コンテンツにスキップ
アート音楽

「木のホール」が帰ってきた! 神奈川県立音楽堂リニューアルオープン

「木のホール」が帰ってきた! 神奈川県立音楽堂リニューアルオープン

気軽enjoy! コンサートのある暮らし
File.6 神奈川県立音楽堂
森光三朗
(音楽ライター)

お帰りなさい、と言うべきか。
お疲れさまです、と言うべきか?
相手が建物なだけに迷ってしまうけれど…
約1年に及ぶ改修工事を終え、数々の伝説的名演奏を生んできた、神奈川県の宝ともいうべき音楽ホール・神奈川県立音楽堂が、2019年6月1日にリニューアルオープンする。

素晴らしい建築
名演奏家たちに「東洋一の響き」と称された音響
そして何より多彩で魅力的なプログラム
1年のあいだ、本当に待ち遠しかった。会いたかった!
開館は1954年というから、今年は65周年の記念の年。
戦後9年目にできた日本初の公立音楽専用ホールである音楽堂と、併設する図書館は、いわば戦後復興のシンボルだった。
設計は、ル・コルビュジエに学んだモダニズム建築の祖、前川國男。
桜木町駅から、ちょっとだけ急な坂を登ること約10分。駐車場の奥にたたずむガラスとコンクリートで構成された横長の四角い低層建築は、過剰な装飾を一切排した実にすがすがしい印象。

エントランスから左手、全面ガラス張りのロビーの素晴らしい開放感。
外観とはうって変わって、ホール内は「木のホール」と呼ばれているとおり、全てが風格のある木製。
客席はスロープになっていて、音響の良さはもちろん、ステージで演奏するミュージシャンが非常に身近に感じられ、聴くことに集中できる造りになっているのが嬉しい。

同じく前川氏が設計した音楽ホールに、東京・上野の東京文化会館がある。
ここもまた、オペラやバレエのファンにとっては聖地ともいえる場所だ。
コンサートに足を運ぶ上で、ホールの印象というのは大事なんだな、とつくづく思う。
良質な音楽と相まって、そこにいる自分が、いつもより少しだけ素敵になった気がしてしまうもの。

まずは、オープン当日の6月1日に行われる『オープンシアター2019 音楽堂で音・体験♪建築・探検!』に参加しよう。
コンサートや建築ミニ講座などのイベントとともに、普段は入れない舞台裏や床下まで覗けてしまうという楽しい企画。力入ってますねぇ。

そして、リニューアルオープンのお知らせとともに発表された今シーズンのプログラム。
待っていたかいがありました!
バロック・オペラから現代音楽まで、練りに練った企画が満載だ。
詳しくはホールのホームページ>>を見ていただくとして、ここではワタクシの個人的な趣味から注目の公演をピックアップさせていただきます。

まずは9月に行われる『佐藤俊介とオランダ・バッハ協会管弦楽団』演奏会

音楽好きのお姉さまから、うるさ方のクラシック・マニアおやじまで、圧倒的な支持を集める超本格派ヴァイオリニスト、佐藤俊介(大げさな言い方と思われるかもしれませんが、ホントなんです)。現代の作曲家からも信望が熱い彼が、昨年、バッハ研究の本場ともいえるオランダ・バッハ協会の第6代音楽監督に就任した。
今回は手兵を率いてのお披露目公演。バッハの調べとともに快挙を祝おう。
必聴です!

お次は11月の『アルディッティ弦楽四重奏団×小㞍健太』
現代音楽のスペシャリスト最強集団・アルディッティと、ダンス界の巨匠振付家キリアンの元で活動してきたダンサー・小㞍健太とのコラボレーション。

ダンスとのコラボはアルディッティの得意とするところで、以前、ジョン・ケージ作品などでも素晴らしい空間を作り上げただけに、今回も期待は大きい。
ムズカシイと思われがちな現代音楽。音楽的な表現に長けた小㞍のパフォーマンスを得て、聴覚・視覚の両面から刺激的な体験となるだろう。

そして、もうひとつ。
『没後500年 レオナルド・ダ・ヴィンチ 音楽の謎解き』と題された10月の公演。

ルネッサンスの巨匠、ダ・ヴィンチはなんと音楽家でもあった?!
という仮説というか資料の元、わが国が誇る古楽アンサンブル・アントネッロが、演奏、歌、ダンスを用いてその謎を解き明かすというもの。
これはもう、書いている私の想像をはるかに超えた世界。
よーし、体験してみなければ!
普段なかなか接することのできない、バロックよりもっと古いルネッサンス時代の音楽やダンス。
現代人は何を思うのか?

いかがですか、みなさん?
正直、期待以上のプログラム。

なお、今シーズンから音楽堂主催の公演では、開場時間に合わせて桜木町から無料送迎バスが運行されるとのこと。
ゆっくり坂道を登っていくのもオツなものですが、やはりバスはうれしい限り。

お帰りなさい。
この言葉は、音楽堂に携わるすべてのスタッフの方々に伝えるべき言葉でした。
そしてもう一言。
いつも素敵な公演を、どうもありがとう!

マガジン