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音楽

ジャズ散歩 “爆音”と“没頭”が両立する不思議空間「down beatダウンビート」

ジャズ散歩 “爆音”と“没頭”が両立する不思議空間「down beatダウンビート」

『横浜という街は、日本のジャズを語るうえで欠かせない存在である』
「横濱JAZZ PROMENADE」をはじめ「旭ジャズまつり」や「YOKOHAMA本牧ジャズ祭」など数多くのジャズフェスティバルが開催され、生演奏が楽しめるジャズスポットも多い横浜。
この連載 では、県内のジャズスポットの雰囲気や魅力を紹介。ジャズ喫茶やライブハウス等に興味はあるが「な〜んか敷居が高い」と思っている方も、気軽に行けるスポットが見つかるかも!

県内でも野毛〜伊勢佐木町〜関内エリアは、老舗ジャズ喫茶やライブハウスがひしめくエリア。連載3回目となる今回は野毛で68年続く老舗「ダウンビート」を訪ねた。

その名も「音楽通り」から1本入ったところにある「 ダウンビート」。
赤いベース型の看板に導かれ階段を上るとThe昭和の喫茶店といった感じの扉が。開けて入ると、まずは音の塊に包まれ、オレンジ色の灯りの仄暗い店内にレコードがずらっと並び、さまざまなポスターの貼られた棚が目に入る。その右側にカウンター席、左奥にソファ席が広がり、ソファ席側の天井はレコード盤やポスター、ニュースペーパーなどで覆われていた。

たまたま外国人のグループがいたこともあり、一瞬日本ではないような感覚に。奥にドンと構えたスピーカーと、そこかしこに飾られた楽器モチーフの装飾やミュージシャンの写真に、ここがジャズ喫茶であることを実感する。

創業は1956年だが、8年前に現在のオーナーである吉久修平さんが先代オーナーより引き継いだ。学生時代に友人がここでアルバイトをしていた縁で通うようになり、それまでロックばかりを聴いていたのがジャズへ傾倒していったという。

ソファ側に創業からあるAlter A7に加え、カウンター側には吉久さんが新たに選んだJBLのスピーカーが棚の上に設置され、ライブ感あふれる音を聴くことができる(曲終わりには思わず拍手しそうになる)。
“爆音で聴くジャズが心地いい”とジャズ喫茶ならではの楽しみ方をしっかり引き継いでいるのだ。

所蔵レコードは3,400〜3,500枚にもなるが、継承後もこまめにレコードの買い付けを行い、昨今グラミー賞でも注目を集めるニュージャズを中心に新たなジャズの魅力をも伝えている。選曲は吉久さんの「思いつき」とのことで、九割九分はインスト(歌のない楽器演奏曲) 。3か月に1度くらいの頻度でライブ演奏もある。

創業時は米兵が生演奏をしていたというだけあって、外国の方も多いというが、最近は観光客も多いという。

喫茶だけにコーヒーにはこだわりがあり、ブラジル産の豆をシングルで使い、1杯ずつ豆から挽いて、ネルのハンドドリップで丁寧に入れる。カウンターにいると、コーヒーの匂いが漂ってきてほっこりする。

また、「ダウンビート」はBarと言えるほどお酒のラインナップが豊富だが、吉久さんはお酒が一滴も飲めないそう。お客さんのリクエストで新しいお酒を入れることもあるとか。

フードもコーヒーに合うケーキ(「dbチーズケーキ」ベリーとチョコのハーモニーが絶妙!)や、お酒に合うおつまみ(「ナンピザ」は必食)が揃っている。

夜はお酒を飲む方が多いというが、お昼間は半々くらい。お一人でくる常連も多く、注文以外は一言も話さず、自分の時間を満喫して帰られる。何年も通っているのに名前も知らない常連さんも多いのだとか。「自分がフレンドリーじゃないんで」と吉久さんは笑うが、そのほったらかし感がとてつもない居心地の良さを生んでいる気がする。

同行の編集者が「(爆音だけど)自分の世界に没頭できる。ここで仕事をすると集中できて捗りそう」というと「大歓迎」とのこと。カウンターの上や向かいには本棚があり、ジャズ関連や野毛関連をはじめさまざまな本が並ぶ。爆音の中で読書も一幸。

ジャズ好きも、ジャズ初心者も自分時間を存分に楽しめる1軒だ。

down beat ダウンビート
場所:神奈川県横浜市中区花咲町1丁目43
営業時間:16時~23時30分 月曜定休


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