21世紀を生きる狂言師の檜舞台
Vol.2 狂言の稽古は、明るく 楽しく 元気よく!
大藏教義(能楽師狂言方大藏流)
「大きな声を出してもいいんですか?」驚いた表情で質問する生徒さんに、私の方が驚いた。なぜなら稽古は大きな声を出さなくてはいけないし、そういう芝居だからだ。でもよくよく考えてみると、ここは神社境内にある神楽殿であり、半屋外。外で大声を出すというのは確かに気がひけることかもしれない。「気にせずにやりましょう」と勧めると、生徒さんの大きな声! その声が静寂を破り、境内の樹々に吸い込まれ、あるいは風に乗ってすぅっと消えて行く。また戻る静けさ。これがたまらなく好きで続けている生徒さんも多い。
「声」とは何か。それは自分が自分であると証明するものに違いない。指紋同様に声紋も、またと同じものはない。声を出す事で、自分がここに存在する。ここで生きているという証なのだと思う。
21世紀を生きる狂言師の仕事は、舞台に立つことだけではない。狂言文化を広め伝えるために「教室」を開き、生徒さんたちに舞や謡を教えることも大切な仕事だ。
狂言の稽古は、先生の真似から始める。歌を歌うのも、お芝居の決められた動きも、全て真似をする。細かい事かもしれないが、一挙手一投足、形になるまで追求していく。動きは最小限に。そして美しく。自分の体と向き合いながら磨いていくのだ。
生徒さんが狂言を始めた理由は様々。サラリーマン、主婦、先生、学生、子ども。始めて1年の方から30年以上の生徒さんまで! 老若男女入り混じって、発表会や神社奉納の舞台を目指して稽古している。教室のモットーは「明るく楽しく元気よく!」。
さて今回は、生徒の皆さんにお話しを伺いました。
狂言をはじめられた理由ってなんですか?
T.Y 私は仕事のストレスで自分を見失わないためですね。
M.M 長年古典芸能の舞台を観ていましたが、ある日突然やってみたくなったんです。
M.Y 僕は小学1年生の時に学校で配布されたチラシを見て興味を持ちました。
それぞれ狂言キャリアは違いますが、続けている理由を教えてください。
T.M 魅力的な先生と柔軟な稽古ですよ(笑)
嬉しいですね(笑)
M.M 大きな声を出すのは気持ちいいですし、人前に立つ度胸もつきました。
M.Y 僕は、発表会が終わるとすぐに次の発表会の事を考えてしまうので、やめられないんです!
スタジオなどではない神社での稽古ですが、ロケーションはどうですか?
M.Y 目の前を参拝の方が通るので、本番同様にお客さんを想定して練習できると感じています。
T.Y 神聖な場所なので悪事が出来ない場所です(笑)
T.M 私は地の利ですね。あとはレトロな雰囲気で好きです。
M.M 私も静粛な気持ちになりますね。
毎回一生懸命お稽古に励まれていますが、稽古に求めるものとは?
T.Y 技術はもちろん、先生からそれに見合う内容の日本文化の説明があることです。
M.Y 舞などを通して、体の美しさを磨いていきたいです。
M.M 毎回緊張感を持って臨みたいです。その他、いろんな物事に通じる発見があります。
T.M 私は、マルチなお稽古も取り入れて、曲の勉強会というのも面白そうだと思っています。
狂言の魅力はどんなところでしょう?
M.Y もはや、笑いの一択です(笑)
T.Y そうですね。観ていても演じていても舞っていても、自分が構築する世界観であることだと思っています。
T.M 人間の愚かさやずるさ、浅はかさなど普遍的なテーマを、明るく単純に描くところに楽しさを感じますね。
M.M 同じく、普遍的な人間のおかしみと奇想天外でシュールな世界だと。
最後に、皆さんの未来像を教えてください。
M.Y どこまで出来るかわかりませんが、やれるところまでやってみたいです! しばらくは狂言を続けると思います。
T.Y 狂言を通して色々な人と繋がり、幸せに楽しく暮らしたいですね。
M.M 今と変わらない所と成長した所のギャップを楽しみたいです。
T.M 定年退職後の再就職で、シニア冠者として働けそうな場所を探しています(笑)
教室では皆さん様々な目的を持って取り組まれています。
この日は10月6日の中野島稲荷神社例大祭で奉納する狂言『蚊相撲』の稽古を集中して行いました。当日は観覧無料、どなたでもご覧になれますので、狂言を観たことがない方もぜひいらしてください。
そして、生徒さんの日頃の稽古の成果をご覧になり「自分もやってみたい」と思われたあなた! 教室では体験も行ってますので、気軽にご連絡ください!
稽古場の様子は大藏教義ブログ「ノリノリ狂言生活」http://ohnori.blog52.fc2.com/に掲載しています!