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文化・歴史

【かながわ伝統文化こども歳時記】津軽三味線奏者にしてDJ、DJ帝さんに聞く日本の伝統文化

【かながわ伝統文化こども歳時記】津軽三味線奏者にしてDJ、DJ帝さんに聞く日本の伝統文化

神奈川県に受け継がれてきた伝統文化に触れられる「令和6年度 かながわ伝統文化こども歳時記」が神奈川県立青少年センターで2024年10月26日(土)に行われました。今年はクラブやディスコで大人気、FMヨコハマの番組にもレギュラー出演中のDJ帝(みかど)さんが登場。ミカド雅峰(まさみね)名義で津軽三味線を奏で、民謡アンバサダーとしても活動するマルチな一面とこれまでの歩み、民謡の魅力について伺いました。
( 2024年10月8日 神奈川県立青少年センター紅葉坂ホールにて)

民謡の家元に生まれて、DJになるまで

―幼い頃から民謡、唄、太鼓、三味線の稽古をしてきたということですが、どのように育ってこられたのでしょうか。

DJ帝 祖父が民謡の千鳥流江差軒の初代家元のミカド錦濤(きんとう)です。母が2代目ミカド錦涛(きんとう)として、横浜市保土ケ谷区で教室を開いており、私も幼い頃から民謡に触れてきました。津軽三味線は声変わりをするタイミングで始めました。みやびな雰囲気のある細棹(ほそざお)の三味線と違い、弾けるような響きの津軽三味線に魅了されました。

夢中になって練習し、半年後の1998年、公益財団法人日本民謡協会主催の津軽三味線コンクール全国大会に出場して少年部で銀賞を受賞。2000年のNHK紅白歌合戦では三味線で演歌歌手のバック演奏をさせていただきました。その後、ヒップホップが好きになり、クラブで働いているDJ(ディスクジョッキー)に憧れを持ち、10代でDJになりました。大学に通っているときも、常に自分のそばには音楽がありました。

DJ帝さん こども歳時記の会場、神奈川県立青少年センター紅葉坂ホールで

―DJはどういう仕事ですか?

DJ帝 DJにもいろいろな種類がありますが、クラブDJは場の雰囲気を読んで、お客さんがリズムに乗っている足を止めないように、音楽をつなぎながら流し続ける仕事です。盛り上がって楽しむお客さんを見るとうれしいですね。夜の仕事なので朝はつらいですが、各地のクラブやディスコ、バーでDJとして出演しています。

人の縁に導かれて、FMヨコハマの番組「PRIME TIME」に木曜レギュラーとして出演するようになり、7年になりました。一方で、日本民謡協会公認の民謡アンバサダーでもあり「ミカド雅峰」として母の教室で三味線を指導、また民謡大会などのイベントで演奏もしています。

民謡の魅力とは

―民謡というと日本の伝統の世界、昔ながらの雰囲気を感じます。民謡にはどのような魅力がありますか?

DJ帝 民謡は人々の生活の中に根付き、歌い継がれてきた音楽。聞けば昔の人の生活や心情がわかります。例えば、今回のこども歳時記で、 みんなで歌う「箱根馬子唄」の歌詞には「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」とあります。

箱根八里とは、神奈川県の小田原から静岡県の三島までの八里の道のりのことです。当時の大井川は、江戸や駿府城への敵の進軍を阻止する自然の守りであったため、あえて橋が架けられておらず、船で渡ることも禁じられていました。川を越えたい人は、肩車に乗るか、輿(こし)に乗って渡るしかなく、大井川が雨で増水していると、何日も渡れないまま水が引くのを待ったそうです。そういう意味で「越すに越せない大井川」と歌っているのです。

民謡を知ると厳しい自然環境や関所を通る難しさなど、そうした情景や景色が脳裏に浮かびます。声の出し方や節回しが独特で、どこか懐かしいような旋律なのも魅力です。

DJ帝さん 通る声で朗らかに、丁寧に答えてくださいました

「こども歳時記」に向けて

―こども歳時記ということで、民謡と盆踊りを子どもに体験してもらいますね。子どもに関わるということで、特別な思いがあったらお聞かせください。

DJ帝 最近、自分の活動の場がナイトシーンから、子どもに関わるステージへと移ってきました。子どもは真っさらで素直、純粋で爆発的なパワーがあります。民謡に触れることで、子どもに持ち帰ってもらえる感動は必ずあると思っています。どんな反応があるのか、私も楽しみです。

当日、郷土のうたである民謡を教えるのは、日本民謡協会で青少年部副部長の清野明子さん。私は清野さんに小学4年生の頃から太鼓を習っていた一番弟子で、清野さんは子どもへの指導のプロフェッショナル。声を思い切り出す気持ちよさを感じてもらいたいです。

―それは楽しみですね。

DJ帝 盆踊りに関しては、私は数年前から神奈川県海老名市の祭りにDJとして参加し、曲を流しています。昨今、盆踊りの位置づけが伝統的なものから現代的なものへと全国的に変わってきているのを感じます。炭坑節も踊るし、ポップスをかけて自由に盛り上がる。地元の子どもたちが自然体で楽しむ笑顔を見て、歓声を聞くと幸せを感じ、盆踊りや祭りは自分の活動の大事な軸になりつつあると感じています。

今回の盆踊りには、東京オリンピックの閉会式で東京音頭を踊った日本民踊 鳳蝶流家元の鳳蝶美成(あげはびじょう)さんも関わります。盆踊りに関する新しい流れを感じてもらえるようなイベントになると思います。参加した方が、思いっきり楽しめるように盛り上げます。

提供:かながわ伝統芸能祭実行委員会

DJ帝・ミカド雅峰
公式X:こちら 
公式Instagram:こちら 

プロフィール
1984年生まれ、横浜生まれ、横浜育ち。
湘南工科大学附属高等学校、亜細亜大学経営学科卒業。
母が民謡教室の千鳥流江差軒家元で、幼い頃から唄・太鼓・三味線の稽古を重ねてきた。1998年津軽三味線コンクール全国大会少年部銀賞受賞。紅白歌合戦でのバック演奏も経験。
2002年にヒップホップのDJとしてキャリアをスタート。横浜のクラブ・ディスコ・バーで活動中。幅広い選曲ときれいなMIXが持ち味。
FMヨコハマでDJとして「PRIME TIME」に木曜にレギュラー出演中。日本民謡協会公認の民謡アンバサダーとしての顔もあり、イベントで民謡に合わせて三味線や尺八の演奏をする。

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