どんな年代・人もやさしくさせる「ミッフィー」生誕70周年記念展

オレンジ・青・黄色のお洋服や背景が印象的な「お口がバッテン (×)のうさぎちゃん」。
だれもが一度は目にしたことがあるでしょう。絵本のキャラクターとしても、キャラクターそのものとしても長らく愛されている「miffy(ミッフィー)」。
グラフィックデザイナーであり、絵本作家としても活躍したオランダ生まれのディック・ブルーナ(1927-2017)が生み出し今年で70年を迎えました。

その記念展が、2025年9月13日~2025年11月4日まで、横浜・そごう美術館で開催されています。
「もっと、もっと、ミッフィー」をテーマに、初来日の原画を含め、ミッフィーシリーズの絵本全32作品の原画やスケッチが200点以上も展示されています。
今回は、会期1日前の内覧会に伺ったので、その模様をお伝えします!
とその前に、「miffy(ミッフィー)」の基礎知識についておさらいを。

1953年にすでに『de appel(りんごぼうや)』で絵本作家として活動を開始していたブルーナ。家族と海岸へ遊びに行った際に見かけた子うさぎのことを自らの息子へ話すために書いたという『NIJNTJE(ちいさなうさこちゃん)』を1955年に発刊し、そこから全32作品もの「miffy(ミッフィー)」を世に送り出しました。(ちなみに、ミッフィーシリーズ以外も含めると120冊以上!)
オランダ語の「konijn=うさぎ」と「tje=ちいさくてかわいい」が合わさってできた「NIJNTJE(ナインチェ)」。オランダ語話者であれば問題なく意味もわかるけれど、それ以外の言語を話す人たちには発音もむずかしいし、「ちいさいうさぎ」はそれぞれの言語でさまざま。英語版を発刊する際、「Little Bunny」ではなく何か良い言い方はないかと、ブルーナ自らが、翻訳者とともに探し、考え「miffy(ミッフィー)」に辿り着いたそう。過去には各言語で他の言い方もされていましたが、1996年以降はオランダ以外では「miffy(ミッフィー)」 として親しまれています。
しかし、日本では1964年に最初の翻訳本『ちいさなうさこちゃん』が発行され、絵本では「うさこちゃん」と呼ばれています。

「miffy(ミッフィー)」は0〜6歳の女の子うさぎ。絵本は彼女の家族(おとうさん、おかあさん、あかちゃん、おじいちゃん、おばあちゃん、おじさん、おばさん)や学校でのお友達たちとの出来事をさまざまな角度、テーマで描いています。
記念展は、ブルーナがミッフィーの着想を得た海岸から始まります。
続いて、グラフィックデザイナーとしてのブルーナの作品などのゾーンを経て、「ミッフィーの誕生」「ブルーナスタイルの確立」「家族」「すべての子どもたちへ」「もっと、もっと、ミッフィー」と基本的には絵本が発行された年代を追いながらも、テーマに沿って、数々の原画やスケッチ が並びます。ストーリーのアイデアを書き留めた手書きのメモなども紹介され、そこにはストーリーの裏側に込められた思いも感じ取ることができます。特に展示後半は、「死」だったり「多様性」だったり、お子さんと一緒に考えたいテーマのお話について語られています。

また、映像も随所に流れていて、「ブルーナがミッフィーを生み出している瞬間」を垣間見ることもできます。
そして最後は、20年ぶりに公開されるブルーナによる『うさこちゃんとうみ』の読み聞かせビデオ。オランダ語での朗読は耳にやさしく、また本文だけでなく、聞いている子どもたちへのブルーナの問いかけも、ミッフィーのやさしい世界観がいかにして出来上がっているのかを知るヒントとなり、幸せな気分で会場を後にできます。
展示ゾーンを抜けると、そこはワクワク物販ゾーン。今回の記念展オリジナルグッズも多々あり、あれもこれも全部欲しくなります。

「miffy(ミッフィー)」ファンはもちろん、絵本の『うさこちゃん』ファンも、ブルーナファンも、デザイン好きな方も、お子さんも、親御さんも。どんな方でもやさしい気持ちになれる展示会に足を運んでみてはいかがでしょうか?