
時を紡ぐ蔵元で 感性をたっぷり充電!
Kanagawaギャラリーさんぽ
File.7 okeba
山本詩野(ギャルリーワッツ)
「お酒を飲むのが好きですか?」と聞かれたら、躊躇なく「はい!」と即答する類いのわたくしですが、陶芸家、岡村朝子さんから聞いて、ずっと行ってみたいと思っていた所がありました。
その名も「okeba」。okebaは桶場のことで、酒樽や道具の修理製作を行う工房を表しています。
ギャラリーさんぽは、今回から酒蔵めぐりに……なったわけではありません(笑)。
明治5年に創業され、湘南にたったひとつだけ残っている蔵元「熊澤酒造」の一角にある「okeba」が今回紹介するギャラリーショップです。
エントランスには、訪れる人たちを出迎えるかのように並ぶ古い大徳利。やはり蔵元ならでは。風情ある佇まいの引き戸を開け、わくわくしながら中へ。
入ってすぐの空間では、okebaを教えてくれた岡村朝子さんと友太郎さんの姉弟作陶展が開催中でした。お二人は平塚が地元で、ここでは毎年開催するお馴染み作家さん。このスペースは、毎月さまざまなジャンルの作家の企画展が行われています。
「器を作るより、陶板などで造形を表現するほうが好き」という朝子さんの作品は、日常をとらえた情景をデッサンするような心地よさが感じられます。
一方、友太郎さんは、茶目っ気のあるテイストから正統派まで、幅広く作陶しています。友太郎さんは陶芸活動の傍ら、神奈川県内で人気のイベント「大磯うつわの日」の実行委員長を務め、地元陶芸家仲間の富田啓之さんたちと一緒に、器と人が出会う場作りをしています。なんと今年で9回目! 10月末頃に開催されるそうです。
okebaとお付き合いが長くなった岡村朝子さん(左)と店長の村石和歌子さんはまるで姉妹みたい。
さて、奥に入ると、どーんと迫力のある大空間。100年以上桶場として使われていた倉庫を改修して、湘南地域のアーティストが作るクラフトや、ヴィンテージ家具・古道具を扱っています。
天井に近い棚には、酒造りの役目を終えた道具がぎっしり、その名残をとどめていました。
珍しい古道具や、かわいらしく懐かしいものが並んでいるのは、店長の村石和歌子さんセレクトによるもの。古道具が好きで「もののめや」という屋号で買い付けと卸をしていたことから、okebaと縁ができて店長を任されることになったといいます。
村石さんは前回紹介した「つきやま」さんの立ち上げメンバーだったこともお話中に発覚。どうやら、湘南エリアを盛り上げるのに欠かせない人物のようです。
「現代の作家ものには作り手の思いが込められていて、古道具には代々の使い手の思いが詰まっていて、どちらにも『生活に欠かせない心の豊かさ』を感じるんですよね」と村石さん。
確かに、この歴史ある空間の中に並ぶものはどれも趣の波長があっていて、それを語っています。
2階には絵本や古書のコーナーがあり、okebaのオーナー自身が子育て中に読み聞かせでコレクションしていたという貴重な絵本も。1冊手に取ると次から次へと連鎖するように興味が尽きないほど、文化に触れる魅力的な書物が並んでいます。うっかりするとここだけで軽く数時間経ちそう。
「多岐にわたるジャンルでものを紹介しているので、ゆっくり回遊しながら、シンパシーを感じるものと出会って、暮らしを楽しんでいただけるといいなあと思います」と村石さんは話します。
さて、okebaのある敷地には熊澤酒造が営むトラットリアやカフェ、ビール酵母をいかしたパン屋さんが小さな村のように集っています。大きな木々に覆われる入り口は、アリスインワンダーランドか、ナルニア国物語か、まるで別世界に迷い込むような気分に。
熊澤酒造の「湘南ビール」は有名ですが、地元農家さんの果実などを用いたローカルファームビールも人気だそう。ラッキーなことにちょうどリリースされたばかりという「片浦レモンエール」をオーダーできました。では、一杯だけ(笑)。
ジューシーで濃い旨味の自家製ソーセージに、爽やかなレモンビールの相性が最高!
おいしい食事と蔵元ならではのお酒で一息ついて、またokebaに戻って楽しい時間を過ごす……そんなふうにゆっくり1日を満喫するお客様が多いのがよくわかります。
150年以上続く酒造りの場が、さらに地域文化を醸成している姿は頼もしく、これから100年、その先も受け継がれていく心の豊かさを想像するうちにロマンチックな気分になり、2杯めのビールを手にしていました。
《ギャラリー情報》
okeba
〒253-0082 神奈川県茅ヶ崎市香川7丁目10-7
TEL:0467-50-0252
開廊時間:平日 11:00~17:00/土日祝 11:00〜18:00
(営業時間は変更になる場合もあり)
休廊日:第3火曜日(8月・12月を除く)
*駐車場あり
《アクセス》
▶︎JR相模線「香川」駅から徒歩10分
https://www.kumazawa.jp/mokichi/okeba/
*岡村姉弟作陶展は5月15日(水)まで開催
-
地域湘南地域
-
住所神奈川県茅ヶ崎市香川7-10-7
-
電話0467-50-0252
-
営業時間平日 11:00〜17:00/土日祝 11:00〜18:00 (営業時間は変更になる場合もあり)
-
URL
Map
関連記事
-
初心者でも大丈夫!自然に囲まれた環境で触れる陶芸の魅力横浜市陶芸センターアートな空間に潜入! YOKOHAMA ART SPOT FILE 体験教室も!子どもから大人まで陶芸が楽しめる! 横浜市陶芸センター ・・・
-
旅人たちも集う、午前10時から開かれるバーで心地よいひとときCafe Bar Marceauオンナヒトリ Bar で美しい 一杯を 横浜のバーへ繰り出し美しい一杯との出会いを綴る、オンナお一人様で行くバー連載♡ 今回は横浜駅東口直結、今年2018年 ・・・
-
伝統芸能古典演目に新鮮な息吹を吹き込む、期待の若手の競演を楽しんで横浜にぎわい座開催まであと47日古典演目に新鮮な息吹を吹き込む、期待の若手の競演をお楽しみください。 明日の浪曲シリーズ 第三回 国本はる乃 ・・・
-
(横浜市南区)[日枝神社例大祭(お三の宮秋祭り)]お三の宮日枝神社「お三の宮」「おさんさま」として親しまれている日枝神社の例祭で、《かながわのまつり50選》にも選ばれています。 横浜随一の大神輿による氏子内御巡行は毎年行われ、本祭り(奇数年毎)には大小4 ・・・
COLUMN
-
演劇・ダンス 音楽Double Planet 最終話Double Planet 最終話「星が消えるまで」 田丸ルカ(フルタジュン&神田陽太/レディオ湘南パーソナリティ) 自分だけは大丈夫 ・・・
-
演劇・ダンス 美術・写真舘形比呂一のDanceable LIFE Vol.10横浜美術館「横浜美術館コレクション展」でパワーを充電! 舘形比呂一(役者・ダンサー・振付家) 依然としてコロナ禍の厳しい状況が続いていますが、どんな時でも素敵なことに出 ・・・
-
演劇・ダンス 音楽Double Planet 第13話Double Planet 第13話「彼女に褒められたくて仕方なかった」 青野サトル(フルタジュン&神田陽太/レディオ湘南パーソナリティ) ・・・
-
美術・写真 音楽前川建築ならではのスタイリッシュな空間で、音楽とアートを遊んじゃおう!神奈川県立音楽堂行って、みて、感じるアートの世界 File.32音楽堂オープンシアター「音楽×建築×アートでお正月♪」 井上みゆき(マグカル編集部) 音 ・・・