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マグカル大使・熊本マリさんに聞く 神奈川のカルチャーと“夜会”のハナシ

マグカル大使・熊本マリさんに聞く 神奈川のカルチャーと“夜会”のハナシ

(トップ画像:熊本マリさん2022©Shimokoshi Haruki_衣装提供:ヒロココシノ)

音楽のチカラで文化×芸術×人をつなぐ 情熱のピアニスト・熊本マリさん

スペイン音楽に精通したピアニストの熊本マリさんは、横浜育ちで横浜在住。彼女のベースには、自由で華やかで異国情緒ただよう横浜の街があります。今回はマリさんの地元・横浜で開催された授賞式を中心に、今年のマグカル大使の活動とおすすめイベントについて聞きました。

小学生から70代まで出演! 地域に根付く「ふじさわ市民ミュージカル」を鑑賞

マグカル大使として、文化や芸術の魅力で人をつなぐ活動を応援しているマリさん。3月12日には、「かながわミュージカルアワード2023」の授賞式に出席。県内の伝説や民話などをモチーフにした地域性のあるオリジナル作品を募り、事前審査で優れた2団体を選定。審査委員の一人として、その栄誉を称えました。


「かながわミュージカルアワード2023」授賞式

――今年は7団体がエントリー、上位2団体が表彰されましたね。

熊本 応募してくださった皆さん、ありがとうございました。受賞した「ふじさわ市民ミュージカル」と「横浜市民こどもミュージカル」の皆さん、おめでとうございました。すべての作品を拝見しましたが、どの台本も地域色が豊かでストーリー性もあって素晴らしかったです。上位の2団体は、出演者が生き生きと力強かったのが印象的でした。


「かながわミュージカルアワード2023」で1位を獲得した「ふじさわ市民ミュージカル」

のびのびとした指導に小学生から高校生が集う「横浜市民こどもミュージカル」

――授賞式当日は、見事1位に輝いた「ふじさわ市民ミュージカル」の上演も。

熊本 小学生から70代まで異世代が交わるグループ活動っていいですよね。音楽と舞台照明、ステージの使い方にもこだわっていて見応えがありました。そう、授賞式で「次は生演奏とコラボレーションしてみては?」と、提案したんですよ。


「かながわミュージカルアワード2023」授賞式

――生演奏でミュージカルとは、挑戦ですね。

熊本 ピアノはもちろん、フルートやギターも取り入れやすそうだと思って。実現したら面白いし、作品に奥行きが出るはず。今後のアイデアにしてもらえたらうれしいです。

「ピアノの音色が持つパワーを信じて」 マリさんが演奏に込める思い

――昨年11月に開催された、第34回全国健康福祉祭「ねんりんピックかながわ2022」にもピアノ演奏付きの応援メッセージを寄せていましたね。

熊本 スポーツの祭典にピアニストらしいエールをと、『剣の舞(つるぎのまい)』という曲とメッセージを送りました。徒競走やリレーのBGMにも選ばれる曲なので、躍動感が届けられたかな。ピアノが持つパワーってすごいので、音楽が持つ力に思いを込めました。

――演奏といえば、マリさんが毎年秋に開催している「熊本マリの夜会 Soirée Mari Kumamoto」も近づいてきました。新たな企画は進んでいますか?

熊本 10回目となる今年は、10月5日に東京文化会館で開催します。コンサートではポピュラーな曲とテーマに沿った曲を演奏するのですが、今回は生誕100年を迎えたスペイン音楽家「アリシア・デ・ラローチャ」に注目します。20世紀を代表するピアニストの一人で、幼少期から約70年と長いキャリアを誇る魅力的な女性です。

熊本 昨年の夜会では、「ブラボー!」というお客さまの生の声に感動。ピアニストはコンサートまでは孤独ですから、晴れて演奏できる幸せをかみしめました。今回のコンサートでも選曲はお客さまがどう思うかを最優先に、さらにそれが自分の弾きたいものと合えば幸せ。聴いてくださる皆さんと共鳴できたらと思っています。


シックでゴージャスなドレス姿の熊本マリさん

手が小さくてもピアニストになれる! 経験からのメッセージを届けたい

2008(平成20)年から大阪芸術大学の教授として、後進の育成にも努めているマリさん。コンクール入賞、指導者、上達すればOKと目標が異なる学生一人一人に緩急をつけた指導を行っています。

――指導で意識していることはありますか?

熊本 ピアノを弾くときに大切なことは、自分の欠点とチャームポイントを知ること。例えば、人はそれぞれ「手」が違って、私はとても小さいんです……。指導者の一人から、プロのピアニストは無理だと言われたこともあります。でも、別の指導者から「風呂でマッサージをしたらいい」と言われて実践しました。ピアノ曲には手が小さい人向きのものもあるので、個性を知って伸ばすことが大切だと思っています。

――なるほど、音楽の世界にも多様性が求められるのですね。

熊本 そう、生徒に同じメソッドは使えませんから。私も通ったスペインの音楽学校では、指導において年齢制限はありません。目指すものが一人一人違うように、指導でもその人らしさを最優先。そういう姿勢も大切だと思います。

熊本 私は、ピアノ教育に「ラテン音楽」がふさわしいと思っていて。運指の指導より感情表現を重視することで、感性が育まれる気がしています。

――スペイン音楽というと、ギターやフラメンコの印象が強いのですが。

熊本 優れたピアノ曲も多いですよ。明暗がはっきりしていてイメージしやすいし、メロディーも日本人好みだし。今年の夜会で紹介するアリシア・デ・ラローチャさんも素晴らしいですから、ぜひ注目してくださいね。

――スペイン音楽をピアノ教育に! どんなスタイルで進めていきたいですか?

熊本 以前、東北で「ピアノ・クリニック」と題したボランティア活動に参加したことがあって。その時の経験に似た形で、ピアニストとして公開レッスンをしてみたいです。子どもから大人まで自由に参加してもらえば、思うように弾けない理由やうまく弾くためのレクチャーができると思います。マグカル大使の活動でもぜひ! 歴史的価値が高い神奈川県本庁舎を会場に実現したいですね。


2018(平成30)年3月「愛のふれあいピアノコンサート」(於:県立青少年センター)

【プロフィール】
熊本 マリ Mari Kumamoto
ピアニスト/神奈川県マグカル大使

東京生まれ。5歳からピアノに親しみ、10歳で家族とともにスペインに移り住む。
翌年からスペイン王立マドリード音楽院、17歳でジュリアード音楽院、20歳で英国王立音楽院へ。
22歳で帰国し、24歳の時に日本でデビュー。スペイン音楽のスペシャリストとして世界初となる、スペインの作曲家フェデリコ・モンポウのピアノ曲全集の録音を完成させた。
国際ピアノコンクールの審査員やテレビ・ラジオの出演、執筆活動など活躍の場は広い。
2008年には大阪芸術大学教授に就任し、後進の指導にも尽力している。横浜市在住。

公式webサイト http://www.marikumamoto.com/
Instagram  https://www.instagram.com/marikumamoto/
Twitter   https://twitter.com/marikumamoto
YouTube   https://www.youtube.com/@marikumamoto627/videos

【コンサート情報】
■熊本マリの夜会 Soirée Mari Kumamoto
スペインの熱い夜〜アリシア・デ・ラローチャへのオマージュ
2023年10月5日(木)18:30開演(18:00開場)東京文化会館 小ホール
問い合わせ:プロアルテムジケ 03-3943-6677 https://www.proarte.jp/

■大阪芸術大学 プロムナードコンサート 2023
・名古屋公演
2023 年 8 月 23 日(水)18:00 開演(17:00 開場)愛知県芸術劇場 コンサートホール
・大阪公演
2023 年 8 月 24 日(木)18:30 開演(17:30 開場)フェスティバルホール
・東京公演
2023 年 8 月 28 日(月)18:00 開演(17:00 開場)サントリーホール 大ホール
予約・問い合わせ:大阪アートエージェンシー 06-6372-4583(平日9:00~17:00)

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