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2019.08.07

聴いてよし! 観てよし! 県立音楽堂で前川建築のモダニズムを堪能

神奈川県立音楽堂 

行って、みて、感じるアートの世界
File.17 前川建築見学ツアー in 音楽堂
井上みゆき(マグカル編集部)

神奈川県立音楽堂———通称「木のホール」。
クラシック音楽ファンなら知らない人はいないと思うが、近頃の建築ブームで新たなファンが増えている。
設計は前川國男。そう、建築界の巨匠 ル・コルビュジエの元で学んだ、日本を代表する建築家だ。
難しいことはさておいて、とにかくスタイリッシュでかっこいい!
開館65周年とリニューアルオープンを祝って「前川建築見学ツアー」が行われると聞きつけ、いそいそと出かけてみた。

まずは黄色いフレームが印象的なエントランスから。
バルコニーの壁は、お隣の県立図書館とお揃いの「ホローブリック」。機能的にもすぐれた設計らしいのだが、音楽堂に採用したのはデザインの統一性からと思われる。なので、詳しくは昨年のレポートをご覧あれ。
*図書館建築ツアーのレポートはこちら>>

前川の色へのこだわりが一目でわかるのが、エントランスの中。前川は「建築家にならなかったらペンキ屋になりたかった」と言うほど“色”にこだわりがあったという逸話に、大きく頷く。
広い空間ではないけれど、華やかでインパクトのある色使いが気分を盛り上げてくれるので、音楽堂の玄関にふさわしいデザインなのかも。

前川建築らしさを感じるのは、明るく開放的なホワイエ。
整然とそそり立つ柱は、コンクリート製なのにどこか気品があり、エレガント。よく見ると木目が付いているが、これは、木の板で作った枠に、手でこねたコンクリートを流し込んで作っているからだとか。今から思うと超アナログな工法だが、この時代のコンクリートは現代よりはるかに強く、美しくできているそうだ。
床面は「テラゾー(人造石研ぎだし)」と呼ばれる、こちらも手作り感溢れる工法だが、65年の歳月を経てなお劣化を感じさせない。

昨年から1年2カ月かけて改修工事を行い、美しくよみがえった音楽堂だが、今回のコンセプトは「65年前の姿に戻すこと」。なので、照明器具も創建当時のまま。もっとも、光源はLEDに変更しているので、環境への配慮は怠りない。
ちなみに、天井が階段のようにガタガタしているのは、この真上に客席があるから。2階座席の勾配に合わせて、ゆるやかな階段状になっている。

というわけで、ホールの中へ。
音楽堂は、ロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールをモデルとして設計された。規模はだいぶ小さいけれど、最前列から最後列までずーっと段床なので、どの席からも舞台がよく見えるのがうれしい。
音響設計を担当した石川聖光によると、2階バルコニーなどの“出っぱり”がないことも、音の響きにメリットがあるそうだ。

「木のホール」という愛称からもわかるように、舞台上の反響板をはじめ、客席の壁や天井もすべて木でできている。波のようにウェーブしている天井も、もちろん木製。
戦後間もない時期だけに「木」以外の選択肢が難しかったという事情もあるようだが、熟考と工夫を重ねることで、結果として世界のミュージシャンから「東洋一の響き」と賞賛される音を生み出したのだから素晴らしい。

2階席後ろの壁にも注目!
穴の空いた板が屏風のように折れ曲がっている。これも音が必要以上に反響しないための工夫。この壁もしっかりクリーニング&再塗装されて、見違えるほど上質なイメージに…。

舞台袖の奥にある楽器庫も見学。デリケートな楽器を守るために、室内の温度・湿度は常に一定にコントロールされている。つまりここは「音楽堂の中でいちばん居心地のいい場所」。

こちらは舞台裏の控え室。真ん中にコンクリート柱が立っているのはなぜ…? と思ったら、ここは後から増築されたスペースなのだとか。つまり、屋外に立っていた柱を取り込んでしまった、ということ。なんとなく、手作り感満載。

音楽堂は何度も訪れたことがあったけど、緞帳を見たのは初めてかも。「必要なのか?」と言ってはいけない。これには深いわけがあるのだから。
音楽堂が計画されたのは戦後間もない時期。議会の一部からは「食べるものにも困っているのに音楽堂とは何事か」という声も上がっていたらしい。そうした声を説き伏せるために「みんなが使える公会堂」として話を進めた結果、緞帳や映写用スクリーンなどの劇場設備も付帯することになったのだとか。
とはいえ、緞帳も前川デザイン。今回は当時の資料を元に新調したそうなので、機会がればぜひ近くで観てみて。

図書館で椅子をデザインしたように、前川は音楽堂に必要な什器もいろいろデザインしている。例えばポスターの展示ボード。機能的でモダンなデザインは、ミニチュアにしてデスクの上に飾っておきたいくらいステキ。

見過ごしていたけれど、譜面台や演奏家が座る椅子も前川デザイン。無駄のないシンプルな椅子は、おしゃれなカフェにも似合いそう。

最後に、お客さんが去った後のホワイエを振り返ってみる。
いつもはコンサートの高揚感、非日常的なドキドキ感に包まれているホワイエが大好きだ。
でも、コンサートのない日の、音のない音楽堂も幸せだな…と思った。


ご案内いただいた、ボランティアグループ bridgeの皆さん。「楽しむ」「学ぶ」「つなぐ」を3つのキーワードに、地域の文化やアートに親しむ活動として、建築ツアーなどを実施しているそうです。
ありがとうございました!

 

「前川建築見学ツアー in 音楽堂」は、今後も開催されます。
今回参加させていただいたのはフルコース(約60分、参加費500円)。
約20分間のショートコースは事前申し込み不要、無料で参加できるので、気軽におでかけください!

【今後の予定(2019年)】
<フルコース>
10月12日(土)10:00開始 *9月12日(木)10:00よりHPにて募集開始
※同日開催 音楽堂でルネサンス マルシェ&コンサート 10:00~夕方
<ショートコース>
①9月29日(日)14:00開始
②11月30日(土)14:00開始
③12月15日(日)13:15開始
*詳しくは特設ホームページへ

    神奈川県立音楽堂は、1954年、公立施設としては日本で初めての本格的な音楽専用ホールとして開館しました。ロンドンのロイヤルフェスティバルホールをモデルに、最高の音響効果をあげるように設計されたホールは、開館当時『東洋一の響き』と絶賛され、その響きは今も国内はもちろん海外からも高い評価を受けています。ホールの壁面はすべて「木」で作られており、そのアコースティックな響きは開館から60年を経た今でも人々に感動をあたえつづけています。また、地域に根ざした優れた公共施設として1998年に建設省より「公共建築百選」に選ばれ、加えて1999年には20世紀の重要な文化遺産である建築としてDOCOMOMO(ドコモモ)(近代運動にかかわる建物・環境形成の記録調査および保存のために設立された国際的組織)より「日本におけるモダン・ムーブメントの建築20選」に選ばれました。

    • Address
      9-2 Koyogaoka, Nishi-ku, Yokohama-shi, Kanagawa
    • TEL
      045-263-2567
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      It depends on the performance. [Reception hours] 9:00 to 17:00 (Ticket counter 13:00 to 17:00) [Closed days] As a general rule, every Monday and New Year (12/28 to 1/4)

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