分が踊りと向き合ってきた姿勢を見せることであり、それをどう捉え、身につけるかは生徒たちに任せればいい、と。その言葉に背中を押されて、授業を受け持つようになりました。

踊りを通した自己表現、存在感の出し方などを、僕が踊る姿を見て盗み取ってくれれば、と思ってはじめたのですが、気づいたら3年経っていました。先生の経験もないし、舞台を抱えながら授業を持つのは大変なことなので、すぐに辞めたくなると思っていたのに。

どうやら、僕は教えることが嫌いではなかったようです。

うまく教えられているとは思わないし、面倒だと感じることもあります。でも、生徒たちが一歩ずつ成長していく姿を見ているのが嬉しくて、愛おしいと感じる。自分でも意外でした。
この春には、初めての卒業生を出します。彼らが外の世界でどう頑張っていくのか、とても楽しみです。

怪我で舞台降板を余儀なくされたように、世の中何が起こるかわかりません。どんなに構えていても、ダメな時はダメ。全てを前向きにとらえて、やれるだけやってみようと思っています。

 

撮影協力:Don Giovanni
https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131705/13154500/