
目指せ!観て笑って、体験して元気になるワークショップ
21世紀を生きる狂言師の檜舞台
Vol.6 観て笑って、体験して元気になるワークショップ
大藏教義(能楽師狂言方大藏流)
学びは遊び。遊びは学び。
この言葉と出会ったのはいつだったか。
小学校の頃、理科の実験で使った青いリトマス紙は、酸性の水溶液に浸ければ赤くなった。この発見と驚きに、僕は足から頭までぞくぞくワクワクした事を今でも忘れる事ができない。一枚の紙と液体がもたらした不思議は、好奇心を刺激し、「授業」を超えた「遊び」になった。
最近、子ども向けの体験ワークショップを頼まれる事が多くなった。
それまでもワークショップの経験はあったが、対象は基本的に大人。演目と演目の間にお客さまを舞台に上げ、基本姿勢やすり足、発声など、様々な表現方法を体験してもらうもので、長くても20分程度だった。
僕が30歳前後に受けた初めてのワークショップの仕事は、未就学児も参加できるイベントであった。子ども向けに慣れていない僕たちは、狂言を見せたり、基本姿勢、摺り足など、様々な表現方法と型などを教えてみた。
子ども達は飽きた。
10分もしない間に飽きた。
途中で退出する子もいた。
あとの50分は保護者向け。
子ども向けのイベントなのに。
今でも忘れられない、あの挫折。
はぁ、思い出すだけでも嫌になる…。
そもそも古典芸能の世界だから、型を崩す事はあるまじい…と思っていた自分が恥ずかしい。
まずは自分に何が足りないのか、楽しんでもらうためには何をしたらいいのかを考えた。それはまるで、体内の細胞を入れ替えていくような作業だった。
ワークショップは学びではなく遊び。そんな気持ちで、色々な物をそろえた。
自作の狂言紙芝居。
オリジナルの扇子が作れる扇キッド。
狂言の装束も試着できる時間も設ける。
さらに数年かけて「本物」「型」を崩さずに楽しんでもらえる“心躍るワークショップ”を作ることができた。
子どもたちの狂言を観て笑う顔やはしゃぐ姿。
体験では元気溢れる動きと割れんばかりの大きな声。
意気揚々と自分たちを表現する姿。
後ろに座っていた子が、だんだんと前に出てくる姿を見て、少しずつ自信をもらった。
本当の意味で「古典芸能」の魅力とは何だろうか?
本当に大切にするべき「伝統芸能」とは何だろうか?
そんな事を「遊び」ながら「学べる場」でありたい、と強く思う。
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