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MAGCUL マグカル

「マグカル・ドット・ネット」は、神奈川県内のアート・カルチャー情報を発信するサイトです。
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神奈川県では、文化芸術の魅力で人を引きつけ、地域のにぎわいをつくり出す、マグネット・カルチャー(マグカル)の取組を推進しています。
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アートを通して自分を俯瞰する
美術・写真
2021.03.03

アートを通して自分を俯瞰する

 

Kanagawaギャラリーさんぽ
File.14 Gallery Pictor
山本詩野
(ギャルリーワッツ)

アートの持つ力、面白さにもっと触れてほしいと思いながらギャラリーをやっていますが、お客様が「難しい」という一言で終わってしまう時に、もどかしさを感じることが少なくありません。

美術畑出身ではない私ですが、それでも「アートはそんなに遠い存在ではなく、実はいくらでも自分と関わることができるもの」と言うことができます。

「アートは『癒しと非日常』だけではない」と話すGallery Pictorの中島紗知さんのエッセイに共感し、お訪ねしました。

 

Gallery Pictorは鎌倉にあります。鎌倉駅の江ノ電乗り場がある西口改札を出て、御成通りを歩きます。小町通り側より落ち着いた雰囲気です。

由比ヶ浜通りに出たら右折して、しばらく行くともうギャラリーなのですが、道々、ちょっと目線を上に歩くと、店舗の看板やファサードが楽しくて。昔ながらの味わいや、海辺のニュアンス……歴史、立地など鎌倉が内包する魅力を垣間見ながら歩いていたら、ギャラリーにたどり着くまでに時間がかかってしまいました(笑)。

ノッポのシンプルな建物が出てきたら、2階に上がるとGallery Pictorがあります。
ここでは国内外の現代アートの作家作品を紹介しています。

「アートというと、相対的に、コンセプトが先に立つ傾向を感じますが、現代のコンテクストがあり、かつ普遍的で、しっかりと美術的表現が備わっている作品を紹介したいと思っています」とギャラリーオーナーの中島紗知さん。

ちょうど開催中だった3人展の一人、染織家・河本蓮大朗さんの作品は、裂き織りで構成されており、素材は国内外から収集した古着。黄色と赤が鮮やかな作品は、コダックフィルムのロゴTシャツを用いているそう。

フィルム世代の私としては懐かしく、コーポレートカラーのコダックイエローが蘇り、時代の流れとコダックVS富士フィルム(コーポレートカラーはグリーン)の果てを彷彿とさせました。時代のスピードに今も様々なVSが起きていることを重ねながら。

「世界中、紀元前からどの時代にも暮らしとともに織物があります。歴史や文化、地域の特徴などが反映されたそれらと現代の営みを織り込んでいることが面白いと思います。また素材にも時代変化があり、テクスチャーの表情が豊かなのも織物作品の面白さですね」と中島さん。

3月27日からは個展として、河本蓮大朗さんの禅とリンクさせた新作が見られるそうです。

さて、私の足を長く止めたのはドイツ在住アーティストの星野美津子さんの作品。
こちらが移動すると、角度によって、何も無かった画面に淡い絵が現れてきます。

人は見えそうで見えないものや、儚さを捉えようとする傾向がありますが、まさにそんな気持ちで、いつまでもこの前を行ったり来たりしていました。じっくり味わいながら、自分の中に出てくるキーワードを並べて、なぜ興味をそそられるのか、その源を見出したくなったのです。

コロナによって、不透明な状況に置かれる今は、自分の髄を再確認する機会になっていると思えます。立ち位置によってしっかり絵が見えるこの作品は、まるで自分の髄に幾度となく立ち返らせてくれるようにも映りました。

アーティストステートメントを後から読むと作家の意図が汲み取れ、そこからまた自分の思考を深めていくのは面白いものです。そうやってアートは身近な存在になっていくのです。

ギャラリーを立ち上げて2年経ち、中島さんは改めて自分の役割が見えたそうです。
それは、アートは癒しや非日常のものだけでなく「現実の私たちの世界をいろんな切り口でみせてくれる媒体」という認識に変えていくこと。

興味の点と点を繋げると線に、さらには面になり、見える世界観が拡がっていく……アートは領域を超えた結節点になると確信し、大事な点は何かを探してみるプラットフォームとして、様々な点を共有していきたいとのこと。

でも、点を繋ぐのはもちろん、見る側。つまり与えられた情報でとどまるのではなく、そこから自分の内側を俯瞰して、今の環境を見てみると、たとえ未来が不透明なときも進み方のヒントが見えてくるかもしれません。

ギャラリーサイトに連載されている中島さんのエッセイも毎回とても興味深く、お勧めですよ。

(2021.2 取材)

 

《ギャラリー情報》
Gallery Pictor(ギャラリーピクトル)
神奈川県鎌倉市由比ガ浜3丁目1-28 鎌倉テーラービル2F
TEL:080-7085-8404
営業時間:11:00 〜 17:00
開廊:月・火曜日(展示入替え期間は曜日にかかわらず休廊)
駐車場:なし
https://gallery-pictor.com/

《アクセス》
▶︎江ノ島電鉄「和田塚」駅下車。徒歩約3分
 JR横須賀線「鎌倉」駅西口改札から徒歩約10分

■河本蓮大朗 展「時の布」
2021年3月27日(土)〜4月25日(日) Gallery Pictor
2021年4月2日(金)〜4月4日(日) 建長寺・龍王殿
*詳細はこちらをご覧ください