コンテンツにスキップ
アート講座・ワークショップその他

今、図書館が熱い! 図書館建築ツアー(館内撮影OK)に潜入!

今、図書館が熱い! 図書館建築ツアー(館内撮影OK)に潜入!

行って、みて、感じるアートの世界
File.6
 今、図書館が熱い! 図書館建築ツアー(館内撮影OK)に潜入!

井上みゆき
(コピーライター)

東京・上野の国立西洋美術館が世界遺産に登録されるなど、建築に対する注目が高まっている。そう思ってあたりを見回してみたら、神奈川県には素晴らしい建築物があることに気づいた。神奈川県立図書館だ。
設計の前川國男は、建築界の巨匠、ル・コルビュジェの元で学び、コルビュジェが設計した西洋美術館の細部設計にも携わるなど、日本を代表する建築家の一人。声を大にして言いたいのは、県立図書館の開館が1954年であることだ。つまり西洋美術館(1959年開館)より前! 神奈川県ってすごいかも。
そんな素晴らしい建築物の見学ツアーが実施された。休館日に開催する特別企画だったこともあり、普段は申請が必要な館内撮影もOK。これは行くしかない!

ツアー当日は休館日のため、正面入口ではなく南側(青少年センター側)にある新館入口へと向かう。その道すがら、本館の外壁を鑑賞。「ホローブリック」と呼ばれる中空のレンガで覆われたフォルムが美しい。
現在のホローブリックは2011年に改修工事を行った際に更新されたものだが、予算の問題もあり、全てを更新することができなかったそう。このため、写真に写っている職員通用口より先は、残念ながら枡目模様がなくなってしまっている。

見学ツアーでは、まず建築時の様子を収めた貴重なフィルムを鑑賞。鉄筋コンクリートの建物なのに、ほとんど手作業で建てられていることに感動する。
ちなみに、図書館設計の陣頭指揮をとったのは、前川建築事務所のスタッフだった鬼頭梓。のちに国立国会図書館の設計を行うなど、図書館建築のパイオニアとして知られているそうだ。

職員さんの案内で一般閲覧室へ。
大きな吹き抜けが開放的で居心地がいい。窓外に広がる緑の庭を見て「軽井沢のよう」と称した人がいるというのも納得だ。
大きなガラス面の外側には、くの字に折れ曲がったルーバーが整然と並び、建築を支えると同時に、館内に西日が差し込むのを防いでいる。

こちらは2階の閲覧室。「ホローブリック」を内側から見るとこんな風景。外からの視線を防いで一定のプライバシーを確保しながら、夏は日差しを防ぎ、冬は暖かな自然光を取り込めるよう設計されている。

ホローブリックを外からもう一度。内側を白く塗ることで太陽光が反射し、部屋の明るさを均一にする働きも持っている。
オリジナルは愛知県の窯で焼かれたものだったそうだが、復元版は信楽で焼いたもの。当時の土も窯元も一切残っていなかったため、釉薬の試作を繰り返して復元、修復したそうだ。

開館時には、椅子もオリジナルでデザインされた。本を読むのに最もふさわしい形を追求したデザインと言われているが、残念ながらオリジナルは残っていない。
現在閲覧室に置かれているのは、資料を元に復刻したもの。忠実に復刻されているそうなので、ぜひ座って、実感してみて。

正面玄関から2階へと上る階段。握りやすい手すりの形状やカラーリングなどに、前川建築の特徴が表れているという。

普段は入れない書庫にも潜入!
書庫の1層と2層は書架が通しで設置されている。つまり、本棚が2層分貫通することで、建築強度を高める役割も担っているというわけ。

試しに上層から本棚の下を覗いてみると、隙き間から下層の本棚が見える。なんだか不思議…。

図書館建築ツアー(館内撮影OK)の案内役を務めてくださった、山下樹子さん。当日は、図書館建築の基本色である「緑・黒・黄色」のファッションで決めていらした。さすがです!

帰り際、音楽堂側から振り返ると、建物本体に「神奈川県立図書館」と表示されていることに気づいた。堂々として美しい。

図書館には常々お世話になってきたけれど、その快適な空間は、時代の先端を行く建築家たちのアイデアと情熱が注ぎ込まれているのだな、と感嘆。

ちなみに、同時に建てられた音楽堂は改修工事中なので、こちらはまた改めて取り上げたい。

関連記事