現役ネイリストが魅了された、藍という植物の無限の可能性

藍(アイ)という植物をご存じですか。藍染めを経験したことがある人もいるかもしれません。そんな藍には染め物以外にもたくさんの魅力があると、私はある女性から教わりました。
横浜市在住のネイリスト、佐藤沙耶香(さとう・さやか)さん。彼女は藍に魅せられて、今では無農薬農園で種から育てて収穫し、心から楽しんでいます。彼女をときめかせる藍について、たっぷりと伺いました。
今まで知らなかった植物本来の力


沙耶香さんは元々「なんだか調子が悪い」というような体の不調に悩まされていたそうです。この不調を治したいといろいろ試してたどり着いたのが、植物本来の力。過酷な自然環境の中、葉を広げ、花を咲かせる野草の力強いパワーこそが探していたものなのかなと、野草の会のハイキングに参加するようになりました。
「さまざまな植物の知識を得るにつれ、山の景色はみるみる変わっていきました」
この植物には抗菌作用があり、傷口に効く。この植物は煎じて飲むと体を温め、血行を良くする作用がある。このような先人の知恵を、身をもって体感していったそうです。
植物をアートへ昇華

野草に興味をもち、さまざまな土地で四季折々の野草散策会へ参加していた頃、自ら育てた藍を使って作品を生み出す人に出会います。株式会社アートモリヤ代表で藍左師※(あいさし)の守谷玲太(もりや・れいた)さんです。
※ 藍左師とは守谷さんの造語で、日本伝統の藍と現代左官を融合させた職業です。
藍の魅力を最大限に引き出した多くの作品を発表し、現在は藤沢市を拠点に各地で個展やワークショップを開いている守谷さん。沙耶香さんは、「藍は『衣食住芸』に使うことができる」と教わったと言います。
例えば、「衣」は染め物。「食」はお茶やお菓子の材料、漢方。「住」は壁の塗料や左官材。「芸」は絵画やオブジェをはじめとしたアートなど。藤沢市役所本庁舎や江の島公衆トイレにもアートモリヤの作品があり、個性豊かな藍が私たちの街を彩っています。
アートモリヤ
公式サイト:こちら
もともと藍染布が好きで集めていた沙耶香さんでしたが、染め物だけでない藍の万能さ、汎用性の高さにほれ込みました。そして、この教えをさらに発展させて、『衣食住芸』に『美』も加えられるのではと、本業であるネイルに藍を取り入れることを決めました。


ネイル以外の表現をしたい!藍の美しさをもっと知ってほしい!

さらなる表現を求めて、次に沙耶香さんが向かったのは、水墨画教室。水墨画を基礎から学び、ついに藍を取り入れた作品を仕上げました。藍独特の深み、柔らかさが水墨画と合わさることにより、表現の幅がより広がったように感じます。新作も現在制作中とのこと。今後は藍を使った水墨画作品の一般展示も考えているそうなので、ぜひ沙耶香さんからの情報をチェックしてみてください。
藍の歴史をさかのぼると、合成染料の登場で国内生産量が激減したり、戦時中は食糧を優先させるために藍の栽培が禁止され絶滅の危機にあったりと苦難が多く、守り抜いてくれた人たちがいて今があるようです。
そんな先人たちの思いを知り、沙耶香さんは藍の魅力を伝える活動の場を広げています。藍を種から育て栽培して染め物を行うワークショップを行ったり、藍を干して作ったお茶を振る舞ったり。沙耶香さんの周りには確実に藍のファンが増えています。
「藍の魅力はもちろんなのですが、他の野草も然り。自然と共生し、植物の力を重んじてきた先人たちの教えってとても面白いんです。少しでも興味を持ってくれたらうれしいです」
沙耶香さんの活動はまだまだ続きます。

(写真提供:佐藤沙耶香)
佐藤沙耶香
公式サイト atelier Soranite (アトリエ ソラニテ):こちら