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伝統芸能 美術・写真
2019.02.13

能楽堂が美術館に変身!ニヤッと笑いながら深いテーマを思うアートな世界

Yokohama Noh Theater 

行って、みて、感じるアートの世界
File.10
 横浜能楽堂特別展 山口晃「昼ぬ修羅」

井上みゆき(マグカル編集部)

 

伝統的な日本画の様式と現代的なモチーフを融合させた作品を次々と発表する山口晃氏が、横浜能楽堂でインスタレーション作品を発表する—これは行くしかない!なぜなら、山口氏といえば、ユーモアたっぷりの作風もさることながら、ゆるカッコいいスタイルがアート系女子に人気のイケメン現代作家。日本の古典の殿堂とでもいうべき能楽堂で、彼は何をしようとしているのか。興味津々ででかけてみた。

今回の展示は、横浜能楽堂企画公演「風雅と無常—修羅能の世界」に併せたもの。つまり『平家物語』の登場人物や合戦の有様を描きながら、諸行無常な世界が展開する…ということだろうか。
いつもと変わらないロビーを抜けて、まずは1階客席へ。座席1つ1つに弓が置かれており、見渡すと「青海波」の文様のよう。舞台裏からは水が流れる音がかすかに聞こえ、壇ノ浦で平家の人々が沈んだ水の世界を想起させる。

1階ロビーにも展示があると聞いて戻ってみると、片隅に古びた柱時計がかけてあった。これもインスタレーション?
舞台では「水」で時の流れを感じ、ロビーではチクタク音で時を感じる。いろんな時間軸を体感する趣向だろうか。ちなみに、柱時計の時間は大きくずれていることもあるが、それはそれで、パラレルで時間が流れる空間—過去と現在が並列で存在する能の世界—に通じるらしい。

2階に上がってみると、休憩室の前にイスやテーブルが積み上げられている。これももちろん、インスタレーションの一部。
奥の部屋に用意されたパーティー風のテーブルセッティングは“耳なし芳一”が平家の亡霊に連れて行かれた“幻の宴”のイメージだとか。ということは、手前に積み上げられたイスやテーブルは現実の世界、つまり墓地なのか。

見える人には見え、見えない人には見えない世界。

いつもは能楽資料などが展示されているガラスケースの中は、山口氏の絵画とともに、能楽堂の収蔵庫から引っ張り出された様々な道具が“作品”として展示されている。能面、舞台で使用する鬘桶、装束を展示するための衣桁、楽屋の水差し、工具箱から拾ってきたネジ・釘まで。山口氏は能楽堂内をくまなく歩き回り、選び出したモノと自らの絵画作品を組み合わせ、全体を構成したそうだ。
絵画作品の中には、開幕時点では未完成のものも含まれているが、ご本人によると「休館日を利用して完成させるつもり」とのこと。何度か足を運ぶと、作品の“進化”を楽しめるかもしれない。

ガラスケースの前に無造作に立てかけられたパネル。まだ製作中?と思ってしまうが、もちろんこれもインスタレーションの一部。案内板が取り澄ました顔でガラスケースの中に展示されているのも、現代アートらしい。
全体を通じて流れているテーマは「海」あるいは「波」。平家の栄枯盛衰であり、東北を襲った悲劇とも重なる。

わかる? わからない?

難しく考えるより、自由に感じて楽しめばいい…のかなぁ。

ビデオコーナーには、山口氏が自ら演じた(?)ビデオがエンドレスで流れている。
作品名は「放車能」。
アーティストが発信すべきメッセージ、アートだからできることがある…気がした。

 

横浜能楽堂特別展 山口晃『昼ぬ修羅』

[開催期間]3月23日(土)まで 9:00〜20:00
※2月26日(火)、3月4日(月)・5日(火)・6日(水)は休館
[会場]横浜能楽堂
[入場料]無料 ※有料の催しがある時はチケットをお持ちでない方は入場できません。
[問合せ]横浜能楽堂 Tei.045-263-3055

    高い企画・制作力によって知られる、日本の古典芸能のアーツセンター。
    能を始めとする日本の古典芸能の上演だけに止まらず、
    海外とのコラボレーションにより新たな作品も生み出しています。

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