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演劇・ダンス

知らないなんて、もったいない!

知らないなんて、もったいない!

知的ハンディがある人たちのパフォーミングアーツの世界
内海智子(NPO法人ドリームエナジープロジェクト理事長)

■コロナに負けるな!オンラインコンサート開催
「素敵な出逢いコンサート」は2020年3月21日、「世界ダウン症の日」に開催予定だった。
ダウン症のある人のピアノ演奏、独唱、そしてハープ演奏のコラボコンサートと、知的ハンディがある人たちによる演劇や歌などを上演する予定だったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で5月に延期。それもままならなくなり「秋以降に」という案もあったが、オンライン・コンサートとして開催することにした。
ITオンチの私としては、ずいぶんと果敢な挑戦だった。

私が代表を務めるNPO法人ドリームエナジープロジェクト(通称ドリプロ)では、知的ハンディがある人の学びと体験の場をつくったり、「お仕事体験」を支援したりしている。また、活動の一つの柱として、知的ハンディがある人の演劇やコンサートを開催してきたが、オンラインのコンサートなどは初めて。何をどうしたらよいのかまったくわからなかった。
有料音楽配信サイトの利用も考えたが、IDやらパスワードが必要で、私のようにITに不慣れなお客様は、途中で断念してしまいそう! そんな気がして、やめた。
YouTubeで「公開」することも考えたが、ひっかかることがあった。
それは、ネット上で誹謗中傷のターゲットにされないか、という不安。
彼らが一生懸命に取り組んでいることに対して、匿名かつ無責任な一言が彼らの「表現したい」という気持ちを失わせてしまっては元も子もない…。そんな心配から、10月中は視聴希望をいただいた方にのみ視聴URLを送る、無料での限定配信という方法を取った。


清水麻由さん 演奏曲「ひまわり」「ワルツ第 10 番ロ短調(ショパン)」「子犬のワルツ」

「素敵な出逢いオンラインコンサート」のプログラム
第1部 ダウン症のある人のピアノ演奏、独唱、ゲストのハープ演奏
第2部 知的ハンディがあるメンバー11人による、オンラインコンサートを見てくださった方へのメッセージ


内海隼吾(筆者長男) 独唱「地上の星」「昴」

会場は藤沢市内のサロンコンサート会場を兼ねたフレンチレストラン。もともとは、お茶とケーキ付きのコンサートを予定していたが、残念ながら無観客。


ハープ演奏 八木健一さん 演奏曲「ロンドンデリーの歌」「荒城の月」「ケルトメドレー」「引き潮」

コンサートの後半は、ドリプロメンバーたちがひとりずつ特技やメッセージを伝えた。 コロナ感染が心配で会場に来られないメンバーには、家でダンスや詩の朗読などを録画したものを送ってもらい、編集した。

視聴していただいた方からの感想。(一部抜粋)
●発表の時の皆さんの凛とした姿が印象的でした。見てもらいたい、伝えたい、というハッキリとした意志を感じました。そして、その気持ちが相手に伝わるようにはっきりと話すことに繋がっていました。伝えたいという気持ちを持つこと、の大切さを感じました。
●それぞれの個性が発揮されていて、楽しませていただきました。ハープも素敵でした。自分を表現することと、表現をする場があることは、とても大切だと思います。イベントや発表会を開く事が難しい今ですが、皆様のご努力によって手法を工夫されて開催されたされた事に敬意を表します。

現在このコンサートは、ドリプロのホームページを訪れていただければ観られるようになっている。

■知的ハンディがある人のパフォーミングアーツ

演劇や音楽、ダンスなどの舞台芸術は「パフォーミングアーツ」とも呼ばれる。身体に障がいのある方のパフォーミングアーツというと、リオパラリンピック閉会式で登場した義足のダンサーに感動された方も多いだろう。
だが、知的ハンディがある人のパフォーミングアーツについては、まだあまり知られていないのではないだろうか。

知的ハンディがある人たちの絵や塑像などのアートは、その独特の味わい、素晴らしさが知られている。


*小田原で活動するアール・ド・ヴィーヴル所属の野々村聡眞さんの絵、タイトル 「ワニトカゲ」

大河ドラマ「平清盛」のオープニング題字を書いたダウン症の書家金澤翔子さんをご存じの方も多いと思う。

実際、知的ハンディがある人たちが演劇や音楽、ダンスに取り組んでいる団体は、ドリプロも含めていくつもある。
メディアで取り上げられたり、海外で賞を取るような素晴らしい活動をしている団体もあり、私が言うのもおこがましいのだけれど、彼らのユニークなパフォーマンスをもっともっと知ってほしいという気持ちで言うなら

知らないなんて、もったいない!

私たちドリプロの活動、そしてパフォーミングアーツに取り組む神奈川ゆかりの団体や海外の情報など、その一端を紹介したいと思う。

■ドリプロの演劇とコンサート

ドリプロでは、2012年から、プロのミュージシャンと知的ハンディがある人との「インクルージョンライブ」を、東京のライブハウスで開催してきた。2016年、2017年、2019年には「21番目の素敵な出逢い」という音楽と演劇の舞台公演、2018年には四谷区民ホールで「素敵な出逢いコンサート」という音楽イベントを開催した。

この写真は、2019年8月、神奈川県の「共生共創事業」の一環として県民共済みらいホールで開催された演劇「21番目の素敵な出逢い」のワンシーン。出演者のほとんどは、ダウン症や自閉症など知的ハンディがある若者たちだ。

ダウン症のある人は、声が小さかったり滑舌が悪かったりして、言葉が聞き取りにくいところがある。
2015年、演劇をやりたいと思って脚本を書き始めた当初は、実際に彼らがセリフを語るのはむずかしいかもしれないと思い、構想段階ではナレーションに合わせて身振り・手振り・表情で伝える「ナレーション劇」を考えていた。ところが、練習を重ねていくうちに、彼らはセリフを言いたくてうずうずしだし、ナレーションそっちのけで語りはじめた。はじめは顔を上げられなかった子がしっかりと前を向き、モゴモゴと何を言っているのかわからなかった子のセリフが聞き取れるようになり、気がつけば一人ひとりが舞台で元気いっぱいにセリフを語り、演技をしていた。

彼らには知的にハンディがある。
理解力が不足していたり、集中することが難しかったり、気持ちをうまくコントロールできないなど、程度も人によって様々だ。

練習でも本番でもいろいろなことが起こる。
練習中に“かたまる”こと(動きも言葉もなく反応しない状態)、自分の世界に入ってしまうことはよくある話。
トイレに立てこもって出てこなかったり、セリフを勝手に替えて言いやすい節をつけてしまったり、リハーサルが始まる前、気持ちのコントロールができなくなって会場事務所の机の下に隠れたり。
本番の朝、母とはぐれて街で迷子になるは、本番中でもトイレにかけこんで出番に出遅れるは…。

あんなこともこんなこともたくさんあるけれど、ともかく自分が好きなことには信じられないほどの力を発揮する。
楽しいことには無条件に正直だ。
表現することが大好きで、表現することが楽しいから、がんばれる。

知的障がいというと、「できないことが多い」「よくわからない」といったイメージで捉えられがちだが、ちょっとした発言やしぐさや行動に笑わせてもらったり、逆に「すごい!」と思うことがあったりする。
私たちとの違いなどそうないし、「障がいって何なんだろう?」と考えさせられる。

俳優の常盤貴子さんは、こうした彼らに思いを寄せて、ボランティアで参加してくださっている。

公演終了時のアンケートには、毎回びっしりと書いてくださる方が多い。
2019年の公演時のアンケートから抜粋。
●皆が大好きなことをがんばってやっていることにとっても感動しました。私は人の目を気にしすぎてストップをかけてしまうことが多く、彼らが心から楽しんで演技していることに感銘を受けました。
●生まれてきたことの幸せがいっぱいつまった演劇でした。今までもこれからも辛かったこと、苦しいこと、多くのことを経験してこられたと思いますが、相手を思いやりいつくしみ愛する優しい心を持ち続けてほしいです。私もたくさんの気づきをいただきました。
●生まれてくることの意味を考えさせられる内容。そして出演者のみなさんがしっかりと演技しながらそれぞれの個性が見えて素晴らしい。

また、コンサートについては、冒頭に書いたオンライン・コンサートが2回目になるのだが、2018年に開催した1回目の「素敵な出逢いコンサート」は、ダウン症のあるパフォーマーたちと自閉症のあるパフォーマーたちの共演がメインのコンサートだった。
障がいの違いがそれぞれ音楽の独自性を生み出していて、とても興味深かった。
ダウン症のあるパフォーマーたちは、優しくてほんわかしたところがあり、それが演奏にも出ていた。その上で、それぞれが抱える障がいゆえの困難さをもって演奏に臨む。
心臓にペースメーカーを入れていたり(TOSHIKIさん)、左の耳が聞こえていなかったり(隼吾)、凜太朗さんは生まれつき右手首先が欠損しているため、左手指5本と右手首の“6本”でメロディーを奏でる。


トランペット演奏 TOSHIKIさん

ピアノ演奏 清水麻由さん

独唱 内海隼吾


ピアノ演奏 鈴木凛太朗さん

一方、自閉症のあるパフォーマーたちはみな小さいころ多動で落ち着きがなく、こだわりも強く、日常生活の ルールを覚えるのも大変だったという。
ただ、「音楽を聞いているときだけおとなしかった」というお母様方の気づきと環境作りにより、才能を開花させた。 好きな音楽への集中力はずば抜けていて、演奏や歌には情熱があふれ、ダイナミックな勢いがある。
例えばピアノ演奏。ダウン症のある麻由さんや凜太朗さんのピアノ演奏が優しく情感があふれるているのに対し、自閉症のある拓人さんのピアノ演奏は、鍵盤の上を指が楽しげに踊っているようなはじけるリズム感があり、ダイナミックで心の奥に響く重奏感を感じた。


ピアノ演奏 小柳拓人さん


ヴァイオリン演奏 本間惟彦さん フルート演奏 小柳拓人さん


独唱 神谷たえさん

コンサートでは多くの反響があった。
大きな鳴り止まない拍手、涙する人、「感動した」というたくさんのアンケート。
しかし知的なハンディがあることで、人よりもリズムやテンポが安定しないこともある。
隼吾など、「上手い」とはお世辞にもいえない。どうしても音が外れる。
では、お客様は何に拍手を送ってくれたのだろう?
「上手く見せようという気持ちがないから逆に心にストレートに響いてくるのではないか」と言ってくれた人がいた。
確かに、みんな言葉で自分を表現するのが難しい分、曲や歌にありのままの自分を込める。

1曲をマスターするのに計り知れない時間がかかったり、正確さを極めることが苦手だったりするかもしれないが、そうしたことを凌駕する熱い思いがある。
駆け引きのない飾らない素の自分を、精一杯出し切る素直さがある。
あふれ出るひたむきさがある。
それが聴く人の心を動かすのではないか。
弱さの中の強さ・・・。
私たちは「マイナスをプラスにする」と一言で言ってしまいがちだが、様々な困難を抱えながら努力を重ねてきたこと、あきらめずに歩んできた道のりが、演奏や歌などのパフォーマンスににじみ出る。それは演劇やダンスにも言えることではないだろうか。
そこが知的ハンディがある人のパフォーミングアーツの魅力の一つではないかと思う。

会場に観に来てくださった歌手の水越けい子さんは、ご自身のブログでこう書いてくださった。
「ピアノ演奏、バイオリン、トランペット、フルート、そして独唱。一人一人の演奏、歌が私の心の奥の奥まで 届いて途中ウルウルしてしまいました。(中略)どの曲も皆さんが自分のものにして、一人一人が表現者として、それを裸の心で私達に投げかけていました。 (中略)私も母親として、音楽を演る人間として、また一人の人としていろいろ感じ、何事にも大切な原点も感じ、貴重な時間をいただきました」

■神奈川にゆかりのパーフォーミングアーツに取り組む団体

[ラブジャンクス]

発表会はいつも熱気にあふれている

ラブジャンクスは、ダウン症のある人のためのエンターテインメントスクール。
関東・関西・北海道にスクールがあり、総勢800人が所属している。


横浜ラポールでレッスンするラブジャンクス神奈川校のみなさん

「ダウン症のある人たちは、感じた事をストレートに表現することに秀でていると感じます」と語る主宰の牧野アンナさんは、2002年に公益財団法人日本ダウン症協会から依頼されてダウン症のある子たちにダンスを教えたことをきっかけに、彼らの人を惹きつける力、感性の高さに魅了されてラブジャンスクを立ち上げた。

わが子が生まれた26年前には、ダウン症のある人がテレビに出ることなどほとんどなかった。テレビや各地のイベントに数多く出演するラブジャンクスの活動は、ダウン症のある子を育てる親の励みになっただけでなく、ダウン症を知らない人たちにその元気な秘めたパワーを知らしめる大きな存在になった。プロのダンサーの指導や振付を行うアンナさんが、ダウン症のある子たちのダンスの魅力を語る言葉は力強い。
「踊ることを思いっきり楽しめるその姿は、人の心を打ち、原点を思い出させてくれます」

[ホットジェネレーション]

障がいの有無を超え、プロのミュージカル俳優らとともに年3回オリジナルミュージカル作品を上演しているホットジェネレーション。
主宰の鳥居メイ子さんは、知的ハンディがあるメンバーについて「純粋無垢な魂が紡ぎ出す、優しさと美しさが溢れるパフォーマンスは、この上ない癒しと勇気を与えてくれる」と語る。

多くの作品で主役を務める自閉症のある神谷たえさん(舞台最前列)の歌声は、天から舞い降りたような響きを持つ。
高校生のときからたえさんを指導をしている鳥居さんは言う。
「安定した情緒で稽古に臨めていない時もあるが、どこまでも相手の可能性を信じ抜くことが大事」
見えない苦労があるからこそ、舞台でたえさんは障がいを感じさせない堂々たる姿で輝いている。


湘南台文化センターで練習するホットジェネレーション神奈川校のみなさん

ホットジェネレーションとは縁があって、20年ほど前、神奈川にも支部をつくってほしいと鳥居さんにお願いして神奈川校を立ち上げ、仲間である障がいのある子のファミリーとともに、子どもが笑顔でいられる場所をつくろうと取り組んだ。
7年前にドリプロの設立のために卒業したが、障がいのあるなしを超えインクルージョンそのものの活動には大きな意義があると思っている。

[サルサガムテープ]

「サルサガムテープ」は、ミュージシャンのかしわ哲さんが中心となり、知的障がいのある人たちと結成したロックバンドだ。

県内の福祉施設で活動を始めて26年。
知的ハンディがある人たちがエンタテイナーとして歌い、演奏し、盛り上がるエネルギーはものすごい。
「津久井やまゆり園」事件をうけてかしわさんがつくった「ワンダフル世界」では、怒りと希望が渦を巻いて爆発している。
今年1月のサルサガムテープのライブにはドリプロのメンバーも呼んでいただき、この歌をいっしょに歌った。舞台と会場とが一体となり、大合唱になった。
「幸せになるため生まれて来たんだ!生きていることが大好きなのさ!」
知的な障がいのあるメンバーが心の底から叫ぶその姿は、会場のすべての人の心にしっかりと刻まれたはずだ。


かしわ晢さん(後ろ)の創作エネルギーは70歳を超えた今も衰えを知らない

コロナ禍でライブはすべて中止。ただ11月に開催された無観客のオンラインイベントで久々にライブ。
また、かしわさんは、コロナ禍で会えない人たちの心をつなげたいと新曲『アイタイ!』も作った。
「ただひたすら楽しいから私たちは毎日ロックンロールしています。その楽しさが他の誰かにも染みて分かち合えたらさらにさらに楽しくなる。世界でいちばん平和な分かち合い!!」
というかしわさんのメッセージ通り、どんな状況でも生き抜いていくというロックンロール魂が息づいている。

社会の閉塞感を打ち破るパワーのある公演をされているところばかりだが、もちろんこの他にも信念を持って活動されているところがいくつもある。

■海外の情報

最後に、海外の情報を少し。
パフォーミングアーツの分野とはちょっと違うが、海外では、ダウン症のある人が20年以上も前からテレビや映画に出演するなど数多く活躍している。

1996年、『八日目』という映画にW主演のひとりとしてキャスティングされたダウン症のある俳優パスカル・デュケンヌさんは、カンヌ国際映画祭において最優秀男優賞を受賞するという快挙を成し遂げた。
1997年には日本でも公開されたが、私はこの映画をみてダウン症のあるわが子を育てる勇気をもらった。

全米で大ヒットしたドラマ『glee/グリー』には、ベッキー役でダウン症のあるローレン・ポッターさんが出演している。2012年にはNHK Eテレで放送されたのでご存じの方もいらっしゃるだろうが、田舎の高校を舞台に落ちこぼれの高校生たちが巻き起こす歌ありダンスありの青春ドラマで、ベッキーはチアリーディング部の一員として登場。仲間も先生も、ダウン症がある彼女を普通に受け入れている。特別扱いすることなく、一人の仲間、同じ生徒として自然に接しているアメリカの文化に、俳優として他の役者に負けない演技をしている彼女をすごいと思うのと同じくらい驚き、そしてあこがれた。

*参考:ドラマ『glee/グリー』予告映像

そして、今注目をあびているのが、映画『チョコレートドーナツ』。2014 年に公開され、社会の偏見と闘いながらも自分らしく生きようとするルディとポールに泣かされたこの映画に、マルコ役で出演しているアイザック・レイヴァくんもダウン症のある俳優だ。

*参考:映画『チョコレートドーナツ』予告映像

2020年12月には宮本亜門演出/東山紀之主演の演劇として、日本で『チョコレートドーナツ』が上演される。そこには、実際にダウン症のある少年がマルコ役として出演している。

海外で知的ハンディがある人がテレビや映画に多く出演するのは、演劇の養成所があり、プロダクションがあることも大きいだろう。ロサンゼルスには知的ハンディがある人たちのための芸能プロダクションがあり、見学させてもらったことがある。多くの知的ハンディがある人が、そこからテレビや映画に出演している。日本でも医療ドラマとして人気だった『ER 緊急救命室』の300回記念番組に、ピーター・フォンダの息子という重要な役でダウン症のある俳優が出演していた。

さらに、海外ではダウン症のある女性がモデルとして活躍している。
2020年6月、世界のファッション界を牽引する高級ブランド、グッチ(GUCCI)がイタリア版「VOGUE」の広告にモデルとして起用したのは、イギリス人のエリー・ゴールドスタインさん。
10月には世界的なスキンケアブランド「Obagi」が、グレース・ストローベルさんをモデルとして起用することを発表した。

この数年の間に多くのダウン症の女性がモデルとして大きな舞台に立っている。世の中が「多様性を重視したその人らしい美」へ向かっている、ということだろう。

日本でも、元パリコレモデルの高木真理子さんが知的ハンディがある人たちのモデルの養成に努力されている。日本からダウン症のモデルが世界へ飛び出す日は、そう遠くないかもしれない。

■最後に

映画『八日目』との出逢いからダウン症と演劇に関心を持ち、20年以上知的ハンディがある人たちの演技や歌、ダンスにおける可能性を信じ、また活動に取り組んできた。
素晴らしい活動をされている方々は他にもおられるなかで、おこがましい内容になってしまったかもしれないが、ひとりでも多く、彼らのパフォーマンスに興味を持っていただけたらと筆を進めた。
来年のオリンピックパラリンピックに向けて、またそのレガシーとして、知的障がいに限らず、障がいのある人のパフォーミングアーツが日本に根付いてほしい。
「彼らのパフォーマンスを観たいから」
「独特な個性が楽しいから」
「面白いから」
そんな動機から知的ハンディがある人たちの演劇やコンサートやダンスライブに行きたいと思う一般のお客さんが増え、満席になるような社会になってほしいと、心から願う。

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