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音楽

舌も耳も満足させてくれるジャズレストラン「Bar Bar Bar」

舌も耳も満足させてくれるジャズレストラン「Bar Bar Bar」

『横浜という街は、日本のジャズ を語るうえで欠かせない存在である』
「横濱JAZZ PROMENADE」をはじめ「旭ジャズまつり」や「YOKOHAMA本牧ジャズ祭」など数多くのジャズフェスティバルが開催され、生演奏が楽しめるジャズスポットも多い横浜。

この連載では、神奈川県内のジャズスポットの雰囲気や魅力を紹介。ジャズ喫茶やライブハウス等に興味はあるが「な〜んか敷居が高い」と思っている方も、気軽に行けるスポットが見つかるかも!
県内でも野毛〜伊勢佐木町〜関内エリアは、老舗ジャズ喫茶やライブハウスがひしめくエリア。
今回は関内にある「Bar Bar Bar」を訪ねた。

横浜スタジアムからすぐ、ベイスターズ通りに面したビルの地下に店を構える「Bar Bar Bar」。2年前、自社ビルの老朽化を機に、数本通りを挟んだ現在の地に。開業は1984年の老舗だ。

『Bar Bar Bar』のネオンサインと、店のロゴでもある陽気でお茶目な感じの魔女に迎えられガラス戸を開けると、さらに重厚な木の扉が。実際、かなり重い。地下でありながら、音漏れ対策もバッチリのようだ。

一歩店内に入ると、アンティーク調の家具に、所狭しと置かれたウイスキーのボトル、ステージをより落ち着いた雰囲気にしている深紅のカーテン、巨大蓄音機のような木製スピーカーが目に入る。格式の中にも、ホッとする雰囲気が漂う。

旧店は1階がカウンターBar、2階がライブレストランという形態だったが、新店はその2階部分を移した形となっていて、食事のしやすい2〜4人がけのテーブル席が並ぶ。

ライブのスタートは19:00だが、18:00の開店時には2/3ほどの席が埋まり、思い思いのくつろぎ方をしている。中には演奏前の演者と歓談するファンも。

ジャズバーの域を越えるサービスと料理

無数に置かれたボトルは実は、キープされたボトルで、席を予約していればあらかじめ好みの飲み方でセットしてくれており、予約がなければ来店した時点で、スタッフがすかさず用意してくれる。正直、ジャズライブを看板にしたお店で、このように洗練されたサービスが受けられるとは予想外だった。メニューも豊富でスコッチだけでも30種類を超え、ほとんどの銘柄がキープできるのも驚きだ。Bar単体での利用はできないが、変わらずバーテンダーが一杯一杯丁寧に作ってくれるカクテルも、定番を中心に何を飲もうか迷ってしまうほど。

また「Bar Bar Bar」が他のお店と一線を画しているのは、その料理にある。メニューにしても、彩りや盛り付けにしても、味にしても、「ライブレストラン」とうたうだけあって、「ライブを聴きに来た際のちょっとしたお供」の域ではなく、食事だけを目当てに来店する価値のあるものだ。

お肉中心のオードブル盛り合わせはパテやテリーヌなど手の込んだものが並び、スタッフおすすめの「ポテトのグラタン サヴォワ料理人風」を食べたときは、取材スタッフ一同目を丸くして「間違いない!」と声を揃えたほど。個人的には、「アンチョビ・オリーブピザ」の臭みがまったくなく、チーズのコクが深いことにかなり驚いた。何枚でも食べられそう。

聴衆参加型?いじりも楽しい「大人の社交場」

ほどよく喉とお腹を満たしたところで、第1ステージの開始。1段高くなったステージにはグランドピアノはじめ、ドラムセットなどがゆったりと配置されている。
この日はピアノトリオ(ピアノ・ベース・ドラム)の出演。スタンダードナンバーに、夏らしくボサノバやサンバといったナンバーも加え、かなり情熱的な演奏を披露してくれた。ピアノもドラムも力強く演奏している割に、耳障りな感じがまったくしない、素晴らしい音のバランス。聞けば、PAは挟んでいるものの、ほとんど生音を大切にしているのだという。

中盤からはゲストヴォーカルも加わり、曲だけでなくおしゃべりも客席を巻き込み盛り上がってくる。おひとりで来られていた男性に、お隣の女性2人組と「一緒に飲まれては?」と勧める場面も。「恋愛的な意味だけでなく『出会い系ライブ』になればいい」とも話していたが、ここでの出会いでジャズを楽しむ仲間が増えることもあるのだろう。格式はあるのにどこかアットホームな雰囲気は「大人の社交場」という言葉がしっくりくる。

ジャズとは身構えて聴くのではなく、自然と体に入ってくるもの

代表の竹内眞澄さん

こういった雰囲気はひとえに、ホールのマネジメントからライブブッキングまで担うが先代から引き継いだこだわりによるところが大きい。

横浜ジャズのホットスポット本牧を拠点に青年時代を過ごし、アーティストや曲名を意識する前に“ジャズ”を文字どおりシャワーのように聴いてきたという。「Bar Bar Bar」との関わりもお客として通っていたことがきっかけだ。「まさか数十年後に自分が支配人をしているとは夢にも思わなかった」と竹内さんは笑う。

自身も「いつかは行ってみたい場所」と憧れのように「Bar Bar Bar」を捉えていたというが、基本的には「品格はあるが、敷居は高くない」場所を目指している。
ゆえにブッキングするプレーヤーも「座って静かに聴け!」タイプではなく「ジャズのことを知らなくても、気楽に聴いていって」というスタンスのプレーヤーを選んでいる。プレーヤーにとっても「憧れの地」である同店だけに、持ち込みの企画も少なくない。それでも、みずから時にはYouTubeなどで新人発掘も行うという。
プレーヤー自身も高齢化するなか、演者も聴衆も若い世代の人に親しんでもらえるお店にして行かなければとの危機感も少ながらずある。

「Bar Bar Bar」が母体となって音楽院という形で若手プレーヤーの育成に関わっているのも「ジャズ」文化を継承するという強い意志の表れなのだろう。
「最近注目の若手は?」の問いに「音楽院出身の市川莉子」との答えが返ってきた。
次回は、脈々とつながる横浜ジャズの新時代を味わいに行ってみたいと思う。

Bar Bar Bar
住所:〒231-0015
   神奈川県横浜市中区尾上町1-8関内新井ビルB1-B
ホームページ:https://www.barbarbar.jp/

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