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音楽その他

70年代ニッポンの音楽とポップカルチャーが蘇る 「70’sバイブレーションYOKOHAMA」展レポート

70年代ニッポンの音楽とポップカルチャーが蘇る 「70’sバイブレーションYOKOHAMA」展レポート

Text & Photo : 井上 明子

政治の時代、ヒッピーカルチャーなど日本の1970年代を形容する言葉は多岐に及び、よど号ハイジャック事件、浅間山荘事件など社会を震撼させる出来事がめまぐるしく展開した時代でした。今、70年代ニッポンの音楽とポップカルチャーに焦点をあてた「70’sバイブレーション!YOKOHAMA」が、展覧会やLIVEなど各種イベントを取り揃え、横浜赤レンガ倉庫1号館を拠点に開催中です。

高度経済成長を背景に、様々な分野で急速な変化がもたらされた日本の70年代ですが、とりわけ音楽をはじめとするポップカルチャーにおいては、現代へと続く源流の宝庫でした。激動の60年代を経て、日本のポップミュージックはGSからシンガーソングライターの時代へ。ニューミュージック、シティポップと呼ばれたそれらはAORの原型を成し、後にジャパニーズクラシックとして多くのDJに愛好され今日に至ります。

今回は、60年代から80年代へと続く流れの中で大きな転換期となった70年代を、貴重なコンテンツとともに多角的に紹介する展覧会「70’sバイブレーション!」展をレポートします。

南青山の伝説のレコード店 “パイドパイパーハウス”を再現!

パイドパイパーハウス

「ハーメルンの笛吹き男」からその名をとった”パイドパイパーハウス”は、1975年に岩永正敏さんらによって南青山骨董通りにオープン。その後2代目の長門芳郎さんに引き継がれ、89年までの約14年間、多くのミュージシャンや音楽ファンから厚い信頼を得ていたレコード店です。山下達郎、大貫妙子、細野晴臣、鈴木茂、大瀧詠一…など著名なミュージシャンたちが客としても訪れ、80年代の名著『なんとなく、クリスタル』(田中康夫 著)にはこの店が登場、そして、店に集まるポップスマニアの若者たちによってピチカートファイブが結成された…など数あるエピソードが、パイドパイパーハウスを伝説のレコード店にしていきました。

今回、その“パイドパイパーハウス”が、展示会場に期間限定で再現されています。

パイドパイパーハウス

店内の様子。当時の看板もそのまま使用。

実際にCDを購入することもでき、連日大盛況の様子です。今回のために特別につくられたグッズなどもあるので、是非チェックしてみてください。

パイドパイパーハウス

「YMO楽器展」、そして大瀧詠一さん私物の展示も!

YMO楽器展

こちらは、79年~80年にかけてYMOのワールドツアーで使われた楽器や、記録写真をはじめとする貴重な資料の数々が展示されている「YMO楽器展」です。

展示楽器は、細野晴臣さんが使用していたアープ・オデッセイ、ベースのミュージック・マン・スティングレイや、坂本龍一さんの当時のメイン楽器であるムーグ・ポリ・ムーグ・シンセサイザー・モデル203A、高橋幸宏さんが愛用した生ドラムのセット
ヤマハ YD-9000のドラムキット、そしてYMO第4のメンバーとも言われる松武秀樹さんの巨大なモジュラーシンセ ムーグのⅢC(通称 ”タンス”)などなど。これらの楽器が、すべて音の出る状態で再現され、衣裳や記録写真とともに、当時の様子を生々しく蘇えらせています。

また、大瀧詠一さんの私物展示では、愛用のジュークボックスや、歴代の「ナイアガラ・ムーン」の裏ジャケ、その裏ジャケで毎回着用しているシャツ、そして、ガラスケースの中には「ロングバケーション」のパンフやチケットなどがぎっしりと展示されていました。最近ではジュークボックス自体を目にする機会も少なくなりましたが、大瀧さんの私物とあればその選曲も気になるところ。中でも目を引いたのは、植木等さんの”スーダラ節”でした。ちなみに展示とは無関係ですが、大瀧さんがプロデュースした「植木等的音楽」では、植木さんが歌う「ナイアガラ・ムーン」が収録されているのですね。

70年代の熱気溢れる“ロック写真”の展示 ー鋤田正義、井出情児、迫水正一、桑本正士

続いてご紹介するのは、70年代をカメラにおさめた4人の写真家たちによる展示です。

ロック写真”の展示

中津川フォークジャンボリー、深大寺ロックフェスティバル、箱根アフロディーテなどを記録した井出情児さんの写真からは、当時のヒッピーたちの姿がみてとれます。69年のアメリカのウッドストックに少し遅れて、日本でも次々と興った野外ロックフェスティバル。その熱が伝わってくるようでした。

また、ステージ上から撮影されたという、臨場感溢れる迫水正一さんのライブ写真、桑本正士さんによる、当時の街に宿る原風景やアーティストのオフショットを写した写真、そして、デヴィッド・ボウイのポートレートでも知られ“ロック写真”というジャンルを切り開いた先駆者 鋤田正義さんによるアーティストポートレートなど、4者4様に真空パックされた70年代を感じることができます。

補足ですが、箱根の彫刻の森美術館にて 鋤田正義さんの個展が開催しています。ご興味ある方はあわせてチェックしてみてください。
鋤田正義写真展「フラッシュバック」

アートワークで紐解く70年~80年

アートワーク70-80展示

レコードジャケットを中心に、その年を象徴する様々なアートワークが1970-80年の各年ごとに展示されいる空間では、年ごとのイメージをダイジェストに追いかけながら、その変遷をみてとることができます。音楽を軸に、演劇・映画・マンガなどのジャンルを横断しつつ、中央通路奥に用意されたモニターでは、70年代の社会背景を短時間で総ざらいできるような映像が用意されています。これまで抱いていた断片的なイメージの1つ1つが繋がっていきます。

中央通路奥のモニター

中央通路奥のモニター。70年は歩行者天国が始まった年でもあるんですね!

そのほか、今回の開催地・横浜の70年代に焦点をあてたコーナーも充実しています。

横浜の70年代

現物をみて、聴いて、70年代のバイブレーションを体感できる「70’sバイブレーション!YOKOHAMA」は、9.13(日)まで。

期間中、小坂忠・南佳孝・鈴木茂・小原礼・屋敷豪太・斎藤有太ら”Peg Project Band”によるライブ(@赤レンガ倉庫1号館3階ホール)や、森山良子・大貫妙子・清水ミチコによるライブ「70’sバイブレーション!YOKOHAMA 特別企画~時間旅行へようこそ~」(@KAAT神奈川芸術劇場 大ホール)、など各種イベントも盛りだくさんです。詳細は下記関連イベント、または公式サイトからご確認ください。

〈このイベントは終了しました。〉

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