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クレイジーケンバンド 横山剣が見る横浜・後編

クレイジーケンバンド 横山剣が見る横浜・後編

「東洋一のサウンドマシーン」として幅広いサウンドを発信するクレイジーケンバンド(以下、CKB)。結成25周年を迎えた今もなお進化し続けている彼らは、通算22枚目のアルバム『樹影』を携えた全国ツアー『CRAZY KEN BAND TOUR樹影 2022-2023』を行っている真っ只中だ。そんなCKBを率いり、バラエティに富んだ楽曲を生み出す横山剣という人物を語る上で、「横浜」という街は切っても切り離せない。インタビューの前半では変わりゆく横浜の街についての印象や、神奈川県がCKBのメロディや詞にどのような影響を与えたかについて、CKBのこれまでの活動と共に語っていただいた。後半では地域に密着した活動や、新アルバム『樹影』に対する思い、開催中のツアーやCKBの今後について焦点を当てていく。

◆『ヨコハマはG30』テーマソングやみなと総合高校校歌など、地域に密着した楽曲制作

── 横山さんはみなと総合高校の校歌であったり、『ヨコハマはG30』のテーマソングであったりと、横浜にゆかりのある楽曲作りもされています。

横山:そうですね、頼まれて(笑)。

── このように、地域に密着した楽曲の制作を依頼された時のお気持ちをお聞かせください。

横山:ごみゼロのキャンペーンの時は中田さんだったころですね、市長が。そのころに横浜市が「こういう趣旨でメロディを、曲を作ってほしい」ということで。歌詞は全国から公募して、歌詞先で、歌詞にメロディをつけてくださいっていう。「あ、それはいいな」と思って。いくつか来た歌詞の中から、僕が選ばせていただいて、選んだやつにメロディをつけたんです。歌詞を作った方は奈良県の方。横浜じゃなくて(笑)。 

── 全国からの応募があったのですね。

横山:そうです。で、横浜みなと総合高校。これも学校から依頼があったんです。元々僕が行くはずだった港高校っていう定時制の高校があって。そこ行くはずだったんですけど、仕事の時間と学校の時間が合わないんで編入した途端に諦めた学校だったんですね。で、それがそのみなと総合高校の前身だったんです。のちにみなと総合高校に変わった時に、新設校っていうか…名義が変わって、校歌も改めるっていうことになって、それで頼まれたんです。これも卒業生の生徒さんが作詞した歌詞にメロディをつけるっていう。いずれも詞先ですね、ごみゼロの歌も、校歌も。いわゆる校歌としても機能するんだけど、バンドとかでやればちょっとゴスペルっていうか、ソウルっぽくできるっていうのも狙って。リズムつけると割とファンキーになるような、かっこよくなるようにっちゅうのは思ったんで。卒業式の時に鍵盤弾いて歌うチャンスがあったんで、そん時こういう風に歌うこともできますよ、みたいなサンプルをやってみたんです。

── それは生徒さんたちにとっても良い思い出になりましたね!

横山:その(生徒さん)中から、すごい天才的なミュージシャンが1人いるんですけども。その方がその校歌を歌っていたって聞いて感動しました。『TENDRE』っていうすごい天才的なクリエイター、音楽の。シンガーソングライター。彼はその卒業生で、僕の歌を歌っていたって聞いて。「そんな天才出たんだ」って。嬉しいなって思って。

◆海外から帰ってきたときに「ちょっとずつ日常に慣らす」ことができる街

── 最新のアルバム『樹影』の中には「ドバイ」であったり「ワイキキ」であったりと、様々な国の都市がタイトルとして使われています。横山さん自身も国内、国外問わず旅行に行かれるのがお好きとのことですが、世界の都市と比べた時に、横浜ならではの魅力はどういったところにあると思いますか?

横山:海外旅行から帰国する時ってちょっと寂しい気分になっちゃうでしょ。だけど、横浜には中華街があるから、例えば、香港から帰国した足で中華街に行っちゃえばまだ香港旅行が続いてる気分を味わえる。それは中華街大作戦(『クレイジーの中華街大作戦!』)って曲の歌詞にもあるんですけど、そういうところが横浜の魅力かな。海底に潜っていたダイバーが潜水病にならないよう再圧チャンバーでちょっとずつ慣らしてくように、日常に、ルーティーンに気分を慣らしていく、横浜はそれができる場所。

── 「寂しくならない」っていうのはいいですね。

横山:はい。で、もう一個頭切り替えて、海外旅行から帰るんじゃなくて、「今から横浜旅行に行くぞ」って気持ちに、自分でこうマインドセットを変える。これまたワクワクしちゃう。そこに無理がないというか。特に羽田からの湾岸線で、バスですね。本当は本牧に行ってほしいんだけど、止まらないから横浜駅に行っちゃうんだけど(笑)。 バスがありますね、京急の。あるいはタクシーでも自分の車でも。海外から帰ってきて、ベイブリッジ渡ってみなとみらいの夜景が見えると、なんかワクワクする。「あ~日本帰ってきちゃったな」とはならない。

── あの風景は素晴らしいですよね。

横山:そうですね、あの風景なんかちょっとシンガポールっぽいっていうか。いい感じですね。

── では海外の方に横浜の魅力を伝えるとしたら、どんな風に伝えますか?

横山:そうですね。イタリアの人に会ったら、日本のナポリとか言って(笑)。 ナポリっていうのが、アメリカナイズしているとこもあったりとか…米軍があったりとかですね。で、港町っていうのと、あと不良じゃないんだけどちょっとファンキーな人が(笑)。ジローラモって人が知り合いでよく話をするんですけど、横浜とか横須賀とナポリはそっくりだって、フィーリングが。町のあれがそっくりっていうより雰囲気、ムードがそっくり。イタリアの人にはそう言って、イギリスだったら同じ島国で、やっぱり海に隣接していると。ドーバーとかあの辺の感じですかね、とかって適当なことを言うんですよ(笑)。とにかく港っていうと、通りがいいんじゃないですかね?港町で、ウェルカムという。出入りが激しいとこだから、来るもの拒まず去るもの追わずという。あんまり人のプライベートに深く干渉せずに、ちょっとデリカシーをもって接してくれる。「港町のノリって世界共通だよ」って話をどっかで聞いたことあったけど、あぁそうだろうなぁと。クレイジーな人、普通の人、不良、ワケありな人、自由人、得体の知れない人、もう、いろんなカラーがゴッチャゴチャになってる(笑)、そんな感じですね。だから住みやすいかどうかはわかんないけど、ハマったら離れらんないっていう。

── そうですね、本当にいろんな人がいる街ですよね。

横山:いろんなね。僕なんかバンドをやっていてもあまり偏見とかないし、特に珍しがられないし。すごい普通に生活できるって意味では楽なとこですね。いい意味でほっといてくれる。

◆「こういう機会だから」こそイマジネーションを広げ VRゴーグルでドバイへ

── 『樹影』はCKB通算22枚目のアルバムとして、CKBにとってどのようなアルバムになりましたか?

横山:コロナで「あっち行きたい、こっち行きたい、海外行きたい」っていうフラストレーションとかを逆に…ピンチこそ最大のチャンスというか、逆説的に捉えて。こういう時だからこそ、火事場のバカ力というかね。そういうヒントで「VRゴーグルつけてドバイ行けばいいじゃん」とか。まぁVRゴーグルすら持っていないんですけど(笑)。例えば、ね。 ドバイというかVRゴーグルすら妄想なんですけど、でも妄想するっていうのは、イマジネーション広げるっていうのは、こういう機会だからいいなって思ったんですよね。ずーっとそれだと辛いかもしれないけど。ハワイも全然行ってないけど、本牧には本牧チャウメンっていうハワイのローカルフードが『Boogie Cafe(ブギーカフェ)』にあるし。あと『Mooneyes(ムーンアイズ)』っていう、目玉のマークのね。あそこの『MOON Cafe(ムーンカフェ)』にもハワイのドライブインのようなロコモコとか、そういうね。ホノルルチャウメンってのが、同じチャウメンが2種類本牧にあるわけですけど。チャウメンってのはなんか中華料理のようなハワイ料理のような、エキゾチックな。「それ食べればハワイにワープ出来るじゃん」みたいな感じの曲ですね、『ワイキキの夜』は。なのでネガティブになりそうな気持を、マインドセット、考え方1つで面白くしちゃうみたいな、そういうくすぐりを提案してみたの。

── 聴いている人も少し世界を旅行しているような感覚を楽しめますね。

横山:そうですね、世界旅行を家にいながらするっていう感じ。

── 耳から旅行ができますね。CKBは現在この『樹影』のアルバムを携えたツアーを行っています。コロナ禍においてしばらくツアーができない期間もあったかと思いますが、今回のツアーに対する意気込みをお聞かせいただけますか?

横山:年をまたいで来年の3月まで巡ります。今回のアルバム『樹影』を携えてのツアーということで、アルバムから10曲ほど演奏するんですけど、あとは過去に22枚も出してるんで、どれを持ってくればいいのかっていう…ちょっと迷ってるとこもあってですね(笑)。じゃあ福岡に行ったら歌詞の中に「博多人形」とか出てくるこの曲を持ってこよう、とか、横須賀だったら横須賀にちなんだ曲やろう、とか。そんな感じで会場によって若干変えてみようかなって。あとカバーアルバムを昨年出したんですけど、昨年のカバーアルバムのツアーで全然手をつけてなかった曲もあるんで、そのやっていない曲を、今年はちょっと手つけてみようかと思いました。

── ライブ中のお客様の熱気など、コロナ禍において変化した部分はありますか?

横山:実際声出しちゃいけないとか色々規制があるんですけど。やっぱりカメラしかない演奏で配信するだけと、お客様が目の前にいるのとでは全然「気」みたいなのが違うんで。たとえ大声が出せなくても同じ熱量で波動が伝わって、お互いにエネルギーを交換しているんです。それがライブの醍醐味ですので、決して物足りなさを感じるということはなくなりました。


◆22枚目のアルバムは「ネクストレベルのファースト」アルバム

── では最後に、今後の活動やこれから挑戦したいと考えていることがあればお聞かせください。

横山:この年齢、今60過ぎが3人いて1人休憩中ですけど…生涯現役でやってく、続けるということが目標ですよね。毎年「こんなアルバム今年できちゃったんだ」って感じで、ほっとけば出てくるんで。目標を考える前に結果が出ちゃうんで、出来てから「これはどういうコンセプトにしようか」って。コンセプトは後から気づく。まぁ旅行するときも、例えば韓国とか行くときも適当な駅で降りて、それでホテルの部屋に戻ってから「今日行った場所はここだったんだ」みたいな。まず見る前に飛んじゃうみたいな、そういう感じですね。それはずっと変わらないテーマだと思います。

── 今回の『樹影』のアルバムも、出来上がったものを見て「旅行」というテーマを見つけたのですか?

横山:
言われてみれば、みたいな(笑)。とにかくもうバンバン出てきちゃうんで。一応『樹影』ってタイトルが決まった時点で多少…『樹影』ってのは本牧の2丁目にあった喫茶店の名前なんですけど。その喫茶店がすごくクリエイティブな…自分にとってのですね、クリエイティブに物事を考えたり発想したり、想像したりする、歌詞書いたりとかする場所だったんで、その感じの気分に立ち返って。バンドも25年ということで、22枚目のアルバムなんだけど、ファーストアルバムっていう気分で。ネクストレベルに上がっての1年生。中3から高校1年生みたいな、そういう進学しての1学期みたいな意味でのファーストアルバム。ネクストレベルのファースト、っていう気分で向き合いました。

結成25年目を迎えた今、通算22枚目のアルバムを「ネクストレベルのファースト」と称した横山。これこそがCKB、そして横山自身が絶えず進化し続ける理由であろう。今年の9月に東京から始まった『CRAZY KEN BAND TOUR樹影 2022-2023』では、そんな進化をし続ける彼らの新しいサウンド、そして変わらずに愛され続けきた楽曲を楽しむことができる。神奈川県での公演は11月19日に神奈川県民ホール、12月4日に横須賀市文化会館大ホール、そして翌年3月4日に厚木市文化会館大ホールで予定している。

横山剣(よこやま けん)
1960年7月生まれ、神奈川県横浜市出身。音楽事務所『ダブルジョイレコーズ』の代表取締役。1997年に本牧の『イタリアンガーデン』にてクレイジーケンバンドを結成し、以来バンドのリードボーカルを務める。バラエティに富んだヒット曲をリリースする傍ら、多くのアーティストへの楽曲提供も行う。デビューより25年目を迎えた今年、8月3日に発売した通算22枚目のアルバム『樹影』を携えた『CRAZY KEN BAND TOUR樹影 2022-2023』を全国にて行っている。詳しくはオフィシャルホームページをご覧ください。

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