ジャズ散歩 昼下がりに音楽を浴びる喫茶店「大島コーヒー」
「横浜という街は、日本のジャズを語るうえで欠かせない存在である」
「横濱JAZZ PROMENADE」をはじめ「横浜旭ジャズまつり」や「YOKOHAMA本牧ジャズ祭」など数多くのジャズフェスティバルが開催され、生演奏が楽しめるジャズスポットも多い横浜。
この連載では、県内のジャズスポットの雰囲気や魅力を紹介。ジャズ喫茶やライブハウス等に興味はあるが「な〜んか敷居が高い」と思っている方も、気軽に行けるスポットが見つかるかも!
今回訪れたのは、日ノ出町駅からほど近い「大島コーヒー」。野毛の外れ、宮川町の路地にひっそりと構えるこの喫茶店は、昭和から続く年季の入った外観とは裏腹に、昼間からジャズが体に染み込んでくる、知る人ぞ知る一軒だ。
朝から音楽が鳴っている

「ジャズスポット」といえば、つい夜のイメージを持ちがちではないか。薄暗い照明のなか、グラスを傾けながら演奏に耳を傾ける——そんな光景が思い浮かぶ。
ところが、大島コーヒーは違う。営業は朝から始まり、モーニングやランチタイムから、ALTECの大型スピーカーが鳴り響いている。ジャズや懐かしい洋楽が流れるなか、トーストをかじり、コーヒーを一杯。そんな昼下がりのひとときが、ここでは普通に存在する。
「夜しか行けない」「一人じゃ入りにくい」——そんな理由でジャズ喫茶を遠ざけていた人にとって、大島コーヒーはまさに入口になり得る場所だ。
ALTECが鳴らす、昭和の音

店内に一歩入ると、まず音が迎えてくれる。壁に堂々と鎮座するALTECのスピーカーから流れる70〜80年代の洋楽やジャズは、「音量が大きい」という感覚より先に「体に入ってくる」感覚がある。
このスピーカー、ただ古いのではない。ALTECといえばジャズ喫茶の世界では名の知れたブランドで、往年の音楽ファンなら耳にしたことがある名前だろう。その歴史ある機器が、今日も変わらず店内を満たしている。
音の質を語るより、体感してほしい、という類のサウンドだ。
喫茶店ごはんだから、うれしい

ジャズの話だけでは、大島コーヒーの半分しか語れない。もう半分は、食事だ。
ここは喫茶店である。当たり前のことのようだが、それがとても大事で、だからこそメニューがいい。生姜焼き定食、ナポリタン、モーニングのサンドイッチ。気取らず、でもちゃんとお腹を満たしてくれる、あの喫茶店ごはんだ。
今回注文したピザトーストに、ポテトサラダが入っていた。これが個人的には大発見だった。チーズのとろみと、ほくほくとしたじゃがいもの食感が合わさって、ボリュームも満点。「ピザトーストってこんなにごはんになるんだ」と、素直に感心した。アイスコーヒーを傍らに、音楽を聴きながらゆっくりとランチをいただく——それだけで、十分な昼休みになる。
昼間のライブという選択肢

月に数回、プロミュージシャンによる生演奏ライブが開催される。ここで注目したいのは、週末の昼間にライブが行われることも少なくないという点だ。
「ライブは夜しかない」という思い込みを、大島コーヒーは静かに崩してくれる。午後の陽光が差し込む時間帯に、ピアノやサックスの生音を浴びる体験は、夜のそれとはまた異なる解放感がある。仕事帰りでなくていい。ランチのついでに、ふらりと立ち寄れる。
チャージ料金はなく、ライブ演奏時はワンオーダーと投げ銭(1,000円〜)という気軽なスタイルも、はじめての人に優しい。
「自称、横浜一ゆるいジャズスポット」

連載でこれまで紹介してきた店のオーナーたちに共通するのは、「敷居を下げたい」という思いだ。大島コーヒーもその思いは同じで、ジャズに詳しくなくても、音楽に興味がなくても、コーヒー一杯を飲みに来るだけでいい、という雰囲気が店内に漂っている。
JR桜木町駅から徒歩6分、京急日ノ出町駅から徒歩3分。野毛の喧噪からほんの少し外れた静かな通りに、昭和の空気を残す喫茶店がある。昼間から音楽を体に浴びたいとき、ここに来てみてほしい。
大島コーヒー
住所:神奈川県横浜市中区宮川町2-33
アクセス:JR線「桜木町」駅徒歩6分 / 京浜急行線「日ノ出町」駅徒歩3分
ホームページ:https://www.ohshima-coffee.com/