『横浜という街は、日本のジャズを語る上で欠かせない存在である』
「横濱JAZZ PROMENADE」をはじめ「旭ジャズまつり」や「YOKOHAMA本牧ジャズ祭」など数多くのジャズフェスティバルが開催され、生演奏が楽しめるジャズスポットも多い横浜。
本連載では、ジャズ喫茶やライブハウスに足を運んだことのない方でも気軽にジャズを楽しめるように、県内にあるジャズスポットを取り上げて紹介していく。
今回訪れたのは、関内・馬車道にあるジャズバー“JAZZY AFTER HOURS”。カラフルなネオンに導かれるように階段を上がり、入口の扉を開くと、心地の良いジャズが迎え入れてくれる。落ち着いたブルーの照明、綺麗に整えられたグラス、そして談笑を楽しむ人々の声。賑やかな週末の夜の街から、急に時間の流れが変わったように感じる。
「ジャズといえば関内」と考え、ジャズバーと呼ばれる店が30軒以上あるこのエリアにあえて店をオープンすることにしたと話すのは、マスターの柴田淳さん。2017年に勤めていた会社を定年退職した後、昔から好きだったジャズ関連の店を開くことを決意し、2年間の修行と準備期間を経て、2019年3月に“JAZZY AFTER HOURS”をオープンした。
修業期間中にバーテンダーの勉強をされていたこともあり、ドリンクのメニューは豊富だ。ウィスキーやカクテルのメニューはそれぞれ7-80種類にものぼるとのこと。オリジナルのジャジー・ハイボールはスモーキーな風味が楽しめる一杯だ。
お酒だけではなく、食事のラインナップもかなり充実している。料理を担当されているマスターの奥様はフレンチのシェフに習っていたこともあり、美味しそうなメニューがずらりと並ぶ。にんにくがしっかりと効いたつぶ貝のガーリックソテーは絶品で、あまりにもお酒との相性が良い。そのため、ポロっと「飲み過ぎてしまいそうで怖い」と漏らすと、「ぜひ飲み過ぎちゃってください」と柴田さんが優しく笑った。つぶ貝に舌鼓を打ちつつ、隣のお客さんが頼んだポークカツレツがあまりにも美味しそうだったので、次回はもっとお腹をすかせて来ようと決意する。
食事を楽しむ間も、心地良いジャズが店内を満たしている。すっと耳に馴染む、ライブ感のあるサウンドだ。柴田さんが目指すコンセプトは「お酒とジャズと空間を楽しむお店」。長時間いても疲れず、そして会話も楽しめるお店だ。「そういうお店はあるようでなかなかない」と考え、他の店とは違うコンセプトを打ち立てたそうだ。
そのため音には非常にこだわっている。CDプレイヤーは日本製のエソテリック、メインスピーカーはイギリス製のタンノイ、そしてサブスピーカーにはデンマーク製のDALIを使用。50~60年代のスタンダードジャズを中心に、時にはジャズ以外の音楽を流すこともあるそう!「自称日本一ゆるいジャズバー」だと言い、朗らかに笑う。
“JAZZY AFTER HOURS”は、お酒と料理が中心の、ジャズが聴けるリスニングバーだ。それだけではなく、月に一回はジャムセッション(即興ライブ)やボーカル・ジャムセッションが開催される。そのうえ年に数回はコンサート形式のライブを鑑賞することもできる。
入店したときに感じた居心地の良さは、すべてのお客さんに楽しんでもらいたいという柴田さんの思いから生まれているのだろう。“JAZZY AFTER HOURS”にはジャズに詳しくないお客さんも沢山訪れるとのこと。バー利用や二次会でふらりと訪れては、それぞれが思い思いに時間を過ごす。店内を流れるジャズは、会話を妨げず、しかし、単なるBGMにもとどまらない。全すべてのお客さんを優しく包み込んでくれるため、サウンドに静かに耳を傾けるのも、リズムに乗せて会話を楽しむのも、自由な空間だ。
「ジャズにこだわらず、ジャズに限らず、リラックスできる場所です。音楽が好きなお客様、是非気軽に寄っていただければ。喫茶利用も可能で、コーヒー一杯からでも大丈夫です」。
そう話す柴田さんが待っている”JAZZY AFTER HOURS”。美味しい料理とお酒、そして心地の良いジャズで、心をゆるりとほどいてみてはいかがだろうか。