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美術・写真・映像

【gallery fu】現実と幻のあわいに咲く。8人の作家が編むグループ展「幻色花図鑑」

【gallery fu】現実と幻のあわいに咲く。8人の作家が編むグループ展「幻色花図鑑」

横浜・石川町。元町・中華街のにぎわいから少し歩いた一角に、gallery fu(ギャラリー・フー)は静かに佇む。この小さなギャラリーで、2026年10月14日(水)から10月25日(日)まで、8人の作家によるグループ展「幻色花図鑑(げんしょくはなずかん)」が開かれる。花をモチーフに、ペインティングと立体作品が一堂に並ぶ展覧会だ。《トップ画像:田村香織》

「幻色」という名の、儚さへのまなざし

タイトルの「幻色花図鑑」には、この展覧会のねらいがそのまま込められている。物質と非物質、現実と非現実——その“はざま”に存在するような作品を、まるで一冊の「花図鑑」のようにギャラリー空間へと並べていく。そして、夢や空想の儚さ、まだ見ぬものへの憧れ――そうした言葉にしづらい感覚を、本展は「幻色」と名づけた。

花という誰もが知るモチーフを入り口にしながら、その先に広がるのは、現実の一歩外側にある景色だ。図鑑のページをめくるように会場を歩くうち、見慣れたはずの花が、少しずつ見知らぬ色を帯びていく。

8人の作家、8通りの花のとらえ方

本展の見どころは、なんといっても作風の異なる8人の競演だ。普段はそれぞれ技法もテーマも別々に活動する作家たちが、「花」という一つのモチーフのもとに集う。

日常の風景を独自の感性ですくい取り、再構成する雨海武。洗練された技術のなかに、優しさとユーモアをにじませる岩渕華林。対象へ近づく微視的なまなざしと、俯瞰する距離感を併せ持つ江川陽子。植物から絵画としての動きやリズムを抽出する坂木優子。塗り重ねた絵具の物質感と、モチーフを見つめる眼差しとが交錯する重根梨花。緻密な線と色彩で幻想的な世界を築く田村香織。そして、平面と立体のあいだで、物質や空間のあり方そのものを問いかけるますだ美砂。

岩渕華林 作品

ますだ美砂

同じ「花」でも、写実へ向かう作家もいれば、抽象や幻想へ深く分け入る作家もいる。並べて見ると、花というモチーフがいかに懐の深い主題であるかがわかるはずだ。

キュレーションは、美術家・大村雄一郎

本展のキュレーションを手がけるのは、自身も出展作家の一人である美術家・大村雄一郎氏。昨年のグループ展「PHASE ーそれぞれのドローイング」に続く登板だ。大村氏自身も、花をモチーフに「絵の在り方」そのものを試行する作品で本展に加わる。

8人の個性が一つの空間に並んだとき、花たちはどんな表情を見せ、ギャラリーはどんな景色になるのか。一点ずつをじっくり味わうと同時に、空間全体が一つの「図鑑」として立ち上がっていく——その様子もまた、本展ならではの楽しみだ。

大村雄一郎 作品

個人的には、写実的なピンクの薔薇から、頭に花を戴いた二人の人物、深い青の薔薇、無数の点で埋め尽くされた円まで、同じ「花」からこれほど異なる世界が生まれることに驚かされる。石川町の小さな空間だからこそ、一枚一枚とゆっくり向き合えるのもうれしい。秋の横浜さんぽのついでに、幻の花図鑑をめくりに立ち寄ってみてはいかがだろう。

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