忘れられない体験:神奈川の伝統工芸ワークショップ
 
                美しい景色やおいしい食事、豊かな文化に出会える神奈川県。
 その旅をより深く彩ってくれるのが、伝統工芸のワークショップです。陶芸のろくろを回したり、繊細なガラス細工を手がけたり――実際に自分の手を動かすことで、日本の技と心にふれることができます。
昔ながらの技法で旗を染める、和傘のランプシェードを自分好みに仕上げる、鮮やかなだるまに絵付けをする――どれも神奈川県に受け継がれてきた伝統工芸の体験です。ひとつひとつがユニークで、旅の時間を特別なものにしてくれます。さらに完成した作品は「世界にひとつだけのお土産」として持ち帰れるのも魅力です。
体験を通じて地元の職人や人々と交流し、この土地に息づく歴史や文化を一層深く知ることもできます。
さあ、袖をまくって神奈川県ならではの伝統工芸に挑戦してみませんか?
三富染物店:旗染め体験

完成した大漁旗
歴史と色彩に彩られた体験をするなら、海辺の街・三浦市にある三富染物店がおすすめです。ここでは、ミニ大漁旗を自分で染めることができます。1833年創業の老舗で、江戸時代から続く技法を守り続けています。
特に有名なのが、三浦最南端・三崎の「大漁旗」。これは神奈川県が選ぶ「かながわの名産100選」にも選ばれた伝統工芸品です。もともとは漁船が豊漁を知らせたり、航海の安全を祈ったりするために使われていましたが、現在ではお祭りやイベントの装飾、赤ちゃんの誕生や結婚、還暦祝いの贈り物としても親しまれています。

染め待ちの大漁旗
そんな大漁旗や鯉のぼりを、あなた自身の手で染められるのがこのワークショップ。江戸時代から受け継がれてきた伝統技法を体験しながら、世界にひとつだけのお土産を作ることができます。
体験の流れ(全6ステップ)
1.デザインを選ぶ
 マグロ・タイ・クジラ・カジキの4種類から選択。背景は日の出。12月~3月は干支デザインも選べます。
2. 糊置き
 染めたくない部分に糊を塗り、模様を白く残します。
3. 色つけ
 染料で色をのせ、旗に命を吹き込みます。

大漁旗を描いているところ
ここで体験は終了ですが、職人の手でさらに3工程が加わり、完成品が届きます。
4. 糊落とし:糊を洗い流す工程。
5. 乾燥:染めた旗を吊るして乾かします。
6. 縫製:端を縫い、仕上げを施して完成。
完成した旗は後日、自宅に届けられます。
作業の様子は三富染物店の公式サイトでも写真付きで紹介されています。
三富染物店へのアクセス
この店は、マグロで有名な三崎漁港にあります。三崎口駅から城ヶ島行きのバスに乗り、約18分(11番目の停留所)の日ノ出バス停で降ります。バス停からは徒歩わずか1分です。
湘南和傘 英遊:和傘のランプシェード作り体験

杉崎英紀氏が伝統的な和傘を熱心に作っている様子
次の伝統工芸を求めて向かうのは、海岸に近い街・平塚。ここにある湘南和傘 英遊は、神奈川県で唯一、和傘を一から手作りしている工房です。
この繊細な傘は、かつては優雅な芸者や江戸時代(1603〜1868年)の象徴的な侍たちが雨よけとして使用しており、時代の後半になるにつれて次第に庶民にも広まっていきました。しかし、明治時代になると丈夫な洋傘が普及し、和傘は次第に姿を消していきます。かつて全国で盛んだった和傘づくりも、いまではごく少数の職人だけが技術を受け継ぎ、この美しい伝統を守り続けているのです。
近年、和傘や和傘をアレンジしたランプシェードの魅力が見直されるなか、職人・杉崎英紀氏は工房で旅行者向けのワークショップを開催。繊細で根気のいる和傘ランプシェードづくりを間近で学び、自らの手でその工程を体験することができます。今でも、竹や木をはじめ、和紙や水引など、日本独特の素材を使い続けています。

和傘職人の杉崎英紀氏が、ワークショップ参加者にランプシェードの作り方を教えている様子
まずは、和傘のランプシェードに使う多彩な柄の和紙の中から一つを選びます。デザインは作品の印象を大きく左右するので、じっくり時間をかけて選んでください。実際、参加者の中には、この工程だけで30分以上かける方もいるそうです。焦らず、自分らしい柄を見つけましょう。

個性豊かな柄の数々
次に取り組むのは、和傘の骨組みとなる小骨を轆轤(ろくろ)に糸で通す作業。針と糸を使うため、集中力と根気が試されますが、次第にリズムが生まれ、まるで江戸時代の職人になったかのような没頭感を味わえます。

ランプシェードの骨をろくろに糸で通している様子
小骨を組み終えたら、次は和紙を切って貼る工程です。先ほど選んだデザインとのコントラストを考えながら色を選びます。メインの和紙を引き立てる色にしても、同系色で統一感を出しても大丈夫。あなたらしさが光る色選びを楽しみましょう。そして、傘の端の長さを決め、サイズに合わせて和紙を裁断し、糸に折り込みながら糊で丁寧に貼り付けていきます。ここでも、杉崎氏の温かなまなざしに見守られながら、落ち着いた手さばきが求められます。

ランプシェードの端を一緒に糊付けしている様子
続いて、最初に選んだ柄の和紙を骨組みに糊付けします。たっぷりの糊を使い、均等に貼るのがポイント。乾燥には1~2時間ほどかかります。この間に昼食をとることもでき、杉崎氏がおすすめする地元のレストランで、平塚名物の新鮮な海鮮料理を楽しむ参加者も多いそうです。

ランプシェードの生地にひだを作っている様子
乾燥を終えたら、いよいよ仕上げです。
- ランプシェードの本体と外側の部分に折り目をつけて折りたたみやすくする
- 傘の最上部を覆う小さな“かっぱ”の和紙のデザインを2枚選び、折り紙のように形を折る
- 選んだ色の水引でかっぱをろくろに結びつけ、デザインを完成
こうして、世界に一つだけの和傘のランプシェードが完成です。柄も色も紐も自分で選び、自分の手で仕上げたもの。楽しい体験として始まった時間は、いつしか何世代にもわたり受け継がれてきた和傘職人の伝統と自分とをつなぐ特別な瞬間へと変わりました。

湘南和傘 英遊で光る完成したランプシェード
杉崎氏のランプシェード作り体験には、約3時間のショートコースと約5時間のフルコースがあります。気軽に体験したい方には短いコースもおすすめですが、今回体験をしてみて、筆者は和傘という工芸品の魅力をじっくり味わうことのできる長いコースをおすすめします。時間をかけて作業に取り組むことで、模様や折り目の一つひとつに宿る美しさを改めて感じ、自分の手で昔ながらの優雅さを形にしていく喜びを味わうことができました。
そして、完成したときの達成感は格別。間違いなく、忘れられない思い出になりました。
湘南和傘 英遊へのアクセス
アクセスは、JR東海道本線で東京駅から平塚駅まで行き、徒歩20分で工房に到着する方法があります。また、バスを利用する場合は、平塚駅南口から高浜台行きのバスに乗り、約7分で湘南平バス停に到着。停留所から工房までは徒歩4分です。
荒井だるま屋:だるま絵付け体験

だるまの眉毛を描いている職人
日本の伝統的な縁起物のひとつといえば「だるま」です。
だるまは禅宗の開祖・達磨大師をかたどった張り子人形で、中が空洞の丸い形が特徴です。日本では古くから忍耐と幸運の象徴とされ、赤いだるまは特に縁起物として広く親しまれています。赤以外にも、健康・富・恋愛・学業成就など、色ごとに異なるご利益があるのも魅力です。
神奈川県平塚市には「相州だるま」と呼ばれる伝統のだるまがあります。白い顔に金箔の目の縁取り、鶴の形をした眉、富士山の形をした口、亀をかたどったひげが特徴で、その穏やかな表情は代々受け継がれてきた職人の技によって丁寧に描かれています。2025年に創業160周年を迎える「荒井だるま屋」で、あなたもぜひ体験してみてください。

荒井だるま屋で作られているだるま
その伝統を体験できるのが荒井だるま屋です。ここでは、自分だけの相州だるまに絵付けをすることができます。朱色や金色で体を彩り、顔を描き入れていきますが――瞳だけは最後まで描きません。これは昔からの習わしで、まず片方の目に願いを込め、達成したときにもう一方を入れるのです。目標達成を祈り、成し遂げた後には感謝を込めて完成させる。だるまはそんなふうに、人生の節目を静かに見守ってくれる存在です。

荒井だるま屋に並んだだるま
旅の思い出として持ち帰ることができるだけでなく、次の目標達成へのお守りにもなる相州だるま。神奈川ならではの伝統工芸に挑戦してみませんか?
詳細は、荒井だるま屋の公式サイトをご覧ください。
荒井だるま屋へのアクセス
平塚駅北口から出て、本厚木駅南口行きのバスに乗ります。8つ目の停留所の泉蔵院前で下車します。そこから荒井だるま屋までは徒歩わずか1分です。
神奈川県の伝統工芸ワークショップ体験
神奈川を訪れたら、伝統工芸や食文化、美しい景色とあわせて楽しめるワークショップに参加してみてはいかがでしょうか。実際に手を動かしながら体験することで、創造的で本格的なひとときを過ごすことができます。
その他のメリット:
- 思い出を作り、ソーシャルメディアを充実させることができる
- 地元の人々と個人的なレベルで知り合える
- 自分の手で作った、唯一無二のお土産を持ち帰ることができる
神奈川で素晴らしいワークショップに参加しましょう
日本で最高のお土産を手に入れたいなら、神奈川でワークショップに参加して、あなたの日本での素敵な思い出をいつまでも思い出させてくれる、心のこもった手作りの贈り物を持って帰りましょう。
 
                     
                     
                    