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Double Planet 第4話
演劇・ダンス 音楽
2020.04.15

Double Planet 第4話

Double Planet
第4話「犬だと思って育てていた動物が実は猫だった」
田丸ルカ(フルタジュン&神田陽太/レディオ湘南パーソナリティ)

 

こんな新学期になることを、一体誰が予想した?私の高校二年生が始まったのかどうかもあやふやのまま、春休みからダイレクトで5月6日まで臨時休業になった。気持ちだけが宙ぶらりんで、時間だけがどんどん先に進んでいく。夏休みはあんなにもワクワクできたのに、この臨時休業は全く嬉しくない。コロナに青春時代の一部を奪われてしまった。大して青春を謳歌してないくせに、そんな被害妄想に襲われてる。あー、なんかもうホントにムカつくよ。

 

Double Planet 第4話

もちろん部活もなくて、演劇部のグループラインだけが盛り上がってる。みんな、暇なんだよね。くだらないことをやり合ってる。私は、みんなのやりとりを眺めてるだけだけど。

「ねぇー、暇だし、オンライン稽古しませんかー??」

その発言の主は、クラスメイトのナツキだった。
どうやら最近、zoomを使ってオンライン演劇を仕掛けているものがあるらしい。
対面NGになったらなったで、よく考えるものだ。
それにしても、演劇スイッチが入ってからのナツキのアンテナはすごい。
今や部活内の誰よりも昨今の演劇事情に詳しい。どこの劇団の誰がなんとか賞を取ったとか。あの高校の演劇部OBは有名な俳優を輩出してますねーとか。先輩から「演劇ライターか!」ってツッコまれるぐらい物知りになっている。

Double Planet 第4話

そんなナツキが提唱するオンライン稽古とは、この二つだった。

・全員、カメラ越しに発声練習を同時にやってみない?
・テーマを決めて、エチュード(即興劇)をオンライン上でやらない?

私は反応することなくじっと見守っていると、ナツキの提案にしっくり来てない新三年生たちによって、あっという間に鎮静化させられてしまった。
ナツキは悔しかったんじゃないかな。そこは、友人として嘘でも「やってみたい!」と援護射撃するべきだったのかもしれない。

実は、そんな私にも小さな変化があった。
くさくさしてるだけじゃないよ。
私だって生きてるんだから。
あれから、ラジオ番組「らぶ&MUSIC」を毎週聞くようになって、むくむくとこんな気持ちが湧いてきた。

「私も……物語書いてみよっかなぁ」

そんなことを思いついた。
誰に宣言するでもなく、自分の中だけで勝手に決めた思いつきレベルで。
試しにスマホでメモ機能アプリをダウンロードして、物語のアイデアを打ち込んでみた。

時間だけは膨大にあるから、これが丁度いい暇つぶしになる。

ついついのめり込んじゃって、気づいたら深夜2時なんてこともあった。
一つを突き詰めるわけじゃなく、今は思いついたものをどんどん書いてる感じ。
的のない所に向かって闇雲にボールを投げているような感覚もあったけど楽しかった。

この楽しさは何なんだろう。
今まで味わったことのない類だ。

いくつか思いついた物語ので一番気に入っているのが、
家族全員が犬だと思って育てていた動物が実は猫だったというコメディー。

Double Planet 第4話

思いついた時、笑ってしまった。

「なんだそれ?!」

って自分で自分にツッコみを入れたくなった。
その家族は猫を見たことがなくて、このぐらいのサイズの動物はすべて犬だと思い込んで生きてきた、みたいなそんな設定の物語。

私は、このアイデアを誰かに話してみたくなった。

ナツキしかいない。

まずは悟られないようにナツキに何気ないLINEを送る。

「ねむいー」

正直、全く眠くない。むしろは目はバッキバキに冴えている。他愛もないラリーでやりとりした流れで、冗談っぽく切り出してみた。

「暇すぎて、こんな物語思い付いたんだけど(笑)」

犬が猫だった云々かんぬんを送ってみた。
既読になったまま、待てど待てど、返事がない。
どうしちゃったんだろう……即レスのナツキとして有名なのに。
いったんお風呂に入ることにして、さっぱりして戻ってくると、
見たこともない長文が送られて来ていた。

ナツキなりに「全然ダメだと思う」的なことが、回りくどい言い方で延々とつづられていた。途中で先を読むのも嫌になったけど、一応最後まで読んだ。
ぐったりして、気分が重くなった。

ナツキのいつものノリで「オモシロっ!」なんて言われるとばかり思ってた。
自分の発想の豊かさを褒めてもらえると期待してた。

「リアリティーがないんだよねー」

そんなもっともらしい言葉まで付いてきた。
リアリティーねぇ。リアリティーなんて必要なのかな?
だって、ありえない物語の方が面白くない?って思っちゃう。
私は誰もいない部屋で、ブツブツと反論を試みた。

そんなこんなで批判されて、すっかり気持ちが萎えてしまった。
メモ機能アプリにも触らない時間が増えていって、またポッカリと穴が開いたような時間を過ごすことになった。ネットフリックスでアニメを見ても、テレビで連ドラを見ても、なんだか満たされない。私の中で時間がまったく積み重なっていかない。
生きてるのか死んでいるのか分からない。

鬱々と悶々としたまま、日付を見る。土曜日だった。

ラジオを付けた。

いつものリスナーさんのメールが紹介されている。
いいなぁと思った。私も参加してみたい。
えっと、誰だっけ……そう、サトルブルーだ。
高校生リスナーのサトルブルーみたいに。

私の気持ちをラジオに送ることにした。

神田「メール、こちらです。ラジオネーム『ルーカス』さんからです。
『はじめまして。県内の高校に通うたぶん二年生の女子です。
今、学校が休みで、めちゃくちゃ退屈です。
ゲームしても、アニメ見ても、何をしていても何だか退屈なんです。
コロナばかやろーです。
この前、物語のアイデアみたいなものを自分で考えてみました。
楽しくて、いくつもいくつも思いついたんです。
その中で自信があるやつを友達に見せたら全否定されちゃいました。
という私の現状報告でした。』

フルタ「ほう」

神田「物語と言えば、フルタ君でしょ」

フルタ「若い頃って、自分が作るものに根拠のない自信がありませんか?」

神田「俺もあったね」

フルタ「けど、そこそこ経験値がある人が現れて、もっともらしい言葉で否定されたりすると凹むんです」

神田「フルタ君、凹んだの?」

フルタ「凹んだりもしたけど、すぐに、さらに根拠のない自信が出てきて、僕を否定したあいつこそ間違っている!僕の方が正しい!とさらに自分を自分で説得するんです(笑)」

神田「なんかわかる(笑)」

フルタ「モノづくりに正解なんてないと思っていて。本人が作る過程に楽しさを見出しているものは全部本物だと思ってるんです。モノを作り続けて大人になると、そうじゃない瞬間もたくさんやってくる。今、純粋に作っているのが楽しい、私はこう思う!みたいなものは尊い。それを表現したいという気持ちがあるなら臆するな!と言いたいですね」

 

《つづく》

*バックナンバーはこちらからご覧いただけます。

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