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演劇・ダンス

かながわネクストVol.1 神奈川県における舞台芸術の発展を期待して生まれた演劇の祭典

かながわネクストVol.1 神奈川県における舞台芸術の発展を期待して生まれた演劇の祭典

神奈川県の舞台芸術が将来にわたって豊かに成⻑するよう期待し、神奈川を拠点に活動を展開する若⼿・中堅のアーティストやカンパニーを支援する取り組みとして始まった「かながわネクスト」。

これまで公演を行ってきた数ある団体の中から、初回は2団体を選出し、「かながわネクスト公演」を開催することとなりました。

Vol.1として選ばれたのは、港町ヨコハマ・大岡川沿いに佇む寂れた映画館を舞台にした『フェアウェル、ミスター・チャーリー』を演じる「theater 045 syndicate」と、みちのく製菓の息子の死後、49日の法要で家族や友人の話から一人の男の人生が見える「静寂に火を灯す」 を演じる演劇プロデュース『螺旋階段』の2団体。

そこで今回は、この団体を主宰する中山さんと緑さんに、「かながわネクスト」に選出されての抱負と公演の見どころについて話を伺いました。

「かながわネクスト」を横浜の文化・芸術の発展と発信の突破口に

theater 045 syndicate主宰:中山朋文さん
theater 045 syndicate (シアター・ゼロヨンゴ・シンジケート)
主宰の中山朋文と俳優の今井勝法・真坂雅による演劇ユニット。「横浜からの発信」をコンセプトに作品を作っており、神奈川で活動する団体とのコラボレーションも多く、県内で活動する団体の交流の場を創出するなど神奈川の文化・芸術振興に尽力している。ハードボイルドでありながら軽快さと可笑しみをたたえた作風が特徴。

中山さん:私たちは横浜をベースに活動している劇団です。「かながわネクスト」の最初の企画で、実力・内容ともに評価をいただいたことは素直に嬉しいですね。脚本を担当してくれた波田野淳紘さんもご自身で劇団820製作所という劇団を主宰している戦友なので、今回ご一緒できることを嬉しく思っています。

今回の公演では、マグカル・パフォーミングアーツ・アカデミーの卒業生が3名ほどいるのだとか。コロナ禍で公演ができなかった卒業生が「かながわネクスト」でできるということにも大きな意味があると語る。

中山さん:神奈川の人が地元で公演することに意義があると思っています。今、横浜では20-30代で頑張る団体も増えているので、第一弾として選ばれた私たち2団体が突破口となり、今後も横浜の芸術シーンを牽引していくことができればと思います。

現在、個人的には東京・横浜を中心に活動していますが、東京で得た新しい技術・知識を持ち帰り、横浜でそれを生かすようにしている。地元にいろいろなものを還元したいという気持ちを常に持って活動をしています。

横浜(神奈川)で活動している劇団の作品が「かながわネクスト」で上演されることによって、神奈川における文化・芸術の土壌を作っていければと思いますし、こうして発表される作品が、のちは全国区でも通用するものとなるよう、互いに高め合っていけると良いですね。


第3回劇場本公演『ヨコハマ・ヤタロウ~望郷篇~』より

「人生の物語は自分で変えられる」。時間と人間模様が織りなす現実と夢のグラデーション

今回ノミネートされた作品は3年前に行った公演の再演。平成から令和に年号が変わったり、コロナで世の中の情勢が大きく変わったりしていた時の初演で感慨深いものがあるという。

―舞台の見どころはどのようなところになりますか?


theater 045 syndicate:「フェアウェル、ミスター・チャーリー」稽古風景

本作品はヨコハマの下町にある、古い映画館を舞台にしたストーリーです。伊勢佐木町の大岡川沿いにある映画館で上映される1本の映画をもとに、表と裏、夢と現実といったものが大きなうねりとなって絡み合っていく。その混沌の中で、さまざまな人間模様が展開されていきます。

スクリーンのこちら側と向こう側の描写に、現実と夢が交差する様が浮かび上がるところは見せ場のひとつ。そこには「人生の物語は自分で変えられる」というメッセージがこめられています。
過去と未来が絶えず混在する横浜という街で観劇し、帰りに紅葉坂を下った先で見える景色は、きっと観劇前とは変わっていると思います。そのまま中華街に行ったり、野毛の街中を散策したりと、ぜひ横浜という地が持つ空気や匂いを体感し楽しんでいただければと思います。

死を通じて生を感じ「生きていてよかった」が伝わる家族の物語


演劇プロデュース『螺旋階段』主宰:緑 慎一郎さん

演劇プロデュース『螺旋階段』
小田原を拠点に演劇公演を行うため2006 年に結成。年に2回のペースで小田原では秋、横浜では春に公演を行なっている。土地・時代・風刺などを通して甘く、切なく、笑って泣ける舞台を創作し続けている。

緑さん:私たちは小田原を拠点に、横浜と小田原で活動を行なっている今年16年目の劇団です。今回「かながわネクスト」のVol.1で実績を評価いただき、選別していただいたのはとても光栄だと思っています。この試みがVol.2、Vol.3と続くよう頑張りたいですね。

第29回公演『廻る座椅子で夢を見る』より

コロナ禍により、公演延期や中止を余儀なくされてきた劇団も多く、演劇プロデュース『螺旋階段』でも3回ほど舞台が延期になったと語る緑さん。今回も決して気は抜けないが、感染予防をしっかりと行い、公演が成功するよう稽古に励んでいるそうだ。

―舞台の見どころはどのようなところになりますか?

演劇プロデュース『螺旋階段』:「静寂に火を灯す」稽古風景

緑さん:今回の舞台は、ネット通販で人気の「海猫サブレ」を販売するみちのく製菓の東北智明が、若くして命を落とすところから始まる物語。49日の法要で、故人を偲ぶように友人や家族が生前の主人公について語っていきます。

家族や友人との会話で明かされるエピソードを通じて、主人公の人物像が浮かび上がるようになっており、笑って楽しみながら中盤ではグッとくるところもしっかりあるなど見どころも満載。いい意味で、チラシから想像する筋書きを裏切られる感じを楽しんでいただけると思いますよ。

観終わった後は、舞台で出てくる「海猫サブレ」の話にちなんでお土産にサブレを買ったり、周辺観光を楽しんだりするのもおすすめと緑さん。

2団体の舞台は、どちらも面白く、心に残る演劇に仕上がっていると思うので両方おすすめとのこと。特に今回は開催時期もGWを挟んで2回の実施となっているので、ぜひどちらの公演にも足を運び、横浜の文化・芸術を堪能する休日を過ごしてみてはいかがだろうか?

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