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演劇・ダンス

見て、聞いて楽しい! 劇団「安住の地」による、楽しく軽やかながら深く心に響くミュージカル

見て、聞いて楽しい! 劇団「安住の地」による、楽しく軽やかながら深く心に響くミュージカル

(2020年KAATにて「異郷を羽織る -Drape the Strange land-」上演 )

かながわ短編演劇アワード2021大賞に輝いた団体「安住の地」による受賞記念公演が、令和5年2月23日~26日(予定)神奈川県立青少年センタースタジオHIKARIにて上演されます。
「安住の地」は京都を拠点とし、さまざまなカルチャーとコラボレーションし「ミクストメディア」な作品を発表している劇団/アーティストグループ。
今回の作品「異郷を羽織る -Drape the Strange land-」は、神奈川・京都・静岡、国外ではイギリス・ドイツと、1人芝居から9人芝居まで形を変えて上演を重ねられてきました。
脚本・演出は岡本昌也氏。衣装は初演に引き続きyushokobayashi氏を迎え、さらに笠松泰洋氏の音楽とコラボレーションし、ミュージカルとして再構築されます。
作品に大きく関わるお三方をお迎えし、作品の見所を伺いました。

-かながわ短編演劇アワード2021にて「ボレロの遡行」を上演し、大賞を受賞された時の感想を教えてください。

岡本:大賞を受賞したことは大変嬉しかったです。
当時はコロナ禍真っ盛りの時期で、コロナウィルス感染により参加できない団体があり、上演作品もコロナ禍を生きる中で抱えている問題を扱った作品でもあり、演劇界全体がどんよりと落ち込んだ雰囲気の中、無観客という条件付きのアワード開催でした。
 受賞を機にメンバーと、当時それぞれが抱えていた不安な気持ちを共有でき、自分たちが今後どのように活動を続けていくのかなど、たくさん話し合えたこと、とても価値を感じました。
また、今回楽曲提供をしてくださった笠松さんが審査員として参加されていて、「コロナ禍で大変なことも多いけれど、どんどん作品を作っていこう!」という言葉をいただき、上の世代の方々が強いエネルギーを持っていらっしゃる中で、若い自分たちがどんよりとなっていてはダメだ!と、気を引き締められる思いになれました。
世代を問わず、アーティストが集まって何かをやろうとしている場に参加できたということが刺激となり、とても印象に残るアワードでした。


(2020年KAATにて「異郷を羽織る -Drape the Strange land-」上演)

-2月に上演される「異郷を羽織る -Drape the Strange land-」について、見どころを教えてください。

岡本:本作は、「安住の地」が何度も上演してきた芝居です。
ある旅人が欧州で孤独を感じていた旅中、ある国で「移民」と出会い、そこでそれぞれの孤独を通じて、言語は違うけれども会話をしていく、ストーリーです。
生きていく中で、自分たちと違う価値観、違う文化の人とどう生きていくか。日常生活においても、人とさまざまな違いを感じることがありますが、そういう部分に通ずる内容だと思っています。もう少し広い視野で見ると、社会問題や国際状況も内包したような作品だと思うので、そういった部分も考えながら楽しんでほしいです。
初演から今までは、内容が重くシリアスな雰囲気でしたが、今回は脚本もブラッシュアップし、新たな衣装と音楽のコラボレーションにより軽やかに楽しい作品となっています。
自分たちだけでは作れないところまで、作品が育っている感覚です。そこが一番の見どころですね。
エンターテイメントとしても成立するような、新しい見え方になると思います。もう一度作り直して、まるで新作のような感覚です。ミュージカルですので、お子さんが見ても楽しめるような雰囲気に仕上がっています。重い題材だからこそ、「見て聞いて楽しい」を前提にし、その背後に問題を内包した作品にしていきたいです。


(2020年KAATにて「異郷を羽織る -Drape the Strange land-」上演)

-気鋭のファッションデザイナーyushokobayashiさん。初演から衣装制作をされていますが、今作品の衣装の見どころなどを教えてください。

yushokobayashi:ロンドンで5年間生活していた時に岡本君と知り合い、一緒に作品を作ることになりました。イギリスのリサイクルショップで安い素材を集めたりしたことを覚えています。
作品の内容を聞いて、登場人物の移民の立場と自分がリンクしたような気持ちになり、「その立場から、何がどう見えるか」を作品として表現するように衣装を作りました。
当時は、作品の移民に重なる立場や見え方によって衣装を作っていたためか、どうしても「その重さ」が作品にも現れていたのですが、生まれ育った日本に戻って3年経ち、一度視点が切り替わりました。
今回、初演から前回の上演まで使用していた衣装を、全て新しく作り直しています。移民的立場ではなくなった今の自分の視点で、さらに音楽が加えられ、新しい作品として生まれ変わる時に、衣装をどう作り直せるか考え、新たに形式をリサーチし直して制作している最中です。明るく軽やかながらも、そこに含まれる背景の重さを、ファッションとしてどう表現できるか考えています。
とにかく面白く見せたい。初演衣装よりさらに、深みを増して個性の出たものになると思いますので、ぜひ衣装にも注目していただきたいです。


(Yushokobayashi氏による衣装製作現場)

《yushokobayashi》
Instagram:こちら

-作曲家として世界的に活躍する笠松泰洋さん。今作品の楽曲についてのポイントなどを教えてください。

笠松:偶然ですが、私も物語の舞台になっているロンドンで一ヶ月ほど滞在した経験があり、作品に共感する部分がありました。
他にも、文化庁文化交流使としてさまざまな国へ行った際、印象に残っているのが中南米4ヶ国でのこと。そこで出会った弦楽四重奏団のメンバーは全員国籍が違い、その中には難民経験がある人もいました。たくさん言葉を交わし、それぞれいろいろな経験や考え、さまざまな価値観を抱えているのだなと実感しました。そこで得たものをどう自分で消化して自分の作品に取り入れていくかを課題にしてここ数年生きていたのですが、そのすぐ後、審査員として岡本君の作品を見て感銘を受けたのです。
異郷を羽織るという作品は、自分の今生きているテーマにものすごく合っていました。
これは自分も参加したい!音楽家として、一緒に作品を作り上げたい!と強く感じ、作品を見た後すぐに岡本君に声をかけました。
コラボレーションが決まり、セリフを見て、重い内容ではあるがこれを笑い飛ばせるような、怒りの歌ではあるけれどもすごく楽しい歌にするべきだなと思いました。日本語、英語、ドイツ語が入り混じったセリフを、どう構成したら音楽として成立するか練りに練って生み出しました。岡本君からの挑戦状のようでしたね。笑
他の人にはできないぞという気持ちで挑みました。違う言語を同じメロディに乗せる。若い頃の自分にはできなかったかもしれませんが、経験を積んだ今の自分には、どうしたらいいかというノウハウがあったからできたのだと思います。今のタイミングで出会えて本当に良かったですね。
今作品では私が製作した楽曲を、とても信頼している素晴らしいギタリスト助川太郎さんを迎えて生演奏してもらいます。彼だからこそ奏でられる、弾むような躍動感のある軽やかな音を楽しんでいただきたいです。

《笠松泰洋》
プロフィール:こちら
《助川太郎》
プロフィール:こちら

-劇団「安住の地」に所属し、今回上演される作品にも出演される中村彩乃さん。役者の視点から本作への思いを教えてください。

中村:初演の一人芝居時から、この作品に携わってきました。多様性が認められつつも、さまざまな関係の間で今もずっしりとよこたわる、 言語・文化・習慣・想いのちがい。
「そこにある差をどう捉えていけばよいか。迎合する?反発する?どこに自分を置く?」今作は、そのような問いを探す物語です。
音楽・衣装・俳優、様々な地で上演した経験、いろんな要素を借りて、「自分とは何か」を見つめ直すきっかけになる作品にしたいと思います。


(静岡ストレンジシード2022にて野外上演)

-京都を拠点として活動されている安住の地のみなさんですが、神奈川で上演される意気込みなどを教えてください。

岡本:拠点とは違う土地で上演することは、僕らにとってとても意味があります。お客さんの反応は、地域によって全く違うのでとても面白いですし、勉強になります。神奈川で自主公演を単独でやるのは初めてなので、神奈川のお客さんと出会えることはとても楽しみです!

そして安住の地にとって神奈川短編演劇アワードはとても良い思い出となっています。
受賞したその日、海沿いを歩いたのですが、大賞受賞のおめでとう!とメンバーと声を掛け合った瞬間にものすごく強い海風が吹いたんです。まるで神奈川に祝ってもらっているかのような感覚になりました。笑「あの風すごくよかったよね」と今でも話題に出るほど、メンバー全員の心に残っています。もう一度、みんなであの風を浴びにまたあの海に行きたいなと思っています!
旅の話で、越境、海などのイメージから、この作品は神奈川という地にとても合うとも思っています。ぜひ、たくさんの方々に見に来ていただきたいです。


《安住の地》
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