舘形比呂一のDanceable LIFE Vol.5
自分らしい歌を探し求める“舘形ワールド”
舘形比呂一(役者・ダンサー・振付家)
先日、歌とダンスのライブをやりました。スペース的な制約もあり、大きな動きができないため、メインは歌。もちろん、ザ・コンボイ・ショウの舞台では踊りも歌もやっていますが、歌メインでソロ・ライブやるようになったのは3年ほど前からのことです。それ以前にはまったく考えられなかった…というより、歌はすごく苦手でした。コンプレックスがあるから歌に対して恐怖心があり、歌う事がとても怖かったんです。とにかく嫌で嫌で…。
でも、コンボイは歌わなくてはいけない。それも、人数が多いからハモらないといけない。はじめは音が取れなくて、ハモるなんて至難の技。それが、無理やりでも歌っているうちに少しずつ楽しくなって、音も取れるようになり、ハモれるようになり、するとみんなで歌う楽しさがわかってくる。踊りや芝居もそうですが、何事にも不器用な僕は、いつもコンプレックスからスタートするみたいですね(笑)。
とはいえ、歌メインでライブをやるなんて、考えたこともありませんでした。背中を押してくれたのは、ピアノ&エレクトーン奏者の仁科愛さん。プライベートなイベントで歌を企画し、その伴奏を仁科さんにお願いしたことがきっかけでした。
「大切なのは歌い慣れること。そして生バンドで歌うこと。下手でも、人前に立って歌っていけば絶対に上手くなるから」
歌が上手くないと言って甘えている場合ではない−−−そう諭された気がしました。以来、ベースやドラム、パーカッションも加えた生バンドと一緒に、歌のライブに挑戦しています。
もちろん、基礎を学ぶことは重要です。声の出し方、口の開き方などをきちんと習うことで音程が安定し、楽に歌えるようになります。その甲斐あってか、最近は「こう歌ったら面白いだろうな」と考えることも増えてきました。
僕は決して器用なダンサーではないので、踊りに関しては独自の世界観、いわゆる“舘形らしさ”を表現することを目指してきました。
歌も同じことです。
より自分らしいもの、自分ならではの説得力を身につけるために、上手に歌うのではなく、自分らしい歌を歌えるようになりたいと思っています。
若い頃はテクニックを身につけることに必死でした。それは絶対に必要なことだったと思いますが、年齢を重ねるに従い、求められるものは変わります。僕の場合、せっかく歌や芝居も学べる環境にいるのだから、踊りだけに固執するのはもったいない。様々な要素を混じえた方が、より幅広く、息の長い活動ができると思うようになりました。
まだまだ勉強中の身ではありますが、最近、自分の世界観を表現するにあたって「歌」「踊り」「お芝居」の境界線がなくなってきた気がしています。