
フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2013 オープニングコンサートレポート
こんにちは、ぼくはぺーる・ぎゅん太っていいます。
こどものころペール・ギュントのお話が大好きでした。
どういうところが好きだったかというと、主人公が凄く情けないところと、人生のほろ苦さを感じるところ。それから「アニトラ」というのがいるんですが、これがとても妖艶な感じがしてたまらなかったからです。子供だって妖艶さには弱いですからね。
小学校の音楽の時間には、今度は読み知ったペール・ギュントを聴く事になりました。すぐに気に入り、親しみやすいメロディを口ずさむ。子供のころのそういった記憶というのはずっと残っていたりします。
さて年月は経ち、残念ながらおっさんになっても子供のままだったペーる・ぎゅん太は舞い降りたのでした。
川崎の地に!
東京交響楽団の演奏する!!
ペール・ギュントを!!!
聴く為に!!!!
(でも少し早く着いたのでラゾーナでミックスグリルランチを食べたり、Tシャツを物色したり、ダラダラしたりもしました)
本日は「オール・グリーグ・プログラム」。
組曲「十字軍の兵士シグール」作品56より「中世の行進曲」
ピアノ協奏曲 イ短調 作品16
それからお目当ての「ペール・ギュント」です。
ミューザ川崎シンフォニーホールはとても作りが素敵です。段々畑みたいな、らせんみたいな。
うつくC!
パイプオルガンもあります。ぼくはパイプオルガンが大好きなのでテンションが上がりまくり、鼻孔から出血しそのまま昏倒するのか死ぬのかどうなんだ、というところで…
狂熱のLIVE!!
すぐさま舌なめずりしながら耳を尖らせました。
書くべきことを色々はしょって勝手な感想を言わせていただくなら、度肝を抜かれたのはトライアングルのサウンドです。例えば、ジミヘンドリックスエクスペリエンスがアンプから煙をあげて演奏しているとして、そこでトライアングルをチーンと鳴らしたとします。
何も聞こえやしないでしょう。
けれどオーケストラがどんなに重厚なアンサンブルを重ねても、トライアングルの響きはしかるべき配置の中で埋もれる事はありません。スモークサーモンに対するケッパーと言いましょうか、親子丼における三つ葉と言いましょうか。
オーケストラアレンジとはそもそもそういうものだとも言えるのかも知れないですが、ホールの作りが相乗効果を与えています。
指揮:ユベール・スダーン 演奏:東京交響楽団 撮影:堀田正矩
指揮:ユベール・スダーン ピアノ:小菅優 撮影:堀田正矩
指揮:ユベール・スダーン ソプラノ:新垣有希子 撮影:堀田正矩
音楽というものは中空から捕まえてくるものだと多くの神のような作曲家達は言いますが、捕まえた音は鳴らされる事でまた中空に帰っていく。滑らかな余韻が残るこのホール自体が素晴らしいサウンドシステムなのです。ふとあたりを見渡すと居眠りをしつつ楽しまれている方は案外と少なくありません。
ブラボー!
そう声があがると、ビクン!と身震いしてお目覚めになられる方もいらっしゃるようでした。それは素晴らしく優雅な事だとぼくは思います。ここでこうしてこの音楽を聴く事でしかみられない夢というものがあるのは言うまでもないからです。
抒情があり、ペーソスがあり、ブルーズがあり、洒脱さがあり、満足と幸福による眠気があり、鳴りやまない拍手があっておしまい。
う~ん!ぼくの胸はいっぱいになっていました。
ペール・ギュントはその人生の最後に、「平凡な人間をボタンに溶かしこむ事を仕事としている」という訳のわからないおっそろしいボタン職人に、「平凡な人生を送ってきてはいない事」を証明するハメに陥って駆けずり回ります。
こうした事から教訓を読み解くのではなくて、ただただそのままに受け止めてしまう。
ただただ、ボタンに人間を溶かしこむとはどういう事なのか考えこんでしまう。
ぼくは何にも昔と変わっていないなあ。
そんな事を思いつつぺーる・ぎゅん太は川崎駅に向かい、京浜東北線に乗り込むと物語の世界に帰っていきました。
■ ライター・プロフィール ■
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石神 甚(Jin Ishigami)
蒙古タンメン中本、ピスタチオのジェラート、スティーリー・ダン、プリファブ・スプラウト、デヴィッド・クローネンバーグとか好き。
PROPOSEってバンド、やってます。
Soundcloud : https://soundcloud.com/propose
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