コンテンツにスキップ

コロナに負けるな!万全の感染予防対策で挑んだ「バイトショウ -ファイナル-」

コロナに負けるな!万全の感染予防対策で挑んだ「バイトショウ -ファイナル-」

行って、みて、感じるアートの世界
File.31 マグカル・パフォーミングアーツ・アカデミー「バイトショウ -ファイナル-」
井上みゆき(マグカル編集部)

2014年、舞台芸術のプロを育てることを目的に開塾したマグカル・パフォーミングアーツ・アカデミー。毎年夏に行われる本公演は、2016年の『バイトショウ YOKOHAMA-青春篇-』からはじまり、国際篇!、BEST盤、プラチナ盤と改訂を重るごとにレベルアップを図ってきた。

ところが、今回のコロナ禍である。
今年はいったいどうなるのだろう?

そんな不安を乗り越え、可能な限りの感染対策を行った上で『バイトショウ-ファイナル-』が上演された。

初日となる1219日(土)の前日、総指揮を務める横内謙介さんにお話を伺った。その後に行われたゲネプロの風景とともに紹介する。

今年は春のスタートから止まってしまいました

これまでは4月に新人を迎えて8月に本公演を行ってきましたが、今年は春のオーディションができませんでした。とにかく情報を収集して感染対策を行い、なんとか9月にオーディションを実施したところ、予想を上回る応募があったんです。アカデミーの活動が浸透してきたことの証でもあり、本当にうれしかったですね。12月に本公演を行うことを想定すると「素人でも仕方ない」と考えていたのですが、即戦力として活躍できる力を持った方もいたので、今年は18人ほど採用しました。
実は「一旦やめる」ということも考えたんです。でも、若い彼らにとっては半年も止まるなんて「あり得ないこと」なんだと、改めて感じました。

アカデミーのレッスン再開はいつ頃から?

リアルでのレッスンは8月に入ってからですが、外出が制限されていた5月にはリモートで座学を行いました。スタニスラフスキーの演劇論、芝居の神様と言われた中村仲蔵、シェイクスピアの戯曲など、全10回にわたる「演劇講座」を配信したんです。

たとえば、演劇における「リアル」とは何なのか。折に触れて伝えてきたつもりではいましたが、理論的に学ぶいい機会になったと思います。これは僕らにとっても挑戦でした。リモートの授業でどれだけのことができるのか不安もありましたが、難しいことも手加減なく語れたと思います。
先が見えなくて誰もが不安を抱えていた時期に「停滞するな!」というメッセージでもあったので、迫力のある授業だったと思いますよ。

本公演の稽古は、全員マスク着用で行ってきたと聞きました

そうです。メンバーがマスクを外したのは今日(ゲネプロ当日)が初めてです。マスクをしたまま歌い、踊るのはハードですが、それ以前に芝居は表情が重要ですから、本来ならあり得ない状況ですよね。「こんな表情で演ってたんだ」と驚いたメンバーもいたんじゃないかな。まさに挑戦であり、壮大な実験ともいえます。
舞台上が「密」にならないことにも気を配りました。上演時間はこれまでより短い1時間45分。メンバーをAチーム/Bチームの2つに分け、数のパワーでみせてきたダンスナンバーも人数を減らしたので、ごまかしが効かない。「できる限りのこと」とは何なのか、正解は誰にもわかりません。それでも今の時期に「やる」ことの意味を追求しました。

5年目となる『バイトショウ』ですが、いよいよ「ファイナル」なんですね

マグカル・パフォーミングアーツ・アカデミーは神奈川県で演劇を学べる環境を作ることを目的に発足しました。2021年、県立神奈川総合高校に「舞台芸術科」が新設されることをことを考えると、ここで一区切りだと考えています。
2014年にスタートした頃は素人ばかりで「これは無理だろう」と思ったものです(笑)。それがここまで続けてこれた。今では音大を卒業したり、プロとしてステージに立つ者も出てきたので、今回はこれまでの集大成という意味も込めて「ファイナル」としました。

『バイトショウ』は舞台上に客席を作る“シアターinシアター”の形式をとり、観客数を絞って公演を行ってきました。もし次のステップがあるとしたら、紅葉坂ホールを正規の状態で使う新作を上演してみたいですね。紅葉坂ホールは客席数800人を超える立派な劇場ですから、これを埋めるのは大変なことです。でも、これは僕らの“悲願”であり、それをやった上で彼らが何を学び、継承してくれたのかをみてみたいと思っています。

コロナ禍で時間をロスしたことは本当に残念です。でも、かつてない状況だからこそ、これまでとは違う何かを見つけられたかもしれません。後から振り返ったときに「2020年も無駄な時間ではなかった」と思ってくれるといいですね。

最後に、今回の公演に関して「しっかりと対策した上で、極力実施して欲しい」というメッセージをいただき、応援してくださった神奈川県および関係者の皆様に、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

《これまでの『バイトショウ』レポートはこちら!》
2016年『バイトショウ YOKOHAMA-青春篇-』
●2018年『バイトショウ-BEST盤-』
●2019年『バイトショウ-プラチナ盤-』

 
 

マガジン