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音楽

【ピアニスト松本有理江さん】愉音の音楽体験を通じて伝えたいこと

【ピアニスト松本有理江さん】愉音の音楽体験を通じて伝えたいこと

年齢や国籍、障がいなどに関わらず、誰もが参加できる音楽体験を提供する団体「愉音(ゆおん)」。舞台に上がって演奏家を間近で鑑賞できる0歳からのバリアフリーコンサートやお寺でのコンサートなど、愉音の企画はユニークです。今回は愉音を主宰するピアニスト、松本有理江(まつもとゆりえ)さんのインタビューをお届けします。

何よりピアノが好きだった幼少期

愉音を主宰する松本有理江さんは、国立音楽大学附属中学校・高等学校から国立音楽大学と同大学院に進み、首席で卒業。その後ハンガリーで研さんを積み、2012年にウィーンへ移り、2018年に帰国。結婚・出産・育児をしながら演奏活動を行う中で、愉音を立ち上げました。

――有理江さんは何歳からピアノを始められたのでしょうか

小さい頃からピアノが大好きで弾きたがっていたそうです。ただ、本格的に習い始めたのは小学校に入る前です。初めてピアノを教わったのは、新潟県三条市の先生でした。父が転勤族だったため、小学校を3回変わったのですが、母はそのたびにピアノの先生を探してくれました。今のようにインターネットがなかったので、大変だったようです。

――音楽コースのある中学校を受験されたきっかけは

小学4年生の時に出会った、ドイツ留学経験のあるピアノの先生がとても尊敬できる方でした。その縁をきっかけに「将来はピアニストになる」と決めていました。そんな折、小学6年生でまた転勤・転校の話が出て、担任の先生の勧めで国立音楽大学附属中学校を受験することになりました。母からは「音楽中学に入れなかったらピアノを諦めなさい」と言われ、ますますピアノのレッスンに夢中になりました。

――大学院を卒業された後、なぜハンガリーへ留学されたのですか

中学生の頃にテレビで観たハンガリー出身のピアニスト、アンドラーシュ・シフ氏の特集番組をきっかけに海外でピアノを学びたいと憧れていました。大学院を卒業した後、その思いを実現するためにハンガリーへ留学し、シフ氏の先生であるフェレンツ・ラドシュ氏に学びました。

――異国での暮らしは大変だったのでは

当時のハンガリーは、限られた家にしか電話がない時代でしたが、不便も楽しめました。日本から一人でピアノを学びに来た私に、ハンガリーの人達は家族のように親切にしてくれました。心細くなる暇はなかったですね。ハンガリーでは、素晴らしい先生と優しい人達に囲まれ、音楽観すら変わる4年間を過ごしました。

初めて聴くコンサートは良いものを届けたい

――ご息女でヴァイオリニストの紘佳(ひろか)さんは、どんなお子さんでしたか

私が自宅でピアノを弾いていたこともあり、遊ぶようにピアノに触れていました。でも、ピアノを始めるにはまだ幼いから手も小さくて。そこで彼女が4歳になる前に、幼児でも始められる分数ヴァイオリンを持たせてみたらとても気に入って。ヴァイオリンは持ち歩ける楽器だったので、旅行に行くときも欠かさず練習する子でした。紘佳は小さい頃からヴァイオリンがとても好きだったようです。


松本紘佳さん(ヴァイオリン)と松本有理江さん(ピアノ)

――愉音のコンサートは0歳の子が入れる時間帯がありますが、始められたきっかけは

ウィーンでの6年間の仕事を終えて帰国したら、日本でどんな音楽活動をしようかと考えました。子ども向けのコンサートはたくさんあっても、赤ちゃんも一緒に会場で聴けるクラシックコンサートはまだまだ少なくて。私が暮らす青葉区にはフィリアホールという素晴らしいコンサートホールがあるので、そこを会場に演奏家のすぐ近くで聴けるクラシックコンサートを始めました。

――車いすユーザーもいらっしゃいましたが、何か意識されていたことはあったのでしょうか

区役所で障がいのあるお子さんの保護者と話す機会があり、コンサートに賛同してくださいました。障がいのある子も一緒に聴きたいという声を取り入れていくうちに、バリアフリーコンサートになっていきました。


画像提供:愉音

――演奏家も企画も多彩で驚きましたが、心がけていることはありますか

愉音が実現したいことに賛同し、音楽の持つ真の姿と魅力の伝わる演奏、音楽の持つポジティブなエネルギーの伝わる演奏をしてくださる方に出演していただいています。


演奏家と同じ舞台・近距離で鑑賞することで、音楽を全身で感じられる

――愉音ならではのこだわりはありますか

お客様が小さなお子さんだからといって、聴きやすい曲目にはしないということでしょうか。0歳の赤ちゃんにも真摯に良い演奏を届けたいと思っていますし、コンサートの構成でもクラシック好きな大人を満足させられるようにと考えています。

音楽を通じて地域の人を結ぶ

松本有理江さんは、ハンガリーでの留学生活で周りの人に親切にしてもらった経験から、誰もが参加できるコンサートを開催しています。その活動は青葉区で始まり、神奈川県、近隣県へと広がっていきました。
継続的な公演活動が認められ、2022年度、2023年度は「東急子ども応援プログラム」の助成を受け、「みっけ!愉快な音楽・田んぼくらぶ」「みっけ!愉快な音楽・畑くらぶ」を実施しています。年間約10回のイベントを開き、150組の親子を無料で招待しています。


画像提供:愉音

「近所のお寺で、遠出せずに音楽に触れられたら」という思いで今年から始めたクラシックコンサート「TERA CONCERT」も大好評です。高齢の方や赤ちゃん連れなど外出が難しい人たちも、地元のお寺で音楽を聴いてホッとできる時間を過ごしてもらえたら……という気持ちが活動の原動力となっています。会場のお寺は、リサーチから交渉・下見まで全て有理江さんが行っているというから驚きです。


画像提供:愉音

愉音の2023年度コンサートはこれまでも、これからも、コンサート参加を通じて顔見知りになったり、初めて来たときは赤ちゃんだったお子さんが成長していたりと、青葉区から音楽でつながる人の輪が広がっています。

「TERA CONCERT」の会場はいずれも名刹、「Let’s come together!」 は神奈川県を飛び出して群馬県高崎市へ。音楽のチカラを神奈川県から全国に届ける、愉快な音楽に注目です!

愉音[ゆおん]ホームページ

愉音は、SDGs(持続可能な開発目標)とSTEAM教育の理念をもとに、バリアフリーで触れる参加型の音楽体験を提供し、生涯にわたる心身の健康や、地域におけるつながりの厚みを増すきっかけを作ることを目的としている。

■2023年度 TERA CONCERT
第3回 2023年11月11日(土)円覚寺 如意庵(神奈川県鎌倉市)
第4回 2023年11月23日(木・祝)東勝寺 本堂(神奈川県藤沢市)

■2023年度 Let’s come together!
2023年12月22日(金)アートフォーラムあざみ野(神奈川県横浜市)
2024年3月9日(土)高崎芸術劇場音楽ホール(群馬県高崎市)

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