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美術・写真アート

田園の一角でアート発信!

田園の一角でアート発信!

Kanagawaギャラリーさんぽ
File.1 寺家スタジオ
山本詩野/ギャルリーワッツ)


ぶらりと散歩したくなる気持ち良い季節になりました。
曇り空だけれど、穏やかな日。「そうだ、あそこに行こう」と思い立ち、横浜市青葉区の寺家町へ。寺家ふるさと村とも言われ、ほたるもいまだに見られる緑地保全エリアです。
バスを降り、田園風景の中をしばらく歩くと、トトロの空気感漂う建物が見えてきます。
実はとてもモダンなギャラリー&カフェ「寺家スタジオ」。

入り口にはJIKE STUDIOのバスストップ看板。(バスは停まりません。でも、ネコバスなら停まるかも)

ここでは、アート、ファッション、工芸、ときには落語など、さまざまな展覧会が繰り広げられています。
のぞくと、カラフルで不思議な構成のニットがシンプルな空間に浮遊していました。
ニットの間を縫って歩くと、なんだかリズミカルな響きに包まれるようです。

展覧会中だったアーティストは大分在住の竹下洋子さん。東京藝大の油絵科卒の彼女は、「自分の絵が街を歩き出す」インスタレーションととらえて、ユニークなニットを創り出しています。

ニットに関しては独学で、幼少期に母親と編み物をした楽しかった記憶が手を動かしているそう。
またその時々にシンパシーを感じる色や素材を紡いでいく即興スタイルを大切にしているといいます。自身でドローイングしたテキスタイルとのコラージュも相まって、それはもう身にまとうアート。

一見着こなすのが難しそうですが、袖を通してみるとあら不思議。意外と着れちゃうではないですか。しかもなんだか解放されていくような自由さも芽生えてくるのです。スカートは360°回転させて、その日の気分で正面を決めるもよし。トップスは前後、上下逆にするとコーディネートの表情が変わります。

竹下さんのニットがお初の方もリピーターの方も、また、若かろうが歳を重ねていようが、次々試着しながらみんなで新感覚を共有しあっている様子は、傍らで見ているだけでも刺激的。まだ気づいていない自分の中に眠るクリエイティブの扉が次々と開かれていくような、こんな面白さをいったん味わうと、病みつきになりそう?!
服でありながら、目前で繰り広げられているのは「動く絵画」、まさに作家が意図するインスタレーションでした。
「身にまとう」ということの奥深さに触れる「竹下洋子の世界展」。5月6日まで開催しています。

さて、ひとしきり楽しんだ後は、カフェでランチを。どんよりした空でも美しく映える新緑の気持ち良いこと!

この日のメニューは、彩り豆とオレンジのサラダ、イカとセロリの生姜マリネなどの前菜に、牛肉と青山椒のコロッケ、鰆と春野菜のソテー。それに自家製パンとデザート、飲み物が付き、ボリュームたっぷりです。

自分たちで育てているという無農薬の野菜は、愛情がギュッと詰まっているしっかりした味。青山椒のコロッケはギャラリスト、坂上浩美さんのお母さまの味を復活させたそう。

さらに店内には、寺家スタジオに関わる作家の作品やセレクトグッズも並んでいて、楽しむ要素が至るところに。あっという間に時間が経ちます。

すっかりおなかも心も満たされ、帰ろうとしたら、坂上さんが「ちょうど畑に野菜を取りに行くので一緒に行きましょう」と。

ギャラリーのすぐ近くでサニーレタス、春菊、ルッコラなどが元気よく育っています。これからはトマトも賑わうそう。


「周りに比べると自己流で恥ずかしいのだけど……」と照れ笑いしながら、瑞々しい野菜をお福分けしてくださいました。

「流れる時間、流されない時間を大切に」
寺家スタジオのテーマだというこの言葉にしっかり浸った1日でした。

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