劇作家・演出家の横内謙介氏を塾長に迎え、舞台芸術の人材を育成しているマグカル・パフォーミングアーツ・アカデミー。その2018年の本公演『バイトショウ-BEST盤-』が、8月18日(土)、19日(日)の2日間行われました。
毎回レベルアップする歌やダンス、ブラッシュアップされる舞台が話題となり、今年は全4回公演のチケットがすべて完売。残念ながら観られなかった方のために、熱いステージの一部始終をレポートします!
会場は、これまで数多くの演劇人を輩出してきた神奈川県立青少年センター。通常利用で客席数812を誇る紅葉坂ホールですが、『バイトショウ』では客席数を180に限定し“観客ごと360度回転する舞台”がウリです。いったいどんな舞台になるのか…。期待に胸を膨らませて伺ったところ、いきなり「楽屋口」から舞台上へと案内されたのでびっくり!
そうなんです、客席は舞台の上に設置されていたのです!
緞帳を内側から眺めながら待つことしばし。開演のベルとともに幕の内側に女優が登場して「前説」で盛り上げ、セリに乗って退場。さすが、舞台機構をとことん使い尽くしています。
幕が上がると、広い客席に佇む役者たち。この空間すべてがアクティング・エリアになるのだとしたら、なんとも贅沢な演出です。
ドラマティックな幕開きにドキドキ。
「ステージへ」を歌いながら、次々とステージに駆け上がってくる役者たち。
そしてメンバー全員でダンス!
客席は役者が踊るステージ面に乗っているので、彼らの躍動感が振動となってビンビン伝わってきます。アクティング・エリアは手を伸ばせば届きそうなくらい近くて大迫力!
リアルなバイトの制服に身を包み、夢を追う熱い思いを歌い、バイト生活の現実を叫ぶ!
目の前でポーズを決められてドキドキ感はMAX!
こんなに広いホールなのに、小劇場のような親密さがたまりません。
ゴトゴトと音をたてて舞台が回転すると、右手にはメインキャストのバイト先であり、ミュージシャンを目指す仲間が集う店のセットが。
暗転なしで舞台が展開してゆくリズムの良さも魅力です。
左手では、舞台袖の階段をそのままセットに利用したシーンが展開します。
手が届きそうに見えた夢が弾け、行き場のない怒りと嘆きが交錯…。つらいシーンなのですが、ウエストサイド物語のワンシーンみたいで「カッコいい!」と思ってしまいます。
2016年の初演から改訂を重ねた今回の『BEST盤』は、新曲も加わりました。
生ピアノをバックに歌う「お金かして」。大人になってゆくアカデミー生たちの姿を重ね合わせたかのような、厳しい現実を歌い上げるシーンが印象に残りました。力強さと切なさが混じり合った歌声は、オフ・ブロードウェイの舞台に立つスターの卵たちを彷彿とさせます。
それでも頑張っていけるのは、仲間がいるから!
ケンカをしても、やっぱり一緒にやりたいと思える仲間がいるのって、素敵です。
フィナーレに向かって一気に盛り上がる…と思いきや。
同じように努力したからといって、みんな一緒に夢がつかめるわけではない。そんなシビアな現実を突きつけられる瞬間も。
それでも、仲間がいる。バイト生活からなかなか抜け出せないけれど、未来がどうなるかはわからないけれど、夢に向かって走り続ける日々を支え合える仲間がいるから頑張れる!
そして今日も、夢を追いながら黙々とバイトに汗を流す若者がいます。
最後は「Let it be」が流れる中、客席にキャストが勢ぞろいしてご挨拶。
トータル約2時間20分。長いようで、あっという間だったようで、山あり谷ありの人生みたいな時間でした。
0期生から4期生まで総勢31名。それぞれの努力と思いが詰まった2018年夏のステージは、大きな拍手に包まれて幕を下ろしました。
近い将来、この中からプロの舞台人が、神奈川県発のミュージカルスターが誕生することは間違いありません!