今夜もどっぷりジャズ浸り
File.7 DOLPHY 2nd 馬車道
新村繭子(ジャズ喫茶ちぐさ)
毎年ちぐさ賞選考ライブでお世話になっているJAZZ SPOT DOLPHYは、1980年に本牧で開店。その後、ジャズライブの場をもっと広げるため、1990年に野毛に移った。国内外の実力派ジャズミュージシャンが毎晩こぞってライブを行い、野毛で過ごす夜を一層濃いものにしている。
老舗のジャズクラブのオーナーというと話しかけるのも緊張してしまうイメージだが、オーナーの小室恒彦さんは(周りはツネさんと呼んでいる)、気さくで陽気な方。私が軽口を言っても、笑って聞いていてくれる。多くのミュージシャンに愛されているのは、その懐の広さにあるのだろう。ちぐさにもふらりとコーヒーを飲みに来てくれることがあるが、ツネさんの姿を見るとホッとする。
もっとミュージシャンに演奏の場を—という思いから関内にも店を出したいと考えていたそうだが、この4月、馬車道でドルフィー2ndを開店した。
オープニングパーティには、常連はもちろん、仕事終わりのジャズミュージシャンたちが祝福に駆けつけ、豪華なメンツでのセッションが深夜まで続いた。打ち合わせのないインプロビゼーション(即興演奏)での音の掛け合いは面白くも素晴らしく、ドルフィーへの敬愛を感じる最高のオープニングになったと思う。
何より、ミュージシャンたちの楽しそうな顔が忘れられない。
場所は雑居ビルの4階。もとはパブとして営業していたスペースらしい。ステージを設置し、照明をつけるなど多少手を加えているが、内装は以前のパブのまま。新元号になったにもかかわらず、店内には昭和の香りが漂い、なぜか落ち着く。ミュージシャンからは「野毛のドルフィーより音がいい」と言われるらしい。
アコースティック、ボーカル中心のライブを積極的に入れていく予定だそうだ。いずれシェフも置き、本格的な料理も出すとのことで、横浜の新たな名所になることは間違いない。
関内周辺にはジャズクラブがたくさんあるけれど、ミュージシャンがバッティングすることはほとんどない。ドルフィーだからこそ“トップ連中”が集まり、聴衆を魅了している。
—長くやってきただけのことはあるよね。
ツネさんは少し遠慮気味に言うが、「ミュージシャンの飯の種を増やす」場を野毛で30年近く続け、さらに「若手にももっと活躍してほしい」というジャズへの情熱が、2ndオープンへの後押しをしたのだろう。
—自分の飯の種も増やさなといね。
ご本人はただ笑っていた。